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採用代行会社を乗り換える方法|ATS・応募者データ・媒体権限

部署:人事・採用担当者部署:経営者・責任者レベル:実践

採用支援会社を乗り換えるときに最も避けたいのは、会社を変更したこと自体ではなく、その切り替えによって選考中の候補者への連絡が止まったり、ATSの履歴が分からなくなったり、旧会社の権限が残ったりすることです。

乗り換えでは「資料を渡す」だけでは足りません。ATS、求人媒体、応募者データ、進行中の選考、職種別KPI、採用サイト、運用ルールを棚卸しし、新会社が実際に業務を継続できる状態まで確認したうえで、最後に旧会社の権限を外します。

この記事では、人事・採用責任者が採用活動をできるだけ止めずに支援会社を切り替えるための実務手順を整理します。

採用支援会社の乗り換えで重要なのは「データ」より「運用を再開できる状態」の引き継ぎ

採用支援会社の引き継ぎ完了は、「ファイルを受け取った日」ではなく、新しい担当者が現在の選考状況を理解し、必要なシステムへアクセスし、次の候補者対応を実行できる状態になった時点と考えるのが実務的です。

特に確認すべきなのは、次の7領域です。

引き継ぐ領域主な確認内容引き継ぎ漏れで起こりやすいこと
ATS管理者、ユーザー、権限、選考ステータス、評価、API連携候補者履歴を閲覧・更新できない
求人媒体契約主体、管理者、求人、応募通知、スカウト履歴求人更新や応募対応が止まる
応募者データ基本情報、履歴書、応募経路、同意・利用目的情報の所在が分からなくなる
選考中候補者現在地、次回予定、担当者、未回答事項候補者への二重連絡・連絡漏れ
KPI職種別・媒体別の応募数、通過率、返信率等切替前後の成果を比較できない
採用サイト・求人原稿、画像、更新履歴、未反映事項古い条件で募集を続ける
運用履歴判断基準、テンプレート、例外対応、未対応事項新会社が同じ確認をやり直す

候補者データには個人情報が含まれます。個人情報保護委員会は、個人データの取扱いを委託する企業に対して、委託先で安全管理が行われるよう必要かつ適切な監督を求めています。支援会社を変更する場合も、「旧会社から新会社へ全部渡す」ではなく、誰が、どのデータを、何のために扱うのかを整理する必要があります。

最初に「切替日」と「旧会社・新会社を並行させる期間」を決める

最初に決めるべきなのは、データ形式ではなく日程です。

旧会社の契約終了日だけを決めてしまうと、その翌日から新会社がATSや求人媒体を操作できないという状態が起こり得ます。

基本的には次の3期間に分けます。

期間主担当実施すること
移行準備旧会社+自社データ・権限・進行案件の棚卸し
並行運用旧会社+新会社+自社実際の候補者対応、ATS操作、求人更新を確認
完全移行新会社+自社新会社で運用、新旧権限を再点検
採用支援会社の変更を移行準備、並行運用、完全移行の3段階で進める流れ

旧会社の契約終了日だけで切り替えず、並行運用でATS操作や候補者対応を確認してから完全移行します。

特に、面接予定や内定回答期限がある候補者は、システム移行の都合で待ってもらう前提にしないことが重要です。

2025年に公表された採用候補者を対象とする研究では、2つの研究で264人と259人を対象にコミュニケーションのタイミングなどを検証し、適時の連絡が満足度、公平感、再応募意向、他者への推薦意向に関連する結果が示されています。

そのため、採用支援会社の切り替えでは、システム移行と候補者対応を別々に管理します。

STEP1|現在使っているシステム・アカウント・データを棚卸しする

最初の実作業は、旧支援会社へ「引き継ぎ資料をください」と依頼することではありません。

自社側で、採用活動に使っている資産を一覧にします。

ATSは管理者・利用者・外部連携まで確認する

ATSでは次の項目を確認します。

  • 契約名義
  • 管理者アカウント
  • 登録ユーザー
  • ユーザーごとの権限
  • 職種・求人
  • 応募者データ
  • 選考ステータス
  • 面接評価
  • メール・メッセージ履歴
  • 外部サービス連携
  • APIキー
  • CSV等で出力可能なデータ

ATSでは、単に「ログインできるか」ではなく、誰が何を閲覧・変更できるかが重要です。

例えばHRMOS採用では、ユーザーアカウントごとに閲覧範囲を制限でき、管理者、採用担当者、採用コーディネーター、面接官など役割に応じた権限設定が用意されています。HERP Hireでも管理者、リクルーター、アシスタント、ゲストなどの権限があります。

そのため、旧会社の共通アカウントを新会社へそのまま渡すのではなく、新会社用のユーザーを追加し、必要な範囲だけ権限を付与する方法を基本にします。

APIキーや外部連携はアカウントとは別に点検する

ATSへのアクセス経路をユーザー、APIキー、外部連携、Webhook、連携メールに分けて確認する図

ATSのユーザー権限だけでなく、APIキーや外部連携など別経路のアクセスも個別に確認します。

見落としやすいのがAPIキーや外部ツールとの連携です。

例えばHERP Hireの公式情報では、発行済みAPIキーについて、発行ユーザーの権限を後からゲストへ変更してもAPIキー自体は無効にならない仕様が案内されています。

つまり、担当者のユーザー権限だけを外して「削除完了」と考えるのは危険です。

利用中のATSについて、

「ユーザー」 「APIキー」 「外部連携」 「Webhook」 「連携用メールアドレス」

を分けて確認してください。

STEP2|求人媒体の権限を「会社主体」に戻す

求人媒体は、支援会社担当者の個人アカウントだけで運用しない状態を作ります。

確認するのは次の4点です。

  1. 誰がアカウント所有者・管理者か
  2. 自社社員の管理者が最低1名いるか
  3. 旧支援会社にどの権限が付与されているか
  4. 新支援会社へどの権限が必要か

Indeedでは、採用企業アカウントのユーザーを追加・削除するために管理者権限が必要で、ユーザーごとにアクセスレベルを設定できます。また、1つのメールアドレスとパスワードを共有するのではなく、各メンバーを個別ユーザーとして追加することを推奨しています。

Indeedの利用規約でも、企業を代表して作成した採用企業アカウントは採用企業に帰属し、管理者からユーザーを招待して異なる役割を付与する仕組みが示されています。

媒体ごとに仕様は異なるため、実際の切り替え前には各サービスの最新ヘルプを確認してください。

STEP3|応募者データは「全件CSV」ではなく選考状態とセットで引き継ぐ

応募者一覧だけを引き継いでも、新しい支援会社は次に何をすればよいか判断できません。

応募者データには最低でも次の情報をひも付けます。

項目引き継ぐ内容
候補者氏名・応募経路・応募職種
現在地応募、書類、面接、最終、内定など
最終接触最後に連絡した日時・内容
次の行動誰が・何を・いつまでに行うか
保留事項現場確認、評価待ち、日程回答待ち等
担当自社担当、支援会社担当
注意事項本人への説明済み事項、日程制約等

厚生労働省の指針では、職業紹介事業者、求人者、募集を行う者などに対し、個人情報を目的に応じて必要な範囲で正確かつ最新に保つこと、不正なアクセスを防ぐこと、保管の必要がなくなった情報を削除・破棄するための措置などが示されています。

したがって、過去の応募者データを理由なくすべて新会社へ渡すのではなく、利用目的、必要性、契約、社内の保存ルールを確認して移行対象を決めます。

STEP4|選考中の候補者だけは別の「進行案件表」を作る

乗り換え時に最優先するのは、現在選考中の候補者です。

特に次の候補者を先に抽出します。

  • 面接日時が確定している
  • 日程調整中
  • 合否連絡待ち
  • 最終面接後
  • 条件提示中
  • 内定回答待ち
  • 長期間連絡が止まっている

進行案件表では「ステータス」だけでなく「次に誰が動くか」を記載します。

選考中候補者について現在地、最終接触、次の行動、期限、担当者まで引き継ぐ流れ

候補者の選考ステータスだけでなく、次に誰が何をいつ行うかまで引き継ぐと、会社変更後も対応を継続できます。

例えば、

「一次面接済み」

だけでは不十分です。

「一次面接済み。現場評価待ち。9月11日12時までに人事が評価回収、通過なら新支援会社が同日中に二次面接候補日を送信」

まで決めておけば、切り替え日に担当者が変わっても動けます。

STEP5|職種別KPIと「これまで試したこと」を引き継ぐ

新しい支援会社がゼロから分析をやり直さなくてよいように、採用成果も引き継ぎます。

最低限、職種別・期間別に次を整理します。

  • 求人数
  • 応募数
  • 応募経路
  • スカウト送信数
  • スカウト返信数・返信率
  • 書類通過数・通過率
  • 面接設定数
  • 面接実施数
  • 内定数
  • 内定承諾数
  • 辞退理由
  • 採用単価を管理している場合はその定義

ただし、数字だけでは不十分です。

「求人タイトルを変更した」 「スカウト対象を変更した」 「媒体Aへの掲載を停止した」 「面接回数を3回から2回へ変更した」

など、数値が変化した時期に何を変更したのかも残します。

これにより、新会社が過去に失敗した施策を繰り返すことを防ぎやすくなります。

新しい支援会社へ依頼する範囲を決め直す場合は、採用改善支援を外注するための要件定義で職種別KPI・採用サイト・口コミ・選考データ・役割分担を整理できます。

STEP6|新支援会社へ権限を付与し、実際の運用テストをする

新会社への引き継ぎは、説明会だけで完了としないことが重要です。

完全移行前に、実際の業務を1回ずつ試します。

テスト項目完了条件
ATS対象候補者を検索し、必要情報を確認できる
求人媒体求人内容と応募者を確認できる
候補者対応過去履歴を確認して次の連絡ができる
面接調整面接官・候補者双方の予定を確認できる
KPI前月実績を同じ定義で再集計できる
求人更新承認から公開までの流れを実行できる
例外処理判断できない場合の社内確認先が分かる

新会社側が「聞いた」状態ではなく、「自分で処理できた」状態まで確認するのがポイントです。

採用支援会社の引き継ぎを資料共有、実運用テスト、完全移行、旧権限削除の順で完了させる図

引き継ぎは説明や資料共有だけで終えず、新会社が実際の業務を処理できることを確認してから旧会社の権限を外します。

STEP7|完全移行後に旧支援会社の権限とデータを削除する

最後に旧支援会社のアクセスを終了します。

削除対象はATSのユーザーだけではありません。

確認対象には次が含まれます。

  • ATSユーザー
  • 求人媒体ユーザー
  • 採用サイトCMS
  • Google Drive等の共有フォルダ
  • Slack・Teams等
  • 採用専用メール
  • カレンダー
  • APIキー
  • 外部サービス連携
  • スプレッドシート
  • ダウンロード済み候補者データ
  • 支援会社側の管理ツール

個人情報保護委員会は、個人データの取扱いを委託する場合、委託元が委託先での取扱状況を把握し、リスクに応じた監督を行う必要があるとしています。

契約終了時には、旧会社側に残っている候補者データの保存場所、削除対象、削除時期についても契約と社内ルールに照らして確認します。

採用支援会社の切り替えでは「候補者から見て担当会社が変わったと感じさせない」ことも重要

企業側では「RPO会社AからBへ変更した」という大きな出来事でも、候補者が知りたいのは、自分の選考がどう進むかです。

担当会社が変わったことで、

「以前聞いた話と違う」 「同じ質問をもう一度された」 「面接予定が共有されていない」 「連絡が数日止まった」

という状態になると、候補者から見た採用体験は分断されます。

RPOそのものと候補者反応を調べた研究でも、外部委託のあり方が応募者の反応や応募先への印象に影響し得ることが示されています。ただし海外研究であり、日本企業へそのまま当てはめることはできません。

また、563人を対象とした研究では、採用プロセスの迅速性への不満が、企業への魅力評価に関係することが報告されています。

そのため、移行時にはシステムの完全性だけでなく、候補者への連絡が継続できているかも確認してください。

採用支援会社の乗り換えチェックリスト

完全移行前に、次の項目を確認します。

  • 自社社員がATSの管理者権限を持っている
  • 自社社員が主要求人媒体の管理者権限を持っている
  • 旧会社だけが知っているパスワードやアカウントがない
  • ATSのユーザー・API・外部連携を一覧化した
  • 選考中候補者を別一覧にした
  • 候補者ごとの次回対応者と期限が決まっている
  • 求人・スカウト文面の最新版が分かる
  • 職種別・媒体別KPIを引き継いだ
  • 過去に実施した施策と結果を引き継いだ
  • 未対応事項を一覧化した
  • 新会社がATSを実際に操作できた
  • 新会社が候補者対応履歴を確認できた
  • 例外時の社内判断者が決まっている
  • 完全移行日が決まっている
  • 旧会社のユーザー削除日が決まっている
  • APIキー・共有フォルダ・メール等も削除対象に含めた
  • 旧会社側に残る応募者データの扱いを確認した

採用支援会社の変更時に自社で決めることと、支援会社へ任せられること

乗り換え作業をすべて新しい支援会社へ任せるのではなく、自社が責任を持つ範囲を明確にします。

自社側で最終判断すべきなのは、採用要件、合否、候補者への条件提示、個人情報の取扱方針、各システムの管理者、支援会社へ付与する権限などです。

新しい支援会社には、データ棚卸し、運用手順整理、進行案件確認、ATS設定、求人媒体設定、候補者対応、レポート移管などの実務を依頼できます。

なお、支援内容が単なる採用業務の代行を超え、求人・求職の申込みを受けて雇用関係の成立を「あっせん」する形になる場合は、職業紹介に該当する可能性があります。厚生労働省は職業紹介と募集情報等提供の区分を示しており、実際のサービス内容によって判断するとしています。

契約範囲に判断が必要な場合は、自社の法務担当者や専門家、必要に応じて所管機関へ確認してください。

切り替え後の内製・外注の役割分担を見直す場合は、採用改善の体制構築と内製・外注の判断基準も確認してください。

まとめ

採用支援会社の乗り換えでは、旧会社から資料を受け取ることがゴールではありません。

重要なのは、

ATS・求人媒体の権限が新会社へ適切に付与され、選考中候補者の次の対応が明確になり、新会社が実際に運用できることを確認した後で、旧会社のアクセスと不要なデータを整理することです。

特に優先する順番は、「選考中候補者」「ATS・媒体権限」「応募者データ」「対応履歴」「KPI」「旧権限削除」です。

採用戦略や採用要件をゼロから作り直す必要はありません。まず現在動いている採用活動を止めないことを優先し、そのうえで新しい支援会社と改善を進めます。

複数のATS・求人媒体・外部担当者が入り組み、自社だけで権限やデータの所在を整理することが難しい場合は、移行対象と現在の運用状況を整理したうえで、採用支援会社への相談を検討すると進めやすくなります。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

・個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) 発表元:個人情報保護委員会 使用内容:委託先への必要かつ適切な監督 URL:個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」

・「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A 発表元:個人情報保護委員会 使用内容:委託先における個人データ取扱状況の把握 URL:個人情報保護委員会 Q&A

・職業紹介事業者、求人者、募集受託者等が適切に対処するための指針 発表元:厚生労働省 最終改正:2024年10月11日告示(2025年4月1日適用) 使用内容:求職者等の個人情報の管理、アクセス防止、削除 URL:厚生労働省 指針

・募集情報等提供と職業紹介の区分 発表元:厚生労働省 使用内容:職業紹介の定義と許可・届出の考え方 URL:厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分」

・ユーザーの追加とアクセスレベルの設定 発表元:Indeed 確認日:2026年9月10日 使用内容:求人媒体におけるユーザー追加・削除・アクセス管理 URL:Indeed 採用企業ヘルプ

・HRMOS採用 発表元:株式会社ビズリーチ 確認日:2026年9月10日 使用内容:ATSのユーザー別閲覧権限 URL:HRMOS採用

・HERP Hire API 発表元:株式会社HERP 確認日:2026年9月10日 使用内容:APIキーとユーザー権限の管理 URL:HERP Hire APIヘルプ

・Candidates’ reactions to job application rejections at different phases of the recruitment process 著者:Massimiliano Barattucciほか 発表年:2025年 掲載誌:Journal of Management & Organization 対象:中間職位の候補者を対象とした2研究、264人・259人 使用目的:候補者連絡のタイミングと採用体験の関係 DOI:10.1017/jmo.2025.11 URL:Cambridge University Press 論文ページ

・Timeliness is Key to the Candidate Experience 著者:Ann Marie Ryanほか 発表年:2017年 掲載誌:Personnel Assessment and Decisions 対象:563人 使用目的:採用プロセスの迅速性と候補者体験 DOI:10.25035/pad.2017.004 URL:論文ページ

・Recruitment Process Outsourcing and Applicant Reactions: When Does Image Make a Difference? 著者:Marius Claus Wehner、Angelo Giardini、Rüdiger Kabst 発表年:2015年 掲載誌:Human Resource Management 使用目的:RPOと応募者反応に関する補助的考察 DOI:10.1002/hrm.21640 URL:Wiley 論文ページ

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