「次に何の記事を作るべきか」を考えるとき、Google検索のキーワードだけを見ていると、自社サイトまで来た読者が実際に探している情報を見落とすことがあります。
そこで活用したいのが、サイト内検索ログです。サイト内検索には、読者が自社サイトの中で実際に入力した言葉が残ります。特に見るべきなのは、検索回数だけではありません。検索結果が0件だった語句、結果は出たのにクリックされなかった検索、言葉を変えて繰り返された検索まで確認することで、「記事がない」「記事はあるが答えが弱い」「情報はあるが見つからない」を分けられます。
重要なのは、ゼロ件検索をそのまま新規記事候補にしないことです。本記事では、サイト内検索ログを新規企画、既存記事改善、検索機能改善、ナビゲーション改善へ振り分ける実務手順を整理します。
サイト内検索ログは「読者がサイト内でまだ解決できていないこと」を探すデータ
サイト内検索ログの価値は、読者が実際に使った言葉から需要を確認できる点にあります。
サイト内検索ログで見つけた未充足ニーズをメディア全体のテーマ選定へつなぐ前提は、メディア戦略・コンテンツ企画とは?で整理しています。
Google Analytics 4(GA4)では、サイト内検索が行われた際に「view_search_results」イベントを取得でき、検索された語句は「search_term」として扱えます。Googleも、サイト内検索データから「ユーザーが何を検索しているか」「サイトコンテンツや操作性のどこを改善できるか」を確認できると説明しています。
検索ログを使うメリットは、編集者が想像した需要ではなく、実際の行動を起点にできることです。
たとえば、編集会議では「AIOの記事を増やそう」と考えていても、サイト内検索では「AI検索 効果測定」「AIから引用されない」「ChatGPT 自社 出ない」といった具体的な語句が繰り返されているかもしれません。
この場合、「AIO」という大きなテーマだけを見るのではなく、読者が解決できていない個別の問いまで企画候補として把握できます。
検索ログ分析そのものは新しい考え方ではありません。Webサイト内検索エンジンを対象とした研究では、サイト内検索では一般的なWeb検索と検索トピックや使用語が異なる場合があり、そのサイト特有の情報ニーズを理解する材料になることが報告されています。
最初に見るべき4つのサイト内検索シグナル
コンテンツ企画でサイト内検索ログを使う場合、検索回数ランキングだけを見るのでは不十分です。
少なくとも「検索量」「ゼロ件検索」「クリックされない検索」「再検索」の4つを組み合わせて確認します。
| シグナル | 確認すること | 主に疑う問題 |
|---|---|---|
| 検索量 | どの語句が何回検索されているか | 需要の大きさ |
| ゼロ件検索 | 検索しても結果が出なかったか | コンテンツ不足、表記揺れ、検索設定 |
| ノークリック | 結果が表示されてもクリックされなかったか | 検索順位、タイトル、検索意図との不一致 |
| 再検索 | 同じ利用者が別の語句で検索し直したか | 語彙のずれ、回答不足、検索精度 |

サイト内検索ログは検索回数だけでなく、ゼロ件、ノークリック、再検索まで組み合わせることで、読者が解決できていない原因を切り分けやすくなります。
Algoliaの検索分析でも、検索結果が0件だった検索と、検索結果は表示されたもののクリックにつながらなかった検索は別の指標として扱われています。ゼロ件率は「検索結果が0件だった検索数÷検索総数」、ノークリック率は「クリックされなかった検索数÷追跡対象検索数」という考え方です。
この区別が重要なのは、必要な改善策が異なるからです。
ゼロ件検索をそのまま新規記事にしてはいけない
検索結果が0件だった語句は有力な企画候補ですが、「0件=記事がない」とは限りません。
大きく3種類に分けて確認します。
本当にコンテンツが存在しない
読者が求めている情報を扱う記事やページが自社サイトにないケースです。
検索数が一定以上あり、自社の事業領域とも合致するのであれば、新規記事候補になります。
たとえば「MEO 順位 下がった 原因」が何度も検索されているのに、MEOの順位下落を診断する記事が存在しないなら、独立記事を検討できます。
コンテンツはあるが検索語と記事の言葉が違う
たとえば読者は「口コミ 消したい」と検索しているのに、記事側が「クチコミ削除請求」という言葉しか使っていない場合です。
このケースでは、新規記事を追加すると似た内容の記事が増え、検索エンジン上でも記事同士が競合する可能性があります。
既存記事への言い換え表現追加、タイトル改善、検索用同義語設定などを先に検討します。
Algoliaも、ゼロ件検索について「本当に提供対象がない場合」と「ユーザーが探しているものを検索システムが見つけられない場合」を分け、キーワードや同義語、検索設定の改善を検討するよう案内しています。
検索対象からページが漏れている
記事は存在し、語句も合っているのに、検索インデックスの設定などが原因で結果に出ないケースです。
この場合はコンテンツ企画ではなく、サイト内検索の技術的な改善対象です。
ゼロ件検索を見るときは、「ない」「あるが言葉が違う」「あるが検索できない」の3つを分けることが重要です。

ゼロ件検索は必ずしも記事不足を意味しません。既存記事の有無、検索語との表現差、検索設定を切り分けてから施策を決めます。
結果があるのにクリックされない検索は既存記事改善の候補
検索結果が表示されているにもかかわらず、クリックされない検索は、単純なコンテンツ不足とは異なります。
考えられる原因は主に4つです。
1つ目は、検索順位が悪く、適切なページが下位に埋もれていること。
2つ目は、ページタイトルを見ても自分の疑問への回答だと分からないこと。
3つ目は、似たページが多く、どれを選べばよいか判断できないこと。
4つ目は、そもそも検索結果が検索意図に合っていないことです。
たとえば「風評被害 費用」と検索した人に、「風評被害とは」「誹謗中傷とは」「口コミ削除方法」という記事だけが並んでいる場合、記事自体は存在していても「費用を知りたい」という検索意図には答えられていません。
この場合は新規記事を作る前に、既存記事の回答範囲を確認します。
十分な記事が存在するなら、タイトル、見出し、検索結果順位、内部リンクを改善します。
十分な記事がなければ、「費用」という独立した検索意図を担当する記事を新規作成します。
言葉を変えて繰り返される再検索から「答えのずれ」を発見する
再検索も重要なシグナルです。
たとえば、同じセッション内で、
「AI検索 対策」
「ChatGPT 会社 出ない」
「ChatGPT 自社 推薦」
と検索語が変化している場合を考えます。
単に3つのキーワード需要があると見るのではなく、「最初の検索で必要な情報に到達できず、より具体的な言葉へ検索を修正した可能性」があります。
検索語の言い換え行動については、検索システムとの相互作用によって検索語が修正されることを分析した研究があります。RiehとXieの研究では、313の検索セッションを対象として検索語の修正パターンを分析し、具体化、一般化、並列的な言い換えなど複数のパターンを整理しています。
もちろん、この研究は一般的なWeb検索を対象としているため、その割合を自社サイトへそのまま当てはめることはできません。
実務では、「何回検索されたか」だけでなく「どの言葉からどの言葉へ変わったか」を確認する材料として使うのが適切です。
検索ログを4種類の改善施策へ振り分ける
サイト内検索ログから企画を作るときは、検索語を一覧にしたあと、すぐ記事タイトルを考えるのではなく、改善対象を分類します。
以下の判断表を使うと整理しやすくなります。
| 状態 | 主な原因 | 優先する施策 |
|---|---|---|
| 検索需要あり・該当コンテンツなし | 情報そのものがない | 新規記事 |
| 検索需要あり・記事あり・回答不足 | 内容が弱い | 既存記事リライト |
| 記事あり・検索結果に出ない | 検索設定・表記揺れ | サイト内検索改善 |
| 記事あり・見つけにくい | 導線不足 | ナビ・内部リンク改善 |
| 検索後に言い換えが多い | 意図または語彙のずれ | 記事と検索機能の両方を確認 |
| 検索・クリックとも多い | 重要情報への需要が高い | 維持・導線強化 |

検索ログから見つけた需要は、すべて新規記事にするのではなく、既存記事や検索機能、導線の状態を確認して4種類の施策へ振り分けます。
ここで重要なのは、「検索回数が多い=新規記事」ではない点です。
よく検索されるページがすでに存在する場合、ユーザーがナビゲーションから見つけられないため検索している可能性があります。
その場合、記事をもう1本作るより、カテゴリ、メニュー、関連記事、内部リンクから到達しやすくするほうが合理的です。
サイト内検索ログからコンテンツ企画を作る5ステップ
実務では、以下の順番で進めます。
STEP1 検索語を取得する
まず、一定期間のサイト内検索語を取得します。
GA4の拡張計測機能では、標準ではURLに「q」「s」「search」「query」「keyword」のいずれかのクエリパラメータがある場合に view_search_results が記録され、検索語を search_term として取得できます。別のパラメータを使っているサイトでは設定確認が必要です。
GA4だけでゼロ件数や検索結果クリックまで十分に取得できない場合は、サイト側のイベント計測やサイト内検索サービスの分析機能も組み合わせます。
STEP2 表記揺れをまとめる
「AI検索」「AI 検索」「生成AI検索」のように、同じニーズと判断できる語句をまとめます。
ただし、意味が異なる語句までまとめないよう注意します。
検索意図の分類については、Web検索研究で情報収集型、特定ページを探す型、行動を目的とする型などに分ける方法が研究されています。Jansenらは150万件を超えるWeb検索クエリを分析し、検索意図を階層的に分類しました。
この分類比率を自社サイトへ当てはめるのではなく、検索語を「情報を知りたい」「特定ページを探したい」「問い合わせなどの行動をしたい」と整理する補助軸として利用できます。
STEP3 既存記事の有無を確認する
検索語ごとに、対応する既存記事を確認します。
ここで見るのは「同じキーワードを含む記事があるか」ではありません。
読者の問いへ十分に回答しているページがあるかを確認します。
STEP4 検索後の行動を確認する
可能であれば、検索結果表示後のクリック、再検索、問い合わせなどの行動も確認します。
専用検索サービスでは、ノークリック率やゼロ件率を取得できるものがあります。
「記事がない」のか、「見つからない」のか、「見つけたが満足できない」のかを分けるためです。
STEP5 施策へ振り分けて優先順位を決める
最後に、
新規記事
既存記事リライト
検索機能改善
ナビゲーション・内部リンク改善
のいずれかへ振り分けます。
優先順位は、検索回数だけでなく、事業との関連性、既存記事との差、ゼロ件やノークリックの状態、改善後に読者が取れる行動を含めて決めます。
企画候補は「需要の強さ×現在の充足度」で優先順位を決める
サイト内検索ログから多数の候補が出た場合は、需要の強さと現在の充足度を組み合わせます。
| 需要 | 現在の充足度 | 判断 |
|---|---|---|
| 高い | 低い | 最優先で改善 |
| 高い | 高い | 導線強化・維持 |
| 低い | 低い | 事業重要度を見て判断 |
| 低い | 高い | 原則維持 |

企画候補が多い場合は、検索需要だけでなく現在のコンテンツ充足度も合わせて評価すると、優先順位を付けやすくなります。
さらに、新規記事候補の場合は「既存記事で代替できないか」を確認します。
この工程を入れることで、サイト内検索ログを使った企画発見が、似た記事を量産する仕組みになることを防げます。
サイト内検索ログだけで企画を決めない
サイト内検索ログは強い一次データですが、それだけでサイト全体の需要を代表しているわけではありません。
検索機能を使った人だけのデータだからです。
検索ログ研究でも、トランザクションログは利用者の情報探索行動を理解する有力な材料である一方、取得、前処理、分析条件を明確にして扱う必要があると整理されています。
そのため、実務ではサイト内検索ログだけでなく、
Google Search Consoleの検索データ
記事ごとの閲覧・離脱・コンバージョン状況
問い合わせや商談で出る質問
既存記事のトピックカバレッジ
競合サイトや検索結果の情報
などと組み合わせて判断します。
サイト内検索ログの役割は、「企画を自動決定すること」ではなく、「読者が自社サイト内で解決できなかった需要を発見すること」です。
検索語に個人情報が入る可能性にも注意する
自由入力の検索ボックスでは、ユーザーが氏名、メールアドレスなどを入力する可能性があります。
Google Analyticsでは、個人を特定できる情報を送信することが禁止されており、URLやURLパラメータに個人情報が含まれる可能性がある場合は削除する必要があります。GA4にはメールアドレスや指定URLパラメータを収集前に編集するデータ編集機能も用意されています。
サイト内検索語を分析する際は、取得するデータの範囲、保存方法、閲覧権限も合わせて確認してください。
まとめ
サイト内検索ログは、ユーザーが自社サイトの中で実際に探した情報を確認できるため、未充足ニーズを発見する有力なデータです。
ただし、検索数やゼロ件検索だけを見て新規記事を作るのでは不十分です。
ゼロ件検索なら「本当に記事がないのか」。
結果が表示されているなら「なぜクリックされないのか」。
検索し直されているなら「どのように言葉が変化したのか」。
既存記事があるなら「記事改善なのか、検索機能やナビゲーションの問題なのか」。
ここまで分けて判断することで、サイト内検索ログを新規記事、リライト、検索機能、内部リンク・ナビゲーション改善へ正しく振り分けられます。
まずは直近のサイト内検索語を一覧化し、検索回数、ゼロ件、クリック、再検索、対応する既存ページの5項目を並べてみてください。そこから、通常の記事台帳だけでは見つからなかった読者の未充足ニーズが見えてきます。
参考文献・データ元
・Google Analytics Help「Enhanced measurement events」。GA4の view_search_results、search_term、標準クエリパラメータの確認に使用。Google Analytics公式情報
・Google Analytics Help「Explore playbook」。サイト内検索データをコンテンツ・ナビゲーション改善へ利用する方法の確認に使用。Google Analytics Explore playbook
・Algolia「Search analytics metrics」「Retrieve no click rate」「Retrieve no results rate」。ゼロ件検索、ノークリックの指標定義と改善判断の確認に使用。URL:Search analytics metrics / Retrieve no click rate / Retrieve no results rate
・Google Analytics Help「Best practices to avoid sending Personally Identifiable Information」。検索語・URLパラメータに含まれる個人情報の扱いの確認に使用。URL:Google Analytics公式情報
・Chau, M., Fang, X., & Liu Sheng, O. R. (2005). “Analysis of the query logs of a Web site search engine.” Journal of the American Society for Information Science and Technology, 56, 1363–1376. DOI: 10.1002/asi.20210。Webサイト内検索ログと利用者ニーズの関係を確認するために使用。URL:https://doi.org/10.1002/asi.20210
・Jansen, B. J. (2006). “Search log analysis: What it is, what’s been done, how to do it.” Library & Information Science Research, 28(3), 407–432. DOI: 10.1016/j.lisr.2006.06.005。検索ログ分析の方法論・限界の確認に使用。URL:https://doi.org/10.1016/j.lisr.2006.06.005
・Jansen, B. J., Booth, D. L., & Spink, A. (2008). “Determining the informational, navigational, and transactional intent of Web queries.” Information Processing & Management, 44(3), 1251–1266. DOI: 10.1016/j.ipm.2007.07.015。検索語の意図分類の参考として使用。URL:https://doi.org/10.1016/j.ipm.2007.07.015
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