採用サイトに社員紹介や福利厚生、選考FAQを用意しても、「どのページが応募判断に役立ったのか」はPVだけでは分かりません。見るべきなのは、単に何がよく閲覧されたかではなく、応募した人としなかった人で閲覧内容にどのような差があり、応募前にどんな順序で情報を見ていたかです。
この記事では、Google Analytics 4(GA4)を使い、採用サイトのコンテンツを分類したうえで、閲覧・エンゲージメント・回遊・応募をつなげて分析する方法を解説します。読後には、「社員紹介を増やすべきか」「福利厚生ページへの導線を強めるべきか」「FAQを直すべきか」を、感覚ではなく行動データから判断できる状態を目指します。
採用サイトの行動分析では「人気ページ」と「応募に関わるページ」を分けて考える
採用サイトの改善で最初に見るべきなのは、PVランキングではありません。閲覧数が多いページと、応募した求職者がよく見ているページは同じとは限らないからです。
採用ファネル全体のKPIと改善対象の見つけ方は、採用改善の効果測定の全体像で確認できます。
株式会社マイナビが2025年10月に実施した調査では、中途採用・転職活動に関する個人1,354件の回答で、企業の採用ホームページを「非常に参考にする」が41.7%、「ある程度参考にする」が47.4%でした。また、採用ホームページを参考にしている1,308件では、重視する情報の上位が「給与・手当・賞与」58.2%、「仕事内容の詳細」47.9%でした。採用サイトは多くの求職者に参照されていますが、どの情報が重要かはコンテンツごとに異なります。
自社サイトでは、次の4つを分けて確認してください。
| 見るもの | 分かること | それだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 閲覧数・ユーザー数 | よく見られているページ | 応募判断に役立ったか |
| 平均エンゲージメント時間 | ページがブラウザ上で実際にフォーカスされていた時間の傾向 | 内容を理解・納得したか |
| 回遊経路 | どのページからどこへ進んだか | そのページが移動の原因だったか |
| 応募者の閲覧率 | 応募した人に多く見られたコンテンツ | 閲覧が応募を引き起こしたか |
GA4の「平均エンゲージメント時間」は、Webページがブラウザでフォーカスされていた時間をもとにした指標です。「長い=熟読した」と断定するのではなく、閲覧数や次の行動と組み合わせて判断します。
重要なのは、「よく見られたか」から一歩進み、「応募した求職者にどの情報が多く接触していたか」を確認することです。
最初に採用サイトのページを6種類程度へ分類する
ページ単位だけで分析すると数字が分散するため、最初にページを「求職者が何を知るためのコンテンツか」で分類します。

ページを役割ごとに分類すると、社員紹介や福利厚生など同じ目的のコンテンツをまとめて比較できます。
| コンテンツ分類 | 対象ページの例 | 求職者が確認する主な内容 |
|---|---|---|
| job_detail | 求人詳細・募集要項 | 仕事内容、条件、勤務地、応募資格 |
| employee_story | 社員紹介・インタビュー | 働く人、キャリア、職場の雰囲気 |
| benefits | 福利厚生・制度 | 働き方、休暇、制度、支援 |
| selection_faq | 選考FAQ・選考フロー | 応募後の流れ、不安、選考条件 |
| culture | 文化・価値観・社風 | 会社との相性、仕事の進め方 |
| company_info | 会社紹介・事業紹介 | 事業内容、安定性、将来性 |
URLが「/interview/」「/benefits/」のように整理されていれば、ページパスでグループ化できます。URLだけで分類しにくい場合は、content_typeのようなイベントパラメータを付け、GA4でイベントスコープのカスタムディメンションとして登録すると、コンテンツ分類別に分析できます。
Google Analyticsでは、イベントパラメータに独自の情報を付与し、イベントスコープのカスタムディメンションを作成して探索やレポートで分析できます。採用サイトでは、ページタイトルだけに頼らず、同じ役割のページをまとめて比較できる状態を先につくることが重要です。
GA4では「閲覧→関与→回遊→応募」の4段階を計測する
採用サイトのコンテンツ価値を分析するには、ページビューだけでなく、少なくとも「閲覧」「関与」「回遊」「応募」の4段階を取ります。

採用サイトはページビューだけでなく、閲覧後の関与・回遊・応募までつなげて確認します。
Google Analytics 4では、通常のWebサイトでページ読み込みやブラウザ履歴の変更時にpage_viewが送信されます。拡張計測では、ページの縦方向90%が初めて表示されたときにscroll、フォームへの最初の操作でform_start、フォーム送信時にform_submitを取得できます。ただし、採用管理システムへの外部遷移やフォーム実装によっては自動計測が期待どおり動かないため、実際の応募操作で検証してください。
| 段階 | 主なイベント・指標 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 閲覧 | page_view、ユーザー数 | どの情報へ接触したか |
| 関与 | 平均エンゲージメント時間、scroll | ページを開いただけで終わっていないか |
| 回遊 | 経路データ探索、内部CTAクリック | 次にどこへ進んだか |
| 応募 | form_start、form_submit、独自の応募完了イベント | 応募行動につながったか |
GA4標準のscrollは、任意の25%・50%・75%を自動で取る仕組みではありません。標準では90%到達時に発生するため、ページの中間地点までの到達を細かく知りたい場合は、Googleタグマネージャーなどを使った追加計測を検討します。
また、応募完了を分析の終点にする場合は、実際の応募完了を表すイベントを明確にしてください。自社フォームなら送信完了、外部ATSなら応募ボタンクリックや外部遷移を代替指標にするなど、計測できる範囲を区別します。応募フォーム自体の離脱診断は、求人詳細・CTA・フォームの応募導線分析と分けて扱ったほうが、コンテンツ分析の目的がぶれません。
応募者と非応募者で「どのコンテンツを見たか」を比較する
採用サイトの行動分析で中心になるのが、応募者と非応募者の比較です。
GA4の探索ではセグメントを使って特定のユーザー群を比較できます。応募完了イベントを設定できている場合、たとえば「応募完了イベントを発生させたユーザー」と「発生させていないユーザー」に分け、社員紹介、福利厚生、FAQなどの閲覧率を比較します。ファネルデータ探索では複数セグメントを比較することもできます。
本記事では、実務上の比較指標として次の3つを使います。いずれもGA4の標準指標名ではなく、分析のために算出する指標です。
応募者閲覧率
応募者閲覧率 = 該当コンテンツを1回以上見た応募者数 ÷ 応募者数
非応募者閲覧率
非応募者閲覧率 = 該当コンテンツを1回以上見た非応募者数 ÷ 非応募者数
閲覧関与比
閲覧関与比 = 応募者閲覧率 ÷ 非応募者閲覧率

応募者と非応募者を同じ条件で比較すると、応募者に相対的に多く見られているコンテンツを探せます。ただし、閲覧が応募の原因とは限りません。
たとえば、説明用の架空データとして、応募者120人のうち72人が社員紹介を閲覧し、非応募者1,000人のうち300人が閲覧していたとします。
応募者閲覧率は60%、非応募者閲覧率は30%、閲覧関与比は2.0です。この場合、「今回の計測期間では、社員紹介は応募者に相対的に多く閲覧されていた」と判断できます。
ただし、閲覧関与比が高くても「社員紹介を見たから応募した」とは証明できません。
応募意欲が高い人ほど多くのページを読む可能性があり、職種・流入元・デバイスでも行動は変わります。同じ条件で比較してください。
「応募直前に何を見たか」は経路データ探索で逆向きに確認する
応募者と非応募者の閲覧差が分かったら、次はページの順序を確認します。
GA4の経路データ探索では、開始地点だけでなく終了地点を設定できます。応募完了イベントを終了地点にすると、応募前にどのページやイベントを経由していたかを逆向きに確認できます。Google公式ヘルプでも、特定イベントを終点にして、そこへ至る前の行動を確認する後方経路の方法が案内されています。
たとえば、次のような経路です。
- 求人詳細 → 社員紹介 → 福利厚生 → 応募
- 会社紹介 → 企業文化 → 求人詳細 → 応募
- 求人詳細 → 選考FAQ → 応募
- 社員紹介 → 求人詳細 → 応募
経路では、社員紹介が応募直前に多いなら求人詳細からの内部リンクを、選考FAQが応募前に多いなら不安解消の役割を確認します。福利厚生ページは応募者の閲覧率が高いのに到達が少ないなら、内容より先に導線改善が候補です。
GA4の経路データ探索は、設定した期間によって複数セッションにまたがる経路も扱います。そのため「同じ1回の訪問だけで応募判断が完結する」という前提を置かず、一定期間の行動として見ることができます。
改善優先順位は「閲覧量×応募者での多さ」で決める
分析後にありがちな失敗は、数字を見て終わることです。改善対象は、閲覧量と応募者での閲覧の多さを組み合わせて決めると整理しやすくなります。
| 状態 | 解釈 | 最初の改善候補 |
|---|---|---|
| 閲覧量が多い・応募者にも多い | 重要コンテンツの可能性が高い | 内容の鮮度維持、求人への接続強化 |
| 閲覧量が少ない・応募者には多い | 価値はあるが発見されにくい可能性 | ナビゲーション、関連記事、求人詳細からの導線追加 |
| 閲覧量が多い・応募者では少ない | 見られているが応募との関係が弱い可能性 | 内容、対象読者、次の導線を再点検 |
| 閲覧量が少ない・応募者でも少ない | 優先度が低い可能性 | 統合、縮小、役割の再定義 |

閲覧量と応募者での閲覧の多さを組み合わせると、導線強化・維持強化・内容再点検・統合縮小の優先順位を整理できます。
ここに平均エンゲージメント時間、90%スクロール、次ページ、応募直前経路を加えて原因仮説を作ります。
たとえば「社員紹介は閲覧量が少ないが応募者閲覧率が高い」なら、記事本数を増やす前に、求人詳細から社員紹介への導線を目立たせるほうが先です。
「福利厚生は閲覧量が多いが平均エンゲージメント時間が短く、その後の求人詳細への移動も少ない」なら、制度名の一覧だけで終わっていないか、対象者・利用条件・実際の使われ方が分かるかを確認します。
「選考FAQは応募直前によく見られている」なら、FAQを別ページに閉じ込めず、求人詳細や応募CTAの近くにも重要回答を配置する方法が考えられます。
このように、改善は「人気だから増やす」ではなく、「どの段階の行動を変えたいか」から決めます。
求職者が重視する情報と、自社で見られている情報のズレを確認する
採用サイトの行動分析では、企業側が重要だと思っている情報と、求職者が実際に確認している情報のズレも見つけられます。
マイナビの2025年調査では、採用ホームページを参考にする個人1,308件のうち、重視する情報は「給与・手当・賞与」58.2%、「仕事内容の詳細」47.9%が上位でした。一方、企業側661件が「求職者の反応が良かった」と回答した情報では、「仕事内容の詳細」33.6%、「給与・手当・賞与」33.4%が上位でした。
この調査は全国の中途採用・転職活動に関する全体傾向であり、そのまま自社サイトの正解にはなりません。だからこそ、自社のGA4で確認します。
たとえば企業側が社員インタビューに制作工数をかけていても、求職者が求人詳細から社員紹介へ進めていないなら、問題は記事内容ではなく導線かもしれません。福利厚生を充実させていても、制度名だけで利用イメージが伝わらず短時間で戻られているなら、情報の見せ方が課題かもしれません。
逆に、一般調査では上位に見えないコンテンツでも、自社の応募者に多く閲覧されているなら、その会社に固有の採用価値である可能性があります。
一般傾向と自社の実行動を分けて考えることが重要です。
GA4の数字だけで「なぜ」を断定せず、改善後に同じ条件で再測定する
GA4で分かるのは、基本的に「何が起きたか」です。「なぜそのページを見たのか」「なぜ応募しなかったのか」までは、行動データだけでは確定できません。
採用Webサイトに関する研究でも、Webサイトの情報や使いやすさ、見た目と、企業魅力度や応募意向との関係が検討されています。
2019年の研究では181人の求職者データから、採用Webサイトの情報の関連性・正確性・新しさが、Webサイトへの態度や組織魅力度を通じて応募追求意向などと関係するモデルが示されました。
2003年の252人を対象にした実験研究では、採用Webサイトの構成や利用期待が、知覚された使いやすさを通じて組織魅力度と関係していました。
2026年のイタリアの大学院生435人を対象にした研究でも、企業Webサイトの美的評価と応募意向の関係が、組織魅力度を介して確認されています。
ただし、これらの研究は対象国、年齢、企業、調査条件が異なります。自社GA4の閲覧データと直接同じものではありません。研究は「採用サイトの情報や体験が応募判断と無関係ではない」ことを考える材料として使い、自社の改善効果は自社データで確かめます。
改善後は、できるだけ同じ職種、流入元、デバイス、時期条件で再測定します。
- 対象コンテンツの閲覧率は増えたか
- 応募者閲覧率と非応募者閲覧率の差はどう変わったか
- 求人詳細から対象コンテンツへの移動は増えたか
- 対象コンテンツから求人詳細・応募への移動は増えたか
- 応募完了までの経路に変化が出たか
応募者数が少ない場合は、率だけで結論を出さず、必ず実人数も併記してください。少数の応募で比率が大きく動くと、改善効果を過大評価しやすくなります。
GA4へ応募者の氏名・メールアドレスなどを送信しない
採用サイトでは応募フォームを扱うため、通常のWebサイト以上に計測データの設計へ注意が必要です。
Googleは、Google Analyticsへ個人を特定できる情報を送信することをポリシーで禁止しています。メールアドレスや個人の電話番号などをイベントパラメータやカスタムディメンションへ入れないでください。
行動分析で必要なのは「誰が応募したか」という個人名ではなく、「応募したユーザー群ではどのコンテンツが多く閲覧されていたか」という集計です。
ATSや応募管理データと詳細に突合したい場合も、GA4へ応募者情報を直接流し込むのではなく、社内の個人情報管理・同意・利用目的に沿った別の分析環境を検討してください。
採用サイト行動分析は6ステップで始められる
初めて実施する場合は、次の順番で進めると分析が散らかりにくくなります。
STEP1:応募の終点を決める
応募完了、フォーム送信、外部ATSへの応募遷移など、今回の分析で「応募」とみなすイベントを固定します。
STEP2:採用コンテンツを分類する
求人詳細、社員紹介、福利厚生、選考FAQ、企業文化、会社情報などへ分類します。URLで分けられない場合はcontent_typeなどのイベントパラメータを設計します。
STEP3:計測できているか実操作で確認する
page_view、スクロール、内部CTA、フォーム開始、応募完了が意図どおり記録されるか確認します。計測が不完全な状態で分析を始めると、ページの評価を誤ります。
STEP4:応募者と非応募者の閲覧率を比較する
コンテンツ分類ごとに、応募者閲覧率・非応募者閲覧率・閲覧関与比を確認します。まずは「どの情報が応募者に相対的に多く見られているか」を見つけます。
STEP5:応募完了から逆向きに経路を見る
経路データ探索で応募イベントを終了地点にし、その前に見られていたページやイベントを確認します。単独ページではなく、情報の組み合わせと順序を見ます。
STEP6:1つの仮説を改善し、同じ指標で再測定する
導線追加、内容更新、FAQ配置変更など、分析結果と直接つながる改善を優先します。複数箇所を一度に変更しすぎず、変更後も同じ定義・同じ指標で比較します。
この6ステップを回すことで、採用サイトを「コンテンツを増やす場所」から「求職者の情報収集行動を見ながら改善する場所」へ変えられます。
まとめ
採用サイトの行動分析で見るべきなのは、PVが多いページだけではありません。
求人詳細、社員紹介、福利厚生、選考FAQなどを分類し、応募者と非応募者で閲覧率を比較し、さらに応募完了から逆向きに回遊経路を確認することで、「どの情報を強化するか」「どこから導線を増やすか」を具体的に判断できます。
特に重要なのは、閲覧と応募の関係を因果関係として断定しないことです。職種、流入元、デバイスなど条件をそろえ、改善後に同じ指標で再測定してください。
すでに採用サイトへ一定のアクセスがあるなら、全面リニューアルを検討する前に、まず「応募した求職者は何を見ていたか」をGA4で確認するところから始めると、改善対象を絞りやすくなります。
参考文献・データ元
- Google Analytics for Developers「Measure pageviews」。
page_viewの計測仕様、ページ別分析に使用。 参照ページ - Google Analytics Help「Enhanced measurement events」。
page_view、scroll、form_start、form_submitの仕様確認に使用。 参照ページ - Google Analytics Help「Create event-scoped custom dimensions」。
content_type等のカスタムイベントパラメータを分析する方法の確認に使用。 参照ページ - Google Analytics Help「Path exploration」。応募完了イベントを終点にした後方経路分析の仕様確認に使用。 参照ページ
- Google Analytics Help「Funnel exploration」。セグメント比較とステップ分析の仕様確認に使用。 参照ページ
- Google Analytics Help「Best practices to avoid sending Personally Identifiable Information (PII)」。採用サイト計測時の個人情報取り扱い上の注意に使用。 参照ページ
- マイナビキャリアリサーチLab「2025年9月度 中途採用・転職活動の定点調査」2025年10月31日公開。採用ホームページの参照状況、重視情報、企業側の反応認識に使用。 参照ページ
- Priyadarshini, C., Sreejesh, S., & Jha, R. R. (2019), “Impact of Informational Characteristics of the Recruitment Website on Graduating Students’ Job Pursuit Intention: A Moderated Mediation Study,” International Journal of Human Capital and Information Technology Professionals, 10(2), 1-19. DOI: 10.4018/IJHCITP.2019040101. 論文情報
- Williamson, I. O., Lepak, D. P., & King, J. (2003), “The effect of company recruitment web site orientation on individuals’ perceptions of organizational attractiveness,” Journal of Vocational Behavior, 63(2), 242-263. DOI: 10.1016/S0001-8791(03)00043-5. 論文情報
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