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採用チャネルと入社後定着率をつなげて評価する方法|90日・180日で見る採用KPI設計

部署:人事・採用担当者レベル:実践
採用担当者が採用チャネル別のデータと90日・180日後の定着状況を確認している様子

応募数や採用単価が良いチャネルでも、入社後すぐに離職する人が多ければ、本当に採用成果が高いとは言い切れません。採用チャネルを評価するときは、応募・面接・内定・承諾・入社で終わらせず、90日・180日後の定着まで同じ人材単位で追うことが重要です。

特に確認したいのは、チャネルだけではありません。職種、入社時期、選考時の評価、採用コストまで接続すると、「どこから採れば定着しやすいか」だけでなく、「なぜ早期離職が起きているのか」「次の採用予算をどこへ配分すべきか」まで判断しやすくなります。

この記事では、採用チャネルと定着率を同じコホートで比較する方法、90日・180日定着率の計算式、定着後まで含めた採用単価、改善判断の手順を解説します。

採用チャネルは「何人採れたか」だけでなく「何人残ったか」まで評価する

採用チャネルの評価では、応募数、面接率、内定率、内定承諾率、採用単価がよく使われます。ただし、これらは基本的に入社前または入社時点までの成果です。

最終的に確認したいのは、そのチャネルから採用した人が入社後も定着しているかです。

厚生労働省が2025年10月24日に公表したデータでは、2022年3月卒の新規大学卒就職者の就職後3年以内離職率は33.8%、新規高校卒就職者では37.9%でした。大学卒では、事業所規模5人未満が57.5%、1,000人以上が27.0%と、企業規模によっても大きな差があります。

この数字を自社の90日・180日定着率の目標値としてそのまま使うことはできません。対象が新卒者であり、観測期間も3年間だからです。一方で、採用後の離職は無視できない経営課題であり、業種や企業規模など条件をそろえて評価する必要があることは分かります。

2025年に発表された日本企業・外資系企業を対象とする研究でも、採用経路と離職意向、求職行動、勤続期間などの離職関連アウトカムとの関係が分析されています。調査は755人への時差を設けた質問調査と、110人への半構造化インタビューを組み合わせています。採用経路と定着を別々のテーマとして扱うのではなく、接続して分析する考え方には研究上の裏付けもあります。

90日・180日定着率は「観測可能な入社者」だけを分母にする

90日・180日定着率を正しく比較するには、まず分母を統一します。

基本式は次のとおりです。

90日定着率=入社90日後も在籍している人数 ÷ 90日経過を確認できる入社者数 × 100

180日定着率=入社180日後も在籍している人数 ÷ 180日経過を確認できる入社者数 × 100

重要なのは、まだ90日・180日を迎えていない人を分母へ入れないことです。

例えば8月末に180日定着率を確認する場合、観測日の180日前より後に入社した社員については、まだ180日定着したか判断できません。その人たちは「未定着」ではなく「未観測」として分けます。

入社から90日・180日までの時間軸で在籍者、離職者、未観測者を分けた定着率コホートの図

90日・180日定着率は、各観測期間をすでに経過した入社者だけを分母にして計算します。

KPI分子分母主な用途
90日定着率90日後も在籍している人90日経過を確認できる入社者ごく早期のミスマッチ確認
180日定着率180日後も在籍している人180日経過を確認できる入社者半年間の定着状況確認
90日早期離職率90日以内の離職者90日経過を確認できる入社者初期離職の把握
180日早期離職率180日以内の離職者180日経過を確認できる入社者半年以内の離職把握

90日と180日の両方を持つ理由は、離職の発生時期を分けるためです。

90日までに離職が集中する場合は、募集時の情報、仕事内容への期待、選考時の見極め、入社直後の受け入れなどを優先的に確認します。90日は高くても180日で大きく落ちる場合は、配属、上司との関係、育成、評価、仕事内容など入社後の要因も含めて調べます。

ただし、離職時期だけで原因を断定してはいけません。退職理由、配属先、上司、職種などの情報と組み合わせて検証します。

採用チャネルと定着率をつなぐには人材単位のデータを作る

チャネル別定着率を分析するには、採用管理データと入社後の人事データを人材単位でつなげます。

集計表だけを別々に持っていると、「求人媒体Aから5人採用した」「今期は3人退職した」という事実は分かっても、その3人がどのチャネルから採用された人なのか追跡できません。

最低限、次の項目を同じIDに接続します。

項目記録する内容分析目的
人材ID候補者から入社後まで追える識別子データ接続
採用チャネル求人媒体、紹介、スカウト、リファラル等チャネル比較
職種・等級営業、エンジニア、管理職等条件をそろえる
応募・内定・入社日各日付コホート作成
選考評価面接評価、適性検査、評価項目等選考精度の検証
採用コスト媒体費、紹介料など費用対効果
90日・180日在籍在籍/離職/未観測定着率計算
離職日・離職理由確認できる範囲で分類原因分析
配属情報部門、拠点、上司等入社後要因の切り分け
採用チャネルや選考評価などの採用管理データと90日・180日在籍などの人事データを人材IDで接続する図

採用施策と定着を比較するには、採用管理データと入社後データを同じ人材IDでつなぐことが重要です。

個人情報を分析用に扱う場合は、必要な担当者だけが閲覧できるよう権限を設定し、経営会議などでは必要に応じて個人を特定できない集計値へ変換します。

チャネル比較では「同じ職種・同じ時期」をそろえる

チャネル別定着率で特に注意したいのが、単純比較です。

例えば、人材紹介を管理職採用に多く使い、求人媒体を若手営業職に多く使っている会社で、両チャネルの定着率をそのまま比べても、差が「チャネル」から生じたのか「職種・役職」から生じたのか判断できません。

そのため、まず次のように条件を分けます。

採用チャネル × 職種 × 入社時期

必要に応じて、勤務地、等級、新卒・中途なども加えます。

日本の若者5,631人を分析したJILPTの調査でも、応募経路だけでなく、入職前に得た情報と実際の労働条件の違い、雇用管理、能力開発など複数の要素が職場定着・離職に関係する可能性が示されています。

したがって、「媒体Aは定着率が低いから悪い」と即断するのではなく、同じ条件の人材同士で比較したうえで原因を調べる必要があります。

チャネル評価は採用数と定着率の2軸から始める

最初は複雑な分析をせず、採用数と定着率を2軸で整理すると判断しやすくなります。

採用数定着率基本判断
高い高い有力チャネル。拡大余地を確認
高い低いターゲット・訴求・選考・受け入れを重点点検
低い高い良質だが規模が小さい。拡張可能性を確認
低い低い縮小・停止・再設計の候補
採用数と定着率の高低で採用チャネルを拡大候補、重点改善、拡張余地、再設計候補の4つに分類したマトリクス

採用チャネルは定着率だけでなく採用数も合わせて見ると、拡大・改善・縮小の判断を整理しやすくなります。

ただし、最終的な予算判断ではコストも加えます。

「定着後の採用単価」でチャネルの費用対効果を見直す

通常の採用単価は、次の式で求めます。

採用単価=採用チャネルにかかった費用 ÷ 採用人数

これに加えて、入社後まで含めて評価する社内管理指標として、次のような指標を置くと判断しやすくなります。

90日定着採用単価=対象チャネルの採用費 ÷ 90日後も在籍する採用者数

180日定着採用単価=対象チャネルの採用費 ÷ 180日後も在籍する採用者数

「90日定着採用単価」「180日定着採用単価」は、公的に定められた標準KPIではありません。採用コストを入社後の成果まで接続して比較するための社内管理指標として使用します。

例えば、次は架空の計算例です。

チャネルAチャネルB
採用費240万円180万円
採用人数20人10人
通常の採用単価12万円18万円
90日後在籍者16人9人
90日定着率80%90%
90日定着採用単価15万円20万円
チャネルAとチャネルBについて採用単価、90日定着率、90日定着採用単価を比較した図

定着率が高いチャネルが、必ずしも定着者1人あたりの採用費まで最も低いとは限りません。採用数・定着率・コストを合わせて評価します。

このケースでは、Bの定着率はAより高い一方、90日定着者1人あたりの採用費はAの方が低くなります。

つまり、「定着率が最も高いチャネル=最も費用対効果が高いチャネル」とは限りません。

採用人数、定着率、定着後の採用単価を並べたうえで、必要な人材を必要数確保できるかまで見て予算を決めます。

選考評価まで接続すると「採用チャネルが悪い」のか切り分けやすい

チャネル別の定着率に差があったら、次に選考時の評価を接続します。

例えば、面接で「職務経験」「必要スキル」「志望理由」「仕事理解」「期待役割との適合」などを共通基準で評価している場合、それぞれの評価と90日・180日定着を比較します。

ポイントは、入社前に記録した評価を使うことです。

退職後に「あの人は面接時から合っていなかった」と評価を書き換えると、結果を知った後の解釈が混ざり、採用基準を正しく検証できません。

採用時の情報提供も重要です。52研究、約1万7,000人を対象としたメタ分析では、仕事や職場の現実を事前に伝えるリアリスティック・ジョブ・プレビューと自発的離職の関係を分析し、組織が誠実だという認識が重要な経路として示されています。

採用チャネルごとに定着率が違う場合、媒体そのものだけでなく、求人票やスカウト文面、紹介会社へ渡した求人情報、面接で伝えた情報まで確認する価値があります。

早期離職が多いときは4段階で原因を切り分ける

定着率の低いチャネルが見つかっても、すぐに停止するのではなく原因を切り分けます。

1.チャネル内のターゲットを確認する

同じ媒体でも、求人ごとにターゲットは異なります。

特定職種だけ離職が多いなら、チャネル全体ではなく求人条件や募集対象に問題がある可能性があります。

2.応募前・選考中の情報を確認する

求人票、スカウト、紹介会社への求人票、面接で伝えた仕事内容・条件と、実際の仕事との違いを調べます。

JILPTの調査でも、入職前に得た情報と実際の労働条件の違いは離職を考えるうえで重要な論点として扱われています。

3.選考基準を確認する

離職者に共通する選考評価がないか確認します。

特定の評価項目が低い人だけ定着しにくい場合は、その項目を採用判断へどう使うか再検討します。

一方、選考評価が高い人まで早期離職しているなら、採用基準以外の原因を疑います。

4.入社後の環境を確認する

配属先、上司、業務内容、勤務条件、育成方法、オンボーディングなどを比較します。

同じチャネルから入社した人でも、特定部署だけ離職が多ければ、採用チャネルを変えるだけでは問題が解決しない可能性があります。

採用KPIは月次入力・四半期分析・180日後再評価で運用する

定着KPIは、応募数や面接数のようにすぐ結果が確定しません。

そのため、データ入力と評価のタイミングを分けます。

  1. 毎月、応募・選考・内定・入社データを更新する
  2. 90日を迎えた人の在籍状況を更新する
  3. 180日を迎えた人の在籍状況を更新する
  4. 四半期または半期でチャネル×職種の差を比較する
  5. 採用施策・選考・情報提供・受け入れの改善対象を決める
  6. 改善後のコホートで再測定する

採用人数が少ない企業では、1か月ごとの定着率だけで良し悪しを決めないことも重要です。

例えば5人中4人が定着していれば80%ですが、1人の離職だけで20ポイント変動します。少人数の場合は「80%」だけではなく「4人/5人」と分子・分母も併記し、四半期・半期など期間を広げて傾向を確認します。

最初は7項目だけでも採用と定着をつなげられる

高度なHRシステムがなくても、次の7項目をそろえれば分析を始められます。

  • 入社者ID
  • 採用チャネル
  • 職種
  • 入社日
  • 90日・180日の在籍状況
  • 離職日・主な離職理由
  • 採用コスト

その後、選考評価、勤務地、配属先、上司、求人単位などを追加します。

最初からすべての情報を集めるより、採用チャネルと入社後の在籍状況を同じ人材IDでつなぐことを優先してください。

採用ファネルの終点を「内定承諾」や「入社」から「定着」へ伸ばすだけで、採用施策の評価は大きく変わります。

まとめ

採用チャネルを正しく評価するには、応募数や採用単価だけでは不十分です。

このテーマの全体像や前提を確認したい場合は、「採用改善の効果測定は何をどう見ればいい?指標体系とPDCAの全体像」もあわせて確認してください。

90日・180日定着率を人材単位でつなぎ、チャネル、職種、入社時期、選考評価、採用コストを同じ条件で比較すると、採用後まで含めた費用対効果を判断できます。

特に重要なのは、チャネル別の定着率だけで原因を決めないことです。職種構成、採用時の情報、選考基準、配属、オンボーディングなどを切り分け、改善後のコホートを再測定してください。

まずは「入社者ID・採用チャネル・職種・入社日・90日/180日在籍・離職情報・採用コスト」の7項目をつなぎ、90日定着率から確認する方法が始めやすいでしょう。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

  • 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」、2025年10月24日公表。新規高卒・大卒就職者の3年以内離職率、事業所規模別・産業別離職率の確認に使用。 厚生労働省 公表資料
  • 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」。雇用保険データを用いた就職者・離職者の集計方法の確認に使用。 厚生労働省 集計方法
  • 労働政策研究・研修機構「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ」、2019年3月29日。5,631人を対象とした調査。応募経路、入職前情報と実態の違い、雇用管理等と離職に関する考察に使用。 JILPT 調査シリーズNo.191
  • Peltokorpi, V. & Froese, F. J. “Recruitment Sources and Retention Outcomes in Domestic and Foreign-Owned Firms in Japan: A Human Capital Perspective.” Human Resource Management Journal, 2025. DOI: 10.1111/1748-8583.12605。日本における採用経路と定着・離職関連アウトカムの研究として使用。 Wiley論文ページ
  • Earnest, D. R., Allen, D. G. & Landis, R. S. “Mechanisms Linking Realistic Job Previews with Turnover: A Meta-Analytic Path Analysis.” Personnel Psychology, 2011. DOI: 10.1111/j.1744-6570.2011.01230.x。採用時の現実的な情報提供と自発的離職の関係を整理する根拠として使用。 Wiley論文ページ

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