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料金情報がないと企業担当者はどうする?追加検索・離脱を調査

部署:マーケティング担当者部署:経営者・責任者レベル:実践

[独自調査] Report ID: SBR-2026-005

公開日:2026年9月7日 著者:菊地 将

要旨

株式会社Coneが2026年4月に実施した調査(国内会社員221名、BtoBサービス導入検討経験者)では、比較検討の候補から外した理由の第1位は「料金が公開されておらず比較できなかった」で49.8%だった。機能不一致(34.4%)を上回る、単独最大の除外理由である。本記事では、この国内データと、料金公開・非公開でサイト内行動を比較した海外の観測データ、そして独自企業データベースによるBtoBサービス業の料金ページ保有実態を統合し、料金情報が見つからない瞬間に何が起きているかを整理する。

調査概要

  • 対象:BtoBサービス業の企業サイト
  • 方法:独自企業データベースによる料金ページ保有調査
  • サンプル:BtoBサービス業5,132社(規模別内訳あり、例:1〜10人1,705社)

「料金は公開すべきか」という議論はすでに何度も語られてきた。しかし実務担当者が本当に知りたいのは一歩先、「どこまで料金情報を出せば見込み客を逃さずに済むのか」である。株式会社Coneが2026年4月に実施した調査(国内会社員221名、BtoBサービス導入検討経験者)では、比較検討の候補から外した理由の第1位は「料金が公開されておらず比較できなかった」で49.8%だった。機能不一致(34.4%)を上回る、単独最大の除外理由である。本記事では、この国内データと、料金公開・非公開でサイト内行動を比較した海外の観測データ、そして独自企業データベースによるBtoBサービス業の料金ページ保有実態を統合し、料金情報が見つからない瞬間に何が起きているかを整理する。

結論:料金公開・非公開で、候補除外と問い合わせ後の指標に差が観測された

先に結論を述べる。国内調査では、「料金が公開されておらず比較できなかった」が候補除外理由として49.8%を占めた。海外の観測データでは、料金非公開サイトは公開サイトよりフォーム送信率が高い一方、送信後のパイプライン化率は低かった。これらは別の対象・方法で得られた結果であり、料金の公開有無だけが離脱や問い合わせの質を変えた因果までは示さない。自社では、候補除外、フォーム送信、商談化を同じ定義で分けて確認する必要がある。

「公開すべきか、しないべきか」という二元論では、この現象は説明できない。問われるべきは、公開する場合にどの粒度まで出すかである。

調査の方法:何を、どう比較したか

本記事は、同一のBtoBサービスサイトで料金表示の粒度だけを変えたパターンを独自に作成し、見込み客に提示する行動実験を新規には実施していない。かわりに、(1) 国内BtoB購買担当者を対象にした候補除外理由の調査、(2) 料金公開・非公開別にサイト内行動を比較した海外の観測データ、(3) 情報探索コスト・知覚リスク・価格公正性に関する経済学・マーケティング理論、(4) 独自企業データベースによるBtoBサービス業の料金ページ保有実態の集計、の4つを統合して整理した。

なお、入手できた定量データは「料金公開/非公開」という二値の比較が中心であり、本記事が当初想定した6段階の公開粒度(完全公開・価格帯のみ・最低料金のみ・事例価格・見積条件・完全要問い合わせ)それぞれについて行動を定量比較したデータは、調査した範囲では見つからなかった。中間的な粒度(価格帯のみ、事例価格など)の効果については、理論と競合記事の分類整理を組み合わせた合理的な推論として提示し、実測データと明確に区別する。

独自データで見る前提:BtoBサービス業で料金ページを持つ企業はどれだけあるか

独自企業データベースを用いて、ソフトウエア・IT・DX・マーケ・情報通信・情報処理・HR/経理・人材紹介・保険代理・コンサルティング等、BtoBサービスに該当すると判断できる業種区分に絞り、自社サイト上に価格・料金の専用ページを持つ企業の割合を集計した。対象となったのは5,132社(サイト情報を取得できた企業)で、このうち専用の料金ページ(/price, /pricing, /plan等のパスで、採用・会社案内・事例記事等を除いた顧客向け料金ページ)を持つ企業は236社、率にして4.6%だった。ソフトウエア・IT系に絞るとやや高く5.1%だった。

従業員規模 対象企業数 料金ページ保有企業数 保有率
1〜10人 1,705社 135社 7.9%
11〜50人 102社 4社 3.9%
201〜1,000人 83社 3社 3.6%
51〜200人 148社 5社 3.4%
規模不明 3,075社 89社 2.9%
1,000人以上 19社 0社 0.0%

【弊社集計】BtoBサービス業に区分される企業5,132社のうち、自社サイトに専用の料金ページを持つのは236社(4.6%)。従業員規模が大きいほど料金ページの保有率が下がる傾向が見られ、1,000人以上の企業では確認できた19社中0社だった。

BtoBサービス業5,132社のうち料金ページを持つ企業が4.6%であることと従業員規模別保有率を示した図

弊社集計では、BtoBサービス業5,132社のうち専用料金ページを確認できた企業は236社、4.6%だった。

弊社集計では、料金ページ保有率は1〜10人で7.9%、11〜50人で3.9%、51〜200人で3.4%、201〜1,000人で3.6%、1,000人以上で0.0%だった。ただし1,000人以上は19社と対象数が少なく、企業規模だけで料金非公開の理由や見込み客の行動を説明することはできない。

料金が「見つからない」と、見込み客は本当に離脱するのか——国内データ

株式会社Coneが2026年4月27〜28日に実施した調査(直近1年以内にBtoBサービス導入検討に関与した国内会社員221名対象、インターネット調査)では、比較検討の過程で候補から外したサービスの理由(複数回答)を尋ねている。

候補除外の理由 割合
料金が公開されておらず比較できなかった 49.8%
機能が要件に合わなかった 34.4%
比較記事での評価が低かった・言及が少なかった 30.8%
公式サイトの情報が少なく判断材料が足りなかった 26.7%
候補から外したサービスはない 4.5%

【外部一次情報】この調査では、「料金が公開されておらず比較できなかった」が49.8%で、機能不一致の34.4%より高い候補除外理由として回答された。料金情報を比較前の判断材料として確認する回答者がいたことは示されるが、料金非公開だけが候補除外を引き起こした因果を検証した調査ではない。

BtoBサービスの候補除外理由で料金非公開が49.8%と最も高かった国内調査の棒グラフ

国内調査では、「料金が公開されておらず比較できなかった」が49.8%で候補除外理由の第1位だった。

公開する・しないで何が変わるか——海外の行動データが示す逆説

HockeyStack Labsが2025年12月に公開した調査では、B2B SaaS企業80社(平均契約額5,000〜120,000ドル、訪問者数3,100万UU超)のサイト分析データをもとに、料金完全公開のサイトと非公開(要問い合わせ等)のサイトのユーザー行動を比較している。

指標 料金公開 料金非公開
直帰率 42% 35%
セッションあたりページ数 4.26 2.57
平均滞在時間 3分25秒 2分31秒
フォーム送信率 2.8% 4.6%
送信→パイプライン化率 17.50% 10.31%
デモリクエスト率 非公開より9.5%高い (基準)

【外部一次情報】料金非公開サイトは、公開サイトより直帰率が低く(35%対42%)、1セッションあたり閲覧ページ数も少ない(2.57対4.26)という観測結果でした。これらは相関であり、料金非公開が追加探索を起こした因果までは示しません。一方、フォーム送信率は料金非公開の方が高いものの、送信後にパイプライン(商談化)へ進む率は公開サイトの方が高い(17.50%対10.31%)と報告されています。

この観測では、料金非公開サイトのフォーム送信率が高い一方、送信後のパイプライン化率は公開サイトより低い結果でした。問い合わせの量と後続率をあわせて見る必要性は示されますが、料金公開・非公開だけが差を生んだ原因とは断定できません。業種、価格帯、流入構成などの条件差も踏まえ、自社ではフォーム送信後の商談化まで同じ定義で測る必要があります。

料金公開と料金非公開でフォーム送信率とパイプライン化率が逆転する量と質のトレードオフを示した比較図

料金非公開サイトはフォーム送信率が高い一方、送信後のパイプライン化率は料金公開サイトより低い。

なぜこの逆説が起きるのか——理論的な補助線

上記の現象は、複数の確立された理論で説明がつく。Stigler(1961, Journal of Political Economy)の情報探索理論は、価格のばらつき自体が市場における情報の不完全性の現れであり、買い手は価格情報を得るために探索コストを払うと説明する。料金非公開は、この探索コストを見込み客からベンダー自身のサイト内、あるいは競合サイトへの追加検索へと転嫁する行為だといえる。

Bauer(1960)の知覚リスク理論は、金額が分からない状態そのものが購買検討における不確実性(リスク)を高め、リスク回避のための情報探索や、リスクを許容できない場合の離脱・候補除外を引き起こすと説明する。特にBtoBの意思決定者は組織内で説明責任を負うため、「上司に概算予算感を説明できない」という社会的リスクの側面が強く働くと考えられる。

さらにNelson(1970)およびDarby & Karni(1973)の財の分類(探索財・経験財・信用財)に照らすと、SaaSや専門サービスは購入前に品質を確認しにくい経験財・信用財に近く、本質的に情報の非対称性が大きいカテゴリーである。価格という数少ない事前比較材料まで隠れることで、比較検討そのものが成立しにくくなる。

Xia, Monroe & Cox(2004, Journal of Marketing)の価格公正性フレームワークも補助線になる。要問い合わせのみで進めた場合、最終的に提示される価格の決まり方(手続き)が見えないため、見込み客は「他社と違う条件を提示されているのではないか」という不公正感を抱きやすい。見積条件をあらかじめ提示しておくことは、この手続き的公正性を高める効果が理論上期待できる。

これらはいずれも確立された理論であり、料金非公開という現象を説明する枠組みとして妥当性が高い。ただし、これらの理論から「中間的な公開粒度(価格帯のみ・事例価格など)がどの程度効果を持つか」を定量的に導くことはできず、この点は次のセクションで仮説として扱う。

料金が見つからないことで探索コストや不確実性が高まり追加検索や候補除外につながる理論上の流れ

料金情報の不足は、探索コストや不確実性を高め、追加探索・候補除外・問い合わせといった行動につながる可能性がある。

「完全公開」と「完全非公開」の間——中間的な開示は効くのか(ここは仮説として扱う)

競合記事の一つ(debono.co.jp「料金ページはどこまで見せる?」)は、料金の見せ方を「完全要問い合わせ」「一部非公開」「トップページで詳細公開」「専用ページで非公開」「完全公開」の5パターンに分類し、カスタマイズ度・競争環境・営業リソースの3軸で選択すべきだと整理している。この分類自体は有用だが、各パターンでの離脱率・追加検索率・問い合わせ質の違いを定量比較したデータは、競合記事にも本記事の調査範囲にも存在しなかった。

理論と国内外のデータから合理的に推測できる範囲で言えば、以下のように整理できる。

  • 完全公開・価格帯のみ・最低料金のみは、問い合わせ前の比較材料を増やす選択肢になる。ただし、どの方式が候補除外をどの程度減らすかは確認できていない
  • 事例価格の掲載は、正確な自社の見積額は分からないままでも、知覚リスクを一定程度下げる効果が理論上期待できるが、これを裏付ける定量データはない
  • 見積条件の提示(「〇〇の場合は要見積」等)は、価格公正性理論に照らせば、要問い合わせのみより手続きの納得感を高める可能性があるが、これも仮説の域を出ない
  • HockeyStackの観測では、料金非公開サイトはフォーム送信率が高く、送信後のパイプライン化率は低かった。ただし、公開有無だけがこの差の原因とは断定できない

この段落の内容は実測データによる検証ではなく、理論と競合記事の分類整理を組み合わせた仮説であることを明記する。 中間的な開示粒度ごとの効果を検証するには、本記事の範囲を超えた独自の行動実験が必要である。

企業が今日から確認すべきこと

  • 自社の料金ページが「候補にすら残れない」原因になっていないか(Cone調査:49.8%が候補除外の最大理由)
  • フォーム送信率だけで判断せず、送信後のパイプライン化率も同じ定義で確認しているか(HockeyStackの観測値:公開17.50%、非公開10.31%)
  • 完全非公開にしている場合、問い合わせ前の比較判断に必要な情報をどの範囲まで示せるか検討したか
  • 自社の業界・商材が、探索財に近いか、経験財・信用財に近いかを踏まえて、必要な情報開示の水準を検討できているか

料金、比較情報、導入事例、FAQなど、問い合わせ前に不足しがちな情報を自社で整理・確認したい方向けの資料ダウンロードはこちら。

まとめ

国内調査では「料金が公開されておらず比較できなかった」が候補除外理由として49.8%を占め、海外の観測データでは料金公開・非公開サイトのフォーム送信率と送信後のパイプライン化率に差が見られた。独自企業データベースでは、BtoBサービス業に区分した5,132社のうち専用料金ページを確認できたのは236社(4.6%)だった。情報探索コスト・知覚リスク・価格公正性の理論は結果を考える補助線になるが、料金の公開有無だけによる因果や、中間的な開示粒度ごとの効果は確認できていない。自社では、比較前に必要な情報とフォーム送信後の商談化を分けて測る必要がある。

参考文献・出典

この記事で参照した情報を確認できます。

  1. 株式会社Cone「BtoBサービス比較検討に関する調査」(2026年4月27〜28日実施、n=221)。https://cone-c-slide.com/see-sla/blog/btob-comparison-site-survey/
  2. HockeyStack Labs “The State of Pricing, Demo, and Case Study Pages”(2025年12月公開、B2B SaaS企業80社・訪問者3,100万UU超)。https://www.hockeystack.com/lab-blog-posts/state-of-pricing-demo-case-study-pages
  3. Stigler, G. J. (1961). The Economics of Information. Journal of Political Economy, 69(3), 213-225. https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/258464
  4. Bauer, R. A. (1960). Consumer Behavior as Risk Taking. In Dynamic Marketing for a Changing World, Proceedings of the 43rd Conference of the American Marketing Association, 389-398. https://cir.nii.ac.jp/crid/1572543025452826496
  5. Nelson, P. (1970). Information and Consumer Behavior. Journal of Political Economy, 78(2), 311-329. https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/259630/Darby, M. R., & Karni, E. (1973). Free Competition and the Optimal Amount of Fraud. Journal of Law and Economics, 16(1), 67-88. https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/466756
  6. Xia, L., Monroe, K. B., & Cox, J. L. (2004). The Price Is Unfair! A Conceptual Framework of Price Fairness Perceptions. Journal of Marketing, 68(4), 1-15. https://journals.sagepub.com/doi/10.1509/jmkg.68.4.1.42733
  7. debono.co.jp「料金ページはどこまで見せる?|問い合わせを生む見せ方に」(BtoB AIマーケティングナビ、公開2026年7月17日・更新2026年8月14日)https://debono.co.jp/media/ryokin-page-sekkei-ai/
  8. 独自企業データベース(BtoBサービス業区分・観測対象5,132社、2026年収集分)弊社集計

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