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内定辞退理由の記録・分析方法|理由分類・面談メモ・改善内容

部署:人事・採用担当者部署:経営者・責任者レベル:実践
内定辞退理由のメモを分類し、採用改善に使える形へ整理する採用担当者のデスク

内定辞退が発生したとき、「他社に決めた」「条件が合わなかった」とだけ記録しても、次の採用改善にはつながりにくいものです。大切なのは、候補者から聞いた内容をそのまま残すことと、社内で比較できる共通分類を分けて管理することです。そのうえで、職種や採用経路ごとに傾向を集計し、自社で改善できる理由から対策へつなげます。この記事では、辞退理由の分類、聞き方、面談メモ、集計、改善優先度の決め方まで、実務で使える形に整理します。

内定辞退理由は「6分類+本人の発言」で記録する

内定辞退理由を分析するなら、自由記述だけを残すのではなく、共通する理由を分類できる状態にします。ただし、分類だけでは具体的な事情が失われるため、「候補者が実際に伝えた内容」と「分析用の分類」を両方残すことが重要です。

マイナビの2026年卒企業新卒内定状況調査では、企業が把握した辞退理由として「より志望度の高い企業から内定が出た」が49.8%で最多でした。ほかにも希望職種17.7%、希望勤務地15.1%、給与条件11.4%など複数の理由が確認されています。

ただし、「他社のほうが志望度が高かった」だけでは、自社が何を改善すべきか分かりません。パーソル総合研究所の調査では、最終的に内定を承諾した企業についても、57.7%はエントリーシート提出時点から一貫して第1志望だったわけではありませんでした。選考中に志望順位が変わるケースがあるため、最終的な辞退理由だけでなく、何が比較材料になったのかまで確認する必要があります。

実務では、まず次の6分類を基本にすると整理しやすくなります。

分類 主な内容 記録例
条件 給与、福利厚生、勤務地、勤務時間、働き方 希望勤務地と配属予定地が合わなかった
仕事内容・配属 職種、担当業務、配属、キャリア 希望していた仕事内容と異なった
選考体験 面接、連絡、社員対応、選考スピード 面接時のコミュニケーションに不安があった
情報不足 仕事内容、職場、社員、キャリアなどが見えない 入社後に働く姿を具体的に想像できなかった
競合比較 他社との比較、志望順位、他社オファー 他社の仕事内容のほうが希望に近かった
個人事情・タイミング 家庭、進路変更、就職活動方針の変更など 就職活動そのものを見直した

分類は最初から細かくしすぎません。まず6分類程度で運用し、同じ理由が継続的に増えてきた場合に小分類を追加するほうが、担当者による分類のばらつきを防ぎやすくなります。

辞退理由を採用KPIの中でどう位置づけ、改善後に再測定するかは、採用改善の効果測定とPDCAの全体像で確認できます。

記録項目は「事実・本人申告・分析タグ」を分ける

辞退理由の記録で最も避けたいのは、候補者の発言と採用担当者の推測が混ざることです。「本人から聞いた内容」「採用上の事実」「社内分析のためにつけた分類」を別項目にします。

内定辞退理由を事実、本人申告、分析タグの3つに分けて記録する考え方

候補者本人が話した内容と、採用担当者による分類・解釈を分けて記録すると、推測が辞退理由として蓄積されるのを防ぎやすくなります。

最低限、次の項目をそろえると分析しやすくなります。

記録項目 記録する内容
募集職種・採用区分 職種、新卒・中途など
内定提示日 内定を伝えた日
辞退連絡日 辞退の意思を受けた日
辞退理由の原文 候補者が伝えた内容を要約しすぎず記録
主分類 6分類から最も大きい理由を1つ
副分類 複数の理由がある場合に追加
決め手 最終判断を左右した点
比較対象 他社との比較があったか。分からなければ「不明」
情報の確度 本人が明言/担当者の推測/不明
改善対象 自社で変更できる内容か
補足メモ 背景や会話内容で必要な情報

特に「情報の確度」は重要です。

たとえば、候補者が「他社に決めました」とだけ伝えた場合、「給与で負けた」と採用担当者が判断してはいけません。「本人申告:他社へ入社」「具体的な比較理由:不明」と記録します。

この区別がないと、推測で作られた辞退理由が何件も蓄積され、実際には存在しない採用課題を改善することになりかねません。

辞退理由の聞き方は「選択式+自由回答」の2段階にする

候補者に辞退理由を聞く場合は、回答を強く求めるのではなく、答えやすい選択肢を示したうえで、差し支えない範囲で具体的な理由を確認します。

たとえば、最初に次のように聞きます。

「今後の採用改善の参考にしたいため、差し支えない範囲で、今回の判断に最も影響した点を教えていただけますか」

そのうえで、

  • 条件
  • 仕事内容・配属
  • 選考中の体験
  • 入社後のイメージや情報不足
  • 他社との比較
  • 個人的な事情
  • その他

から近いものを確認します。

さらに回答できそうであれば、「その中で、特に判断の決め手になった点はありましたか」と一段だけ具体化します。

すべての候補者から本音を取得できるとは限りません。

2026年に公表された、二次面接以降で選考辞退したITエンジニア221人の調査では、71.2%が辞退の本当の決め手を企業へ正直に伝えていなかったと回答しました。この調査は内定辞退全般ではなくITエンジニアの選考辞退が対象ですが、企業が受け取った理由をそのまま客観的な原因とみなさないほうがよいことを示す材料になります。

回答が得られなければ「理由不明」と記録します。無理に担当者の推測で埋める必要はありません。

選択式だけでは拾えない自由記述を分類・集計する場合は、候補者アンケートの自由記述を分析する方法も参考になります。

面談メモは「発言」と「担当者の解釈」を分ける

面談メモには、候補者を評価する言葉ではなく、何が起きたかを確認できる情報を残します。

たとえば「志望度が低かった」という記録では、後から理由を分析できません。

次のように記録すると、改善対象が見えやすくなります。

避けたい記録 分析しやすい記録
志望度が低かった 他社の仕事内容のほうが希望職種に近いと本人から説明あり
給与に不満 提示条件を比較した結果、他社を選択したと本人から説明あり
会社理解が浅い 配属後の業務内容が具体的に分からなかったと本人から説明あり
面接官が合わなかった 面接時のコミュニケーションに不安を感じたと本人から説明あり

面談メモでは「誰が悪かったか」を決める必要はありません。

必要なのは、同じ指摘が別の候補者でも繰り返されているか確認できる状態にすることです。

月次分析は「辞退件数・理由割合・層別比較」の順で見る

辞退理由を蓄積したら、最初から複雑な分析をする必要はありません。まず全体件数を確認し、次に理由の構成、最後に職種や採用経路による違いを見ます。

内定辞退を辞退件数、理由割合、職種や採用経路別の比較の順に分析するフロー

月次分析では、まず全体の辞退件数を確認し、その後に理由の構成、職種や採用経路による違いを見ます。

基本指標は次の3つです。

内定辞退率

内定辞退者数 ÷ 内定提示者数 × 100

マイナビの調査でも、内定辞退率は「内定・内々定を辞退された学生数÷内定・内々定を出した学生数」で算出されています。2026年卒調査では、内定辞退率が5割以上だった企業が41.5%でした。

理由把握率

辞退理由を把握できた人数 ÷ 内定辞退者数 × 100

辞退理由の割合だけでなく、そもそも何割の辞退者から理由を確認できているかも見ます。

主な辞退理由の構成比

各理由を主理由とした人数 ÷ 理由を把握できた辞退者数 × 100

主分類は原則1つにすると、構成比を比較しやすくなります。複数の事情がある場合は、副分類を追加します。

その後、必要に応じて次の単位で比較します。

  • 募集職種
  • 新卒・中途
  • 採用経路
  • 選考担当者
  • 内定提示から辞退までの日数
  • 採用時期
  • 拠点や勤務地

ただし、1~2件の辞退だけで「この職種は給与が原因」「この面接官が原因」と決めつけるのは避けます。複数件で同じ傾向が続くかを確認してください。

改善優先度は「多さ・改善可能性・影響範囲」で決める

件数が多い理由を、そのまま最優先で改善する必要はありません。「発生件数が多いか」「自社で改善できるか」「改善すると複数候補者に影響するか」の3点で優先度を決めます。

内定辞退理由の改善優先度を多さ、改善可能性、影響範囲の3点で判断する図

辞退理由の件数だけではなく、自社で改善できるか、改善した場合にどこまで影響するかも含めて優先順位を決めます。

辞退理由 確認すること 改善例
条件 同じ条件で繰り返し辞退しているか 条件提示時期や求人情報の見直し、必要に応じて条件そのものを検討
仕事内容・配属 入社後の仕事が具体的に伝わっているか 仕事内容の説明、配属情報、現場社員との接点を見直す
選考体験 特定段階で同じ指摘が出ていないか 面接官への共有、面接方法、連絡速度を見直す
情報不足 何が分からなかったのか 採用ページ、説明資料、面談内容など必要な情報提供を増やす
競合比較 他社を選んだ具体的な決め手が分かるか 比較された要素ごとに対応可否を判断する
個人事情 自社で変更可能な問題か 無理に施策化せず傾向のみ確認する

採用に関する研究でも、候補者の判断には仕事内容や企業の特徴だけでなく、採用プロセスや採用担当者との接点が関係することが確認されています。

232研究、250サンプル、合計10万8,632人を対象にしたメタ分析では、仕事内容、企業特性、採用プロセス、採用担当者の行動などが採用段階ごとの企業への魅力度と関連し、最終的な仕事選択では仕事内容の特徴が特に重要な要因の一つでした。

そのため、「給与」「他社」といった大きな分類だけで分析を終わらせず、どの要素が判断に影響したのかまで分けることが重要です。

辞退理由と改善施策を1対1でつなぐ

辞退理由を集計したら、分析レポートを作るだけで終わらせず、具体的な改善項目へ変換します。

次の5項目をセットにすると運用しやすくなります。

項目 内容
確認した事実 どの辞退理由が増えたか
原因候補 何が影響している可能性があるか
改善内容 何を変更するか
確認指標 何を見れば改善を判断できるか
再確認時期 いつ再集計するか

たとえば、「仕事内容が分からない」という回答が複数確認された場合、採用サイト全体を無条件に作り直すのではありません。

まず、候補者が何を知りたかったのか確認します。

配属先なのか、1日の仕事なのか、キャリアなのか、実際に一緒に働く人なのかによって改善方法は異なります。

ALL DIFFERENTが2026年卒の内定者465人を対象に行った調査では、辞退経験者の理由として「第一志望の企業ではなかった」が55.6%で最多となり、「自分が働くイメージを具体的に持てなかった」が25.1%で続きました。候補者が不足していたと感じる情報まで特定できれば、より具体的な改善につなげられます。

改善後も同じ分類で再測定する

改善施策を実施したら、分類方法を変えずに辞退理由を再集計します。

内定辞退理由を記録、分析、改善、再測定の順で継続的に見直す循環フロー

改善後も同じ分類と指標を使って再測定すると、変更前後の違いを追いやすくなります。

たとえば、仕事内容の情報不足が多かったため説明内容を変更した場合は、変更前後で「仕事内容・配属」「情報不足」の発生件数や構成比を比較します。

このとき、採用人数や内定提示数が違う期間を件数だけで比較しないことが重要です。辞退率や理由構成比も一緒に確認します。

また、改善後に辞退が減ったとしても、一つの施策だけが原因とは限りません。採用市場や応募者層、募集職種、競合企業なども変化します。

「変更後に数値がどう変わったか」という事実と、「施策が影響した可能性」という解釈を分けて記録すると、次回の判断に使いやすくなります。

辞退理由分析で避けたい5つの失敗

辞退理由のデータがあっても、記録方法が統一されていなければ改善には使えません。

特に避けたいのは次の状態です。

  1. 「他社決定」を一つの理由として処理し、具体的な比較要素を確認していない
  2. 自由記述だけで、担当者ごとに記録方法が違う
  3. 担当者の推測を候補者本人の理由として記録している
  4. 分類を細かくしすぎて、同じ理由が別カテゴリに分かれている
  5. 辞退件数だけを見て、内定提示数や理由把握率を確認していない

まずは分類をそろえ、同じ基準で3か月程度記録するだけでも、自社で繰り返し発生している辞退理由を確認しやすくなります。

辞退理由の個人情報は利用目的を明確にして管理する

辞退理由の中には、氏名や応募履歴と組み合わせることで個人情報として扱う必要がある情報も含まれます。

個人情報保護委員会は、個人情報を扱う場合、本人がどのような目的で利用されるか合理的に予測できる程度に利用目的を具体化することを求めています。

辞退理由を記録する場合も、必要以上の私的情報を集めず、自社の個人情報保護方針や採用情報の管理ルールに沿って扱います。

集計・改善に使うデータは、可能であれば個人単位の記録と切り分け、個人を特定する必要がない集計結果として扱う方法も検討できます。個人を識別できない統計データ自体は個人情報に該当しないと個人情報保護委員会は説明しています。

内定辞退理由の分析は「原因探し」ではなく次の採用改善につなげる

内定辞退理由を分析する目的は、辞退した候補者を引き止めることではありません。

同じ問題が次の候補者でも繰り返されないように、記録を採用改善へつなげることです。

まず本人の発言を残し、共通分類を付けます。次に、職種や採用経路ごとに繰り返している理由を確認します。そのうえで、自社で改善できる問題だけを選び、施策と再測定の指標を決めます。

なお、辞退理由から「採用サイトの情報不足」「口コミへの不安」「検索結果との情報差」などが見つかった場合、その情報接点自体の詳しい診断は別工程として行います。辞退理由分析では、まず社内に蓄積された定性データから「どこを詳しく調べるべきか」を特定するところまでが役割です。

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まとめ

内定辞退理由を採用改善に使うには、候補者の発言をメモするだけでは不十分です。

「条件」「仕事内容・配属」「選考体験」「情報不足」「競合比較」「個人事情・タイミング」などの共通分類を決め、本人申告と担当者の解釈を分けて記録します。

その後、辞退件数、理由把握率、理由構成比を確認し、職種や採用経路別に比較します。

改善するのは、件数が多い理由だけではありません。自社で変更でき、複数候補者に影響する問題から優先します。

そして施策実施後も同じ分類・同じ指標で再測定することで、内定辞退の記録を一度きりのメモではなく、次の採用を改善するデータとして活用できます。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

  • 「内定(内々定)辞退率の動向-辞退の理由と企業の辞退対策-」株式会社マイナビ、2026年3月16日公開。内定辞退率・辞退理由の把握に使用。マイナビキャリアリサーチLab
  • 「2026年卒企業新卒内定状況調査」株式会社マイナビ、2025年11月7日公開。2025年9月5日~10月3日、有効回答1,810社。辞退理由の確認に使用。調査ページ
  • 「新卒者の内定辞退に関する定量調査」パーソル総合研究所、2024年3月27日公開。本調査477人。選考途中での志望順位変化の確認に使用。調査ページ
  • 「内定者意識調査(内定期間のサポート編)」ALL DIFFERENT株式会社、2026年2月10日公開。2026年卒予定者465人。辞退理由と働くイメージに関する確認に使用。調査ページ
  • 「ITエンジニア221名に聞いた『選考辞退』の本音と沈黙」キッカケクリエイション、2026年8月18日公表。辞退理由の申告と実際の決め手が一致しない場合があることの参考に使用。調査リリース
  • Uggerslev, K. L., Fassina, N. E., & Kraichy, D.(2012)“Recruiting Through the Stages: A Meta-Analytic Test of Predictors of Applicant Attraction at Different Stages of the Recruiting Process.” Personnel Psychology, 65, 597–660. 採用段階の判断要因に関する背景研究として使用。論文ページ
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」個人情報の利用目的と統計データの扱いの確認に使用。個人情報保護委員会

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