[独自調査] Report ID: SBR-2026-012
公開日:2026年9月11日 著者:菊地 将
要旨
本記事では、外部の入力者・運用者調査に加え、約4.8万社分のWeb観測データを持つ独自企業データベースを使い、実際に「資料請求」という入り口を運用している企業がどれだけあり、離脱を防ぐための代替導線をどこまで用意できているかを実測しました。「何項目を超えると急激に離脱率が上がる」という明確な閾値までは特定できませんでした。Coneの調査(214名)はアンケートの自己申告に基づき、実際のフォーム行動ログではありません。
調査概要
- 対象:企業サイトのCTA文言
- 期間:2026年9月4日時点
- 方法:Web観測データ(独自企業データベース)によるCTA文言調査
- サンプル:47,967社(Web観測成功)
資料請求フォームを最後まで入力してもらえず、見込み客を取りこぼしていないでしょうか。フォームの入力項目数・必須項目・個人情報の入力は、完了率に大きく影響することが各種調査でわかっています。本記事では、外部の入力者・運用者調査に加え、約4.8万社分のWeb観測データを持つ独自企業データベースを使い、実際に「資料請求」という入り口を運用している企業がどれだけあり、離脱を防ぐための代替導線をどこまで用意できているかを実測しました。
資料請求フォームを記事からリード獲得までの導線全体で捉える考え方は、オウンドメディアの集客導線とフォーム最適化の基本で整理しています。
独自データベースで判明:「資料請求」の入り口を持つ企業はわずか4.6%
自社の独自企業データベース(2026年9月4日時点の観測データ、Web観測に成功した47,967社が対象)で、各社のサイト上のCTA(行動喚起ボタン)文言を調べたところ、「資料請求」という文言を含むCTAを持つ企業は2,216社(4.6%)【弊社調査】にとどまりました。残りの多くは「お問い合わせ」という一般的な文言のみで、資料請求という具体的な入り口自体を用意していないことがわかります。
さらに、資料請求という入り口を持つ2,216社のうち、実に78.8%(1,747社)【弊社調査】が「資料請求」のみを導線として提示しており、「無料相談」「デモ依頼」「お試し」「電話」といった、より入力負担の軽い代替導線を併設していないという実態です。代替導線を併設している企業は21.2%(469社)【弊社調査】にとどまりました。
つまり、資料請求という入り口を持つ企業の約8割は、見込み客に「資料請求フォームに全項目を入力する」か「離脱する」かの二択しか用意していないということになります。

表1:業種別「資料請求」CTA保有率(観測成功企業300社以上の業種のみ抜粋)【弊社調査】
| 業種 | 観測成功企業数 | 資料請求CTA保有企業数 | 保有率 |
|---|---|---|---|
| HR・経理 | 492社 | 67社 | 13.6% |
| 教育 | 388社 | 42社 | 10.8% |
| IT・DX・マーケ | 820社 | 81社 | 9.9% |
| 総合工事業 | 1,581社 | 131社 | 8.3% |
| 情報通信 | 980社 | 64社 | 6.5% |
| 製造業 | 3,762社 | 140社 | 3.7% |
| ソフトウエア | 483社 | 11社 | 2.3% |
| 不動産仲介 | 702社 | 10社 | 1.4% |
| 物流/倉庫/運送 | 487社 | 1社 | 0.2% |
HR・経理、教育、IT・DX・マーケ、情報通信など、法人向けサービス色の強い業種で資料請求CTAの保有率が相対的に高く、物流や不動産仲介など現場・実店舗型の業種では極めて低いという、業種特性に沿った傾向が確認できました。
11〜50人規模をピークに、大企業ほど「資料請求」を使わなくなる
企業規模別に見ると、直感に反する結果が出ました。
表2:企業規模別「資料請求」CTA保有率【弊社調査】
| 従業員規模 | 観測成功企業数 | 資料請求CTA保有率 |
|---|---|---|
| 1〜10人 | 13,321社 | 5.8% |
| 11〜50人 | 542社 | 8.9% |
| 51〜200人 | 700社 | 5.6% |
| 201〜1,000人 | 534社 | 4.1% |
| 1,000人以上 | 207社 | 1.4% |
11〜50人規模が8.9%で最も高く、企業規模が大きくなるにつれて資料請求CTAの保有率は下がり、1,000人以上では1.4%まで低下します【弊社調査】。大企業ほど「お問い合わせ」に導線を一本化し、営業担当者への直接連絡を優先する傾向があるか、あるいは資料請求という言葉を使わずに別の表現(「ご相談」「お見積り」等)で同様の機能を提供している可能性が考えられます。
外部調査が示す「離脱の理由」と、企業側の対応実態の食い違い
ここまでの独自データベース分析を踏まえ、実際にフォームを入力する見込み客側・運用する企業側それぞれの声を見てみます。
調査結果を実際のフォーム改善へ落とし込む場合は、必須・任意項目、エラー表示、完了後導線まで含む問い合わせフォームの設計手順も確認してください。
株式会社Cone(BtoBサイト制作サービス「formmate」運営)が2025年11月3日〜5日に実施した調査(調査対象は214名。回答の分析群としてフォーム入力経験者130名と運用担当者79名を記載)によると、フォーム入力経験者の76.9%【外部一次情報】が入力途中で離脱した経験があり、その理由は「入力項目が多すぎた」62.9%、「必須項目が多かった」50.8%、「個人情報の入力に抵抗があった」46.8%【外部一次情報】の順でした。
一方、運用担当者側は「会社名(正式名称)」58.2%、「メールアドレス」49.4%、「氏名(フルネーム)」39.2%【外部一次情報】を「削れない」項目と位置づけ、年間予算・購買権限といった踏み込んだ質問はCVRへの悪影響を懸念してすでに必須化を避けているとされています。つまり運用者は「量(項目数全体)を減らさず、深さ(踏み込んだ質問)を抑える」という工夫をしていると回答しています。

ところが、独自データベースの実測【弊社調査】では、その「深さを抑える」工夫の一歩先にある「入り口自体を複線化する」(資料請求とは別に、より軽い相談窓口を用意する)という対応まで実践できている企業は、資料請求CTA保有企業のうちわずか21.2%【弊社調査】にとどまっていました。運用者の「意識」(深さを抑える、外部一次情報)と、実際のサイト設計(入り口を複線化する、弊社調査)の間には、まだ埋まっていないギャップがある可能性があります。
項目数を1つ減らすと通過率は約2ポイント向上する
「具体的に何項目からフォームは離脱されやすくなるのか」という問いについては、株式会社WACULの「WACULテクノロジー&マーケティングラボ」がBtoBサイトのフォームを対象に行った調査(2019年6月時点で公開)が参考になります。
- 調査対象フォームの通過率:平均20.37%、最大34.40%【外部一次情報】
- 入力項目を1項目減らすごとに、通過率は約2ポイント向上する【外部一次情報】
- 送信ボタンの文言が入力内容と一致している場合の通過率は約21.7%、一致していない場合は約16.6%(約1.3倍の差)【外部一次情報】

「何項目を超えると急激に離脱率が上がる」という明確な閾値までは特定できませんでした。ただし「1項目減らすごとに約2ポイント」という関係から逆算すると、仮に10項目のフォームを5項目まで減らせれば、単純計算で約10ポイント程度の通過率改善が見込める計算になります【弊社算出】(実際の効果はフォーム内容や項目の組み合わせによって変動するため、あくまで目安です)。
見込み客が入力をためらう項目と、運用者が「削れない」と考える項目のギャップ
Coneの調査では、入力者が「入力をためらう項目」も明らかになっています【外部一次情報】。
- 社内資料のアップロード:40.0%
- 会社名(正式名称):39.2%
- 年間予算・導入予算:38.5%
- 電話番号:37.7%

表3:入力者の負担感と運用者の必要度のギャップ【外部一次情報】
| 項目 | 入力者がためらう割合 | 運用者側の扱い(数値は「削れない」とする割合) |
|---|---|---|
| 会社名(正式名称) | 39.2% | 58.2% |
| 電話番号 | 37.7% | 「できれば欲しい」項目として言及 |
| 年間予算・導入予算 | 38.5% | 「深い質問項目」として必須化を避ける傾向 |
会社名(正式名称)は、運用者の58.2%が「削れない」と考える一方、入力者の39.2%がためらう項目でもあり、双方の認識に開きがある代表例です。
入力時間について:定量データは限定的
タイトルにある「入力時間」については、入力項目数・必須項目・個人情報項目ほど明確な定量データを外部情報から見つけることができませんでした。独自データベースにも、フォームの入力項目構造や入力時間を記録するフィールドは存在しません(企業ごとにCTAのテキスト・リンクは観測していますが、フォーム自体の項目数や入力所要時間は収集対象外です)。
一般的には項目数が多いほど入力時間は長くなると考えられますが、これは項目数調査から推測される関係であり、入力時間そのものを対象にした実測データではありません。自社のフォームで実際の入力時間を把握したい場合は、EFO(入力フォーム最適化)ツールの分析機能を使って項目別の入力時間を計測することが、現時点でもっとも確実な方法です。
例外・注意点
- 独自データベースの「資料請求CTA保有率」は、CTAボタンの文言に「資料請求」という文字列が含まれるかどうかで判定しています。「カタログ請求」「資料ダウンロード」など、意味は同じでも異なる表現を使っている企業は集計に含まれていません。そのため、実際に資料請求に相当する導線を持つ企業の割合は、本記事の数値よりやや高い可能性があります。
- 「代替導線の併設率」(21.2%)は、CTA文言に「相談」「デモ」「お試し」「無料体験」「見積」「電話」のいずれかが含まれるかで判定した代理指標です。実際にその導線がどれだけ入力負担を軽減しているかまでは確認していません。
- Coneの調査(214名)はアンケートの自己申告に基づき、実際のフォーム行動ログではありません。
- WACULの調査データは2019年6月時点のものであり、現在の入力環境とは異なる可能性があります。
企業(マーケティング・Web担当者)にとっての意味
自社が「資料請求」という高摩擦の入り口しか用意していない場合、見込み客の約4割が抵抗を感じる項目(会社名の正式名称、電話番号など)【外部一次情報】がそのまま離脱のハードルになっている可能性があります。独自データベースの実測【弊社調査】が示す通り、資料請求とあわせて「無料相談」「デモ依頼」など、より軽い入り口を併設している企業は資料請求CTA保有企業の2割程度にとどまっており、ここに対応余地がある企業が多数派です。
自社で確認すべきこと
- 自社サイトの資料請求CTAとは別に、より入力項目の少ない相談・デモ申込等の導線を用意しているか
- 資料請求フォームの入力項目数が何項目あるか、任意項目も含めて数えているか
- 必須項目のうち、「なくても営業活動が成立する項目」が含まれていないか
- 会社名・電話番号など、入力者がためらいやすい項目について、入力例や補足説明を添えているか
まとめ
独自企業データベースの実測【弊社調査】では、「資料請求」という具体的な入り口を用意している企業は観測対象の4.6%にとどまり、そのうち78.8%は資料請求以外の軽い代替導線を持たない「一本足打法」でした。外部調査【外部一次情報】では、フォーム入力経験者の76.9%が入力途中で離脱した経験があり、最大の理由は項目数の多さ(62.9%)です。運用者は「深さを抑える」工夫をしていると回答していますが、「入り口を複線化する」対応まで実践できている企業はまだ少数派であり、ここに改善余地があります。
参考文献・出典
この記事で参照した情報を確認できます。
- 自社独自企業データベース(観測時点:2026年9月4日)
- 株式会社Cone「BtoBにおけるフォーム入力者の76.9%が途中で離脱する原因は、運営者の『削れない項目』にあった」(2025年11月3日〜5日、214名対象インターネット調査)
- ferretソリューション「フォームの入力項目数やフォームの文言で通過率はどれだけ変わる?【WACUL調査】」(WACULテクノロジー&マーケティングラボ調査、2019年6月25日更新)
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