生成AIによって、企業がWebコンテンツを作るハードルは大きく下がりました。記事構成、FAQ、要約、リライト、基礎解説などは、以前より短い時間で制作できます。
では、AIを積極的に取り入れている企業ほど、Webコンテンツも強いのでしょうか。
独自企業データベースを使い、企業サイト37,635社を調べたところ、Webサイト上でAI関連のサービスや取り組みをアピールしている企業は、そうでない企業よりもオウンドメディア保有率が高く、公開記事数も多いことが分かりました。
導入事例、料金、調査・レポート、お客様の声といった情報の掲載率も、AI活用をアピールする企業の方が高い結果です。
ただし、ここで別の課題が見えてきました。AI活用企業であっても、料金、導入事例、顧客の声、独自調査など、顧客が「この会社に頼むべきか」を判断するための情報は、十分に揃っているとは言えません。
これらは、AIに文章を書かせるだけでは生まれない情報です。
今回の調査から見えてきたのは、AI時代のコンテンツ制作で重要なのは「何本作れるか」だけではなく、企業自身にしか出せない顧客の判断材料を、どれだけ整えて公開できるかということです。
結論:AI活用企業は発信量が多い。それでも「AIでは作れない判断材料」が足りない
今回の調査では、AI関連のサービス・取り組み・活用をWebサイト上でアピールしている企業ほど、Web上の情報発信が活発でした。導入事例や料金などの情報開示も、平均的には進んでいます。
主な結果は次の通りです。
| 比較項目 | AI活用をアピールする企業 | それ以外の企業 |
|---|---|---|
| オウンドメディア保有率 | 37.8% | 11.0% |
| 公開記事数の中央値 | 92本 | 53本 |
| 100本以上の記事を公開 | 44.1% | 26.4% |
| 導入事例 | 65.1% | 35.7% |
| 調査・レポート | 39.3% | 12.8% |
| 料金 | 44.3% | 23.6% |
| お客様の声 | 32.6% | 15.6% |
AI活用をアピールする企業の方が、記事数だけでなく、導入事例や料金などの企業固有情報も平均的には多く公開しています。
ただし、ここで重要なのは「AI活用企業の方が情報開示が進んでいる」という相対比較だけではありません。
AI活用をアピールする企業でも、
- 約56%では料金ページを確認できない
- 約61%では調査・レポートを確認できない
- 約35%では導入事例を確認できない
- 約67%ではお客様の声を確認できない
という状況でした。
つまり、AI活用企業は平均的にはWEBコンテンツが充実しています。それでも、顧客が「この会社に頼むべきか」「自社に合うのか」を判断するための情報まで十分に揃っているとは限りません。
調査対象と「AI活用をアピールする企業」の定義
調査対象は、独自企業データベースに登録された企業のうち、企業サイトからタイトル、説明文、見出し等の文字情報を取得できた37,635社です。
調査期間は、2026年9月28日から30日です。
このうち、タイトル、説明文、H1、H2などに「AI」「人工知能」「生成AI」「Generative AI」「ChatGPT」「GPT」「Claude」「Gemini」「Copilot」「LLM」「大規模言語モデル」などのAI関連語が掲載されている企業を、「AI活用をアピールしている企業」として集計しました。
該当した企業は1,642社、全体の4.4%です。
ここでいう「AI活用企業」は、実際に社内業務でAIを利用していることを確認した企業ではありません。企業がWebサイト上でAI関連のサービス、取り組み、活用を対外的に訴求しているかどうかを見ています。
AI活用企業は、オウンドメディア保有率が約3.4倍

AI活用をアピールする企業は、オウンドメディア保有率と公開記事数の両方で、それ以外の企業を上回りました。
最も大きな差の一つが、オウンドメディアの保有率です。
AI活用をアピールする企業では37.8%、それ以外の企業では11.0%でした。単純比較では約3.4倍です。
さらに、AI関連企業が多いIT・Web業界への偏りだけで説明できるかも確認しました。
業界構成をそろえて集計しても、AI活用をアピールする企業の方がオウンドメディアを保有している傾向は残りました。サイト上の文字量まで考慮すると差は縮小しますが、それでも差は確認されています。
つまり、今回の結果は「AI関連企業にIT企業が多いから」という業界構成だけでは説明しきれません。
一方で、すべての業界で同じ強さの差があるわけではありません。建設・不動産、流通・小売などでは差が比較的小さく、業界によって傾向にはばらつきがあります。
公開記事数の中央値は92本対53本
オウンドメディアを確認できた企業のうち、公開記事数を確認できた企業では、記事の蓄積量にも差がありました。
- AI活用をアピールする企業:中央値92本
- それ以外の企業:中央値53本
100本以上の記事を公開している企業の割合も、44.1%対26.4%でした。
少なくとも今回の調査では、AI関連の取り組みを積極的にアピールしている企業ほど、Web上に多くのコンテンツを蓄積している傾向があります。
ただし、記事数が多いことと「顧客が判断できること」は同じではありません。
差が大きいのは「記事」だけではなく、企業固有の判断材料

AI活用企業は相対的には情報開示が進んでいますが、顧客の比較・判断に必要な情報が十分に揃っているとは限りません。
企業サイトには、記事以外にも、顧客がその会社やサービスを比較・検討するための情報があります。
たとえば、
- どんな企業に導入されているのか
- 実際にどんな成果が出たのか
- いくらかかるのか
- 利用した顧客はどう評価しているのか
- その企業独自の知見やデータはあるのか
といった情報です。
そこで、導入事例、調査・レポート、料金、お客様の声などの掲載状況を比較しました。
| 判断材料 | AI活用をアピールする企業 | それ以外の企業 |
|---|---|---|
| 導入事例 | 65.1% | 35.7% |
| 調査・レポート | 39.3% | 12.8% |
| 料金 | 44.3% | 23.6% |
| お客様の声 | 32.6% | 15.6% |
AI活用をアピールする企業の方が、いずれの項目も掲載率は高くなっています。
つまり、「AIをアピールする企業は記事だけ作っていて、具体情報を出していない」という結果ではありません。
むしろ平均的には、それ以外の企業より情報開示は進んでいます。
それでも絶対値を見ると、判断材料が十分に揃っているとは言いにくい企業が多く残っています。
AIで増やせるコンテンツと「AIでは作れない判断材料」は違う

AIは文章化を支援できますが、料金、実績、顧客評価、独自データなどの元情報は企業自身が用意する必要があります。
生成AIが得意なのは、すでに存在する情報をもとに、新しいコンテンツを作ることです。
たとえば、
- 用語解説
- HowTo記事
- FAQ
- 一般的な比較記事
- 既存コンテンツの要約
- 構成案
- リライト
- 基礎知識の記事
などは、AIを活用することで制作効率を上げやすい領域です。
一方で、顧客が企業を比較・判断するときに重要になる情報には、AIだけでは生み出せないものが多くあります。文章化はAIで支援できても、元になる事実や意思決定は企業側に必要です。
たとえば料金です。
文章はAIで作れても、「このサービスをいくらで提供するのか」は企業側が決めなければなりません。
導入事例も同じです。
どの顧客に、どのようなサービスを提供し、どのような成果が出たのかという事実がなければ、本物の事例は作れません。
顧客の声、独自調査、成果数値、失敗事例、サービスが向いていないケースなども同様です。
これらは文章生成の問題ではありません。
企業の中にある情報を集め、整理し、何を公開するのかを決める問題です。
AI時代に起きやすいのは「作れる情報」が先に増えること
生成AIによって記事制作が容易になるほど、企業は「作れるコンテンツ」を増やしやすくなります。
「○○とは」
「○○のメリット」
「○○の選び方」
「○○する方法」
といったテーマは、AIとの相性がよく、比較的短時間で制作できます。
しかし、それらの記事が増えたからといって、顧客の疑問がすべて解消されるわけではありません。
サービスを検討している人が本当に知りたいのは、
「結局いくらなのか」
「自社と同じような会社で実績はあるのか」
「本当に成果が出ているのか」
「どんな会社には向かないのか」
「他社と何が違うのか」
といった情報かもしれません。
記事を100本増やしても、この疑問に答えていなければ、顧客にとって必要な情報が増えたとは限りません。
「AIに何を書かせるか」ではなく「顧客に何が足りないか」から考える

AIで作れるものから考えるのではなく、顧客が判断できない理由を起点に必要な情報を整え、その後でAIを制作手段として使います。
AIを使ったコンテンツ制作では、考える順番が重要です。
最初に、
「ChatGPTでどんな記事を作ろうか」
「毎月何本増やそうか」
と考えると、AIが作りやすいテーマを中心にコンテンツが増えていきます。
しかし、本来は逆です。
まず考えるべきなのは、
顧客は何が分からないから、問い合わせや購入を決められないのか。
ということです。
不足情報を特定してから、必要なコンテンツを作ります。
たとえば、
- 価格が分からない → 料金ページを作る
- 本当に成果が出るか分からない → 導入事例や成果数値を出す
- 自社にも合うか分からない → 向いている企業・向いていない企業を明示する
- 他社と何が違うか分からない → 比較基準を提示する
- 信頼できるか分からない → 顧客の声や独自データ、監修者情報を出す
- 導入後が想像できない → 導入フローや運用事例を出す
このように考えると、AIは「何を作るかを決めるもの」ではなく、必要な情報を分かりやすく届けるための制作手段になります。
AIでコンテンツを作る前に確認したい10項目
AIを使って企業サイトやオウンドメディアを強化する場合、記事数を増やす前に、次の情報が揃っているか確認する方が実務的です。
- 料金
価格そのものを出せない場合でも、料金体系、最低価格、見積もりの考え方など、比較に必要な情報を提示できないか確認します。 - 導入事例
誰が、どのような課題を持ち、何を実施し、どう変わったのかを具体化します。 - 成果数値
「改善しました」「効果がありました」だけでなく、可能であれば具体的な数字を示します。 - お客様の声
企業側の説明ではなく、実際の利用者が何を評価したのかを伝えます。 - 独自調査・独自データ
検索すればどこでも出てくる情報ではなく、自社だから持っているデータを公開します。 - 向いている顧客・向いていない顧客
対象を明確にすることで、顧客が自社との適合性を判断しやすくします。 - 他社と比較するときの判断基準
自社PRだけではなく、サービスを選ぶための軸を提示します。 - 制約や注意点
メリットだけではなく、できないこと、時間がかかること、条件なども明示します。 - 誰が情報を出しているのか
担当者、専門家、監修者など、情報の責任主体を明確にします。 - 現場で得た知見
一般論ではなく、実際の顧客対応、失敗、改善、検証から得た情報を出します。
これらの情報は、AIに「作って」と依頼するだけでは生まれません。
企業自身が持つ事実を集め、整理し、公開する必要があります。
この調査から言えること、言えないこと
言えること
- AI活用をアピールする企業は、オウンドメディア保有率が高い
- AI活用をアピールする企業は、公開記事数の蓄積が多い
- 導入事例、料金、調査・レポート、お客様の声の掲載率も高い
- それでも、AI活用をアピールする企業の中にも判断材料が不足している企業は多い
言えないこと
- AIを導入したからWeb発信量が増えたという因果関係
- AIを掲げる企業が実際にどの程度AIを社内利用しているか
- AI利用によってコンテンツ制作人数や制作時間が減ったか
- AIを使えば導入事例や料金ページの公開が増えるか
- Web発信の差が売上、問い合わせ、検索順位にどの程度影響したか
- 今回検出できなかったページが実際に存在しないこと
まとめ
企業サイト37,635社を調べると、AI活用をアピールする企業は、それ以外の企業に比べてWeb上での情報発信が活発でした。
オウンドメディア保有率は37.8%対11.0%、公開記事数の中央値は92本対53本です。
導入事例、調査・レポート、料金、お客様の声といった企業固有情報も、AI活用をアピールする企業の方が平均的には多く公開していました。
一方で、AI活用をアピールする企業でも、料金を確認できたのは44.3%、調査・レポートは39.3%、お客様の声は32.6%でした。
つまり、AI活用企業は「発信量」も「情報開示」も平均的には進んでいます。それでも、顧客が比較・判断するために必要な具体情報には不足が残っています。ここが、今回の調査で最も重要なポイントです。
生成AIは、コンテンツを増やすための強力な手段です。
しかし、AI時代のコンテンツ制作で重要なのは、作れる情報を増やすことではありません。
顧客は何が分からないから意思決定できないのかを見つけ、AIだけでは生み出せない判断材料を企業側で整えることです。
料金なら料金を出す。
実績なら事例を出す。
信頼性なら顧客の声や独自データを出す。
比較材料なら判断基準を出す。
そして、それを分かりやすく届けるためにAIを使う。
この順番が重要です。
参考文献・データ元
この記事で参照した情報を確認できます。
- 弊社調査:独自企業データベース。企業サイトからタイトル、説明文、見出し等の文字情報を取得できた37,635社を対象に、AI関連語の掲載状況、オウンドメディア、導入事例、料金、調査・レポート、お客様の声等を比較。
- 弊社調査:オウンドメディア調査データ。公開記事数を確認できた企業を対象に、記事数の中央値、100本以上の記事を公開している企業割合等を集計。
- 各割合はWeb上で検出できた情報に基づく。未検出は「存在しないこと」を完全に証明するものではない。
