悪い口コミを見つけたとき、すぐに削除申請へ進むと、削除理由とプラットフォームの規約が一致していなかったり、必要な証拠を保存しないまま対応を始めたりすることがあります。
一次判定で削除申請へ進むと決めた後の、証拠保全・公式申請・必要に応じた法的対応までの全体手順は、[ネットの削除依頼方法](https://rebranding.co.jp/media/net-deletion-request/)で確認できます。
口コミ対応では、削除申請の前に「規約違反の可能性」「事実確認の状況」「証拠の有無」「権利侵害の可能性」を切り分けることが重要です。
一次判定シートを使えば、案件を「削除申請」「追加確認」「返信・経過観察」「法務確認」へ振り分けられます。担当者によって判断が変わる状態を減らし、削除できる可能性が高い案件から優先的に対応できるようになります。
口コミ削除は「不快かどうか」ではなく削除根拠から判定する
口コミ削除の一次判定で最も重要なのは、口コミの評価や表現の厳しさではなく、削除を求める根拠があるかを確認することです。
たとえばGoogleは、内容が気に入らない、低評価であるという理由だけで口コミを削除するものではなく、Googleのポリシーに違反する口コミを削除対象としています。Google ビジネス プロフィールの公式ヘルプでも、削除対象になるのはポリシー違反の口コミであり、単に内容に不満があるという理由だけで報告しないよう案内しています。
そのため、社内で最初に行うべき判断は、
「この口コミは悪い口コミか」
ではなく、
「どの規約、またはどの権利侵害を根拠として対応するのか」
です。
一次判定を入れることで、削除が難しい単なる低評価と、削除申請を検討すべき口コミを分けられます。
一次判定では4つの対応ルートに分類する
口コミ削除案件は、最初から「削除する・削除しない」の二択にするより、次の4ルートへ分類すると運用しやすくなります。
| 一次判定 | 状態 | 基本対応 |
|---|---|---|
| A:削除申請候補 | プラットフォーム規約への具体的な違反が確認できる | 規約の該当項目を明示して削除申請 |
| B:追加確認 | 規約違反の可能性はあるが、事実・証拠が不足している | 証拠収集・社内確認後に再判定 |
| C:返信・経過観察 | 低評価や批判ではあるが、明確な規約違反を確認できない | 返信、サービス改善、経過観察 |
| D:法務確認 | 名誉・信用、プライバシーなどの権利侵害が疑われる | 証拠保全後、必要に応じて弁護士等へ相談 |

口コミ対応は削除可否の二択にせず、規約・事実・証拠・権利侵害の状況から4つの対応ルートへ振り分けます。
この分類で重要なのは、Bの「追加確認」を独立させることです。
実務では「事実無根だから削除できるはず」と判断しても、担当部署へ確認すると実際に顧客との接点があった、投稿内容の一部は事実だった、投稿者を特定できる資料がなかった、といったケースがあります。
証拠がない状態で削除可能と断定するのではなく、判断を保留する場所を作ることで誤判定を防げます。
一次判定シートで確認する5項目
一次判定シートには、最低限「投稿内容」「規約」「事実」「証拠」「権利侵害」の5項目を設けます。

削除申請の前に、投稿内容・規約・事実・証拠・権利侵害の5項目を切り分けて確認します。
1.問題となる記述を具体的に抜き出す
最初に、口コミ全体ではなく問題となっている記述を特定します。
たとえば、
- 「星1だから削除したい」
- 「会社の悪口を書かれた」
- 「事実と違う」
だけでは削除理由として不十分です。
「利用していない人物と思われるのに、具体的なサービス利用経験を書いている」
「従業員の氏名と私生活に関する情報を書いている」
「犯罪を行ったと断定する記載がある」
といった形で、問題となる箇所を原文のまま保存します。
口コミのURL、投稿日時、投稿者名、評価、全文、スクリーンショットも同時に保存しておくと、その後の確認がしやすくなります。
2.プラットフォーム規約のどこに該当するか確認する
次に、対象プラットフォームの最新規約と照合します。
Google マップでは、実際の体験に基づかない投稿や評価操作などの「偽のエンゲージメント」のほか、ハラスメント、個人情報、攻撃的なコンテンツ、無関係な投稿などが禁止・制限されています。
一次判定シートでは、「規約違反あり」だけで終わらせず、該当すると考えた規約分類まで記録します。
| 確認項目 | 記入例 |
|---|---|
| 対象プラットフォーム | Google マップ |
| 問題箇所 | 来店していないと思われる人物が具体的な接客内容を記載 |
| 規約候補 | Fake Engagement |
| 判断理由 | 実体験に基づかない投稿である可能性 |
| 証拠 | 顧客管理記録を確認中 |
| 一次判定 | B:追加確認 |
ただし、「顧客記録に氏名がない」というだけで、利用経験がないと確定できるとは限りません。匿名、別名、同行者としての利用なども考えられるため、証拠の強さを別に評価します。
3.口コミの事実関係を社内で確認する
規約違反の判断と、社内での事実確認は分けて行います。
確認する代表例は次のとおりです。
- 該当日時に同様の問い合わせや来店があったか
- 口コミに書かれた商品・サービスを提供しているか
- 担当者や店舗で同様のトラブルが報告されていないか
- 予約履歴、注文履歴、問い合わせ履歴があるか
- 口コミの内容と実際の業務フローに矛盾があるか
- 投稿内容の一部だけが誤っているのか、全体が確認できないのか
「事実と違う」という社内担当者の感覚だけで判定せず、確認できた事実と確認できていない部分を分けて記録します。
4.削除理由を裏付ける証拠があるか確認する
証拠の有無によって、同じ口コミでも対応ルートは変わります。
一次判定では、証拠を次の3段階にすると管理しやすくなります。
| 証拠レベル | 状態 | 判断 |
|---|---|---|
| 強 | 客観資料によって主張を具体的に確認できる | 削除申請・法務確認を進めやすい |
| 中 | 複数の社内記録はあるが断定までは難しい | 追加確認 |
| 弱 | 担当者の記憶や推測のみ | 原則として追加確認 |
保存対象には、口コミそのものだけでなく、予約記録、問い合わせ履歴、契約記録、メール、チャット履歴、防犯・入退館記録など、案件の性質に応じた資料があります。
ただし、個人情報を含む資料の取り扱いは社内ルールに従う必要があります。
5.法務確認へ上げるべき案件か判断する
プラットフォーム規約への違反と、法律上の権利侵害は同じものではありません。
名誉・信用やプライバシーなどに関わる可能性がある場合は、通常の削除申請だけで処理せず、法務確認を検討します。
法務省は、インターネット上で名誉毀損やプライバシー侵害などが問題となる場合、プロバイダ等の削除フォームなどを通じて削除を依頼できることを案内しています。また、自ら対応することが難しい場合には法務局への相談も案内しています。
具体的な投稿が違法か、権利侵害に当たるかは個別事情によって異なるため、広報・店舗担当者だけで断定しないことが重要です。
そのまま使える口コミ削除の一次判定シート
実務では、次の項目を1案件1行、または1案件1シートで管理すると判断を標準化できます。
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 案件ID | 社内管理番号 |
| 確認日 | 最初に確認した日 |
| 媒体 | Google マップなど |
| 対象URL | 口コミ・投稿の場所 |
| 投稿日時 | 確認できる範囲 |
| 投稿者 | 表示名 |
| 問題箇所 | 原文を抜粋 |
| 問題分類 | 虚偽疑い・個人情報・攻撃・無関係など |
| 該当規約 | 具体的な規約分類 |
| 規約一致度 | 高・中・低 |
| 事実確認 | 確認済み・一部確認・未確認 |
| 確認部署 | 店舗・CS・人事など |
| 証拠 | 保存した資料 |
| 証拠レベル | 強・中・弱 |
| 権利侵害の可能性 | あり・要確認・低い |
| 緊急性 | 高・中・低 |
| 一次判定 | A・B・C・D |
| 次の対応 | 削除申請・追加調査・返信・法務確認 |
| 担当者 | 対応責任者 |
| 再判定日 | 追加確認後の期限 |
特に「該当規約」「事実確認」「証拠レベル」を別項目にすることが重要です。
口コミが事実と違うと感じても、プラットフォーム規約上の削除理由が明確とは限りません。一方で、規約違反の可能性が高くても、それを裏付ける材料が不足していることもあります。
この3項目を分けることで、判断の飛躍を減らせます。
一次判定は「規約一致度×証拠」で優先順位を決める
案件が多い場合は、「規約一致度」と「証拠の強さ」の2軸で優先順位を決めます。
| 証拠が強い | 証拠が弱い | |
|---|---|---|
| 規約一致度が高い | 優先して削除申請 | 証拠を追加して申請判断 |
| 規約一致度が低い | 規約以外の対応を検討 | 返信・経過観察を基本とする |

規約違反の可能性だけでなく、判断を裏付ける証拠の強さも分けて評価すると、削除申請の優先順位を決めやすくなります。
削除申請を急ぐべきなのは、単に評価が低い口コミではありません。
「規約違反の該当箇所が具体的で、その判断を支える材料もある案件」です。
逆に、規約との一致が弱く証拠もない口コミへ申請を繰り返すより、返信やサービス改善など別の対応を検討する方が合理的です。
Google口コミでは削除申請後の再審査まで想定しておく
Google ビジネス プロフィールでは、ポリシー違反と思われる口コミを報告できます。
また、報告した口コミが削除対象ではないと判断された場合、Reviews Management Toolから対象となる口コミについて1回の再審査請求を行える仕組みがあります。Googleの公式案内では、一度の手続きで最大10件を選択でき、再審査結果はメールで通知されます。
そのため一次判定シートには、
- 初回申請日
- 選択した規約分類
- 判定結果
- 再審査の対象可否
- 再審査日
- 最終結果
を残せるようにしておくと、その後の進捗管理へ引き継ぎやすくなります。
一次判定シートの役割は「削除まで管理すること」ではありません。
削除申請へ進める案件かを決め、次の工程へ判断根拠と必要資料を渡すことです。
よくある誤判定を防ぐ
「事実無根だから削除できる」と即断しない
社内では事実無根と思われても、プラットフォーム側が同じ判断をするとは限りません。
どの規約に抵触すると考えるのか、何によって説明できるのかを整理します。
星1だけの口コミを自動的に削除候補にしない
低評価であること自体と規約違反は別です。
Googleも、単に内容が気に入らないという理由だけで報告しないよう案内しています。
削除申請前に証拠を消さない
投稿が編集・削除される可能性もあるため、対象URL、投稿者、投稿日時、口コミ全文、画面表示などは最初に保存します。
規約違反と法的問題を混同しない
Googleなどの規約に抵触するかという判断と、名誉毀損やプライバシー侵害など法律上の問題は判断基準が異なります。
法的評価が必要な案件は、一次判定でDに振り分け、適切な専門家へ引き継ぎます。
一次判定から実際の対応までの流れ
実務では次の順番にすると、削除判断が属人化しにくくなります。
- 口コミを発見する
- URL・本文・画面などを保存する
- 問題となる記述を特定する
- 最新のプラットフォーム規約と照合する
- 社内で事実確認する
- 証拠の有無と強さを確認する
- 権利侵害の可能性を確認する
- A〜Dへ一次判定する
- 削除申請・追加確認・返信・法務確認へ引き継ぐ
- 新しい事実や資料が出た場合は再判定する

口コミ削除では、申請を最初の工程にせず、証拠保全と規約・事実確認を終えてから対応ルートを決めます。
ポイントは、削除申請を工程の最初に置かないことです。
「保存→規約→事実→証拠→判定→申請」という順番を決めておけば、担当者が変わっても同じ考え方で処理できます。
まとめ
口コミ削除対応を標準化するには、「削除できるか」を担当者の感覚だけで決めず、申請前のゲートとなる一次判定シートを設けることが重要です。
最低限、
- 問題となる記述
- 該当するプラットフォーム規約
- 社内で確認できた事実
- 証拠の有無と強さ
- 権利侵害の可能性
を確認し、「削除申請」「追加確認」「返信・経過観察」「法務確認」の4ルートへ分類します。
削除できる可能性が高い案件だけを選ぶのではなく、証拠不足や法務確認が必要な案件を正しく止めることも一次判定の役割です。
すでに複数部署や複数店舗で口コミ対応を行っている企業は、過去案件を同じ判定シートで再分類すると、担当者ごとの判断差や、削除申請へ進む条件のばらつきを確認しやすくなります。
参考文献・データ元
-
Google「ビジネス プロフィール上の不適切なクチコミを報告する」
Google ビジネス プロフィール ヘルプ。削除対象、報告、再審査の確認に使用。
URL: https://support.google.com/business/answer/4596773?hl=ja -
Google「禁止および制限されているコンテンツ」
Google マップのユーザー作成コンテンツに関するポリシー。偽のエンゲージメント、ハラスメント、個人情報、無関係な投稿などの分類確認に使用。
URL: https://support.google.com/contributionpolicy/answer/7400114?hl=ja -
法務省「インターネット上の人権侵害をなくしましょう」
インターネット上の名誉・プライバシー侵害等に対する削除依頼と相談ルートの確認に使用。
URL: https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken88.html
