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エンジニア採用戦略の立て方|ペルソナ・広報・選考・採用CXを設計

部署:人事・採用担当者部署:経営者・責任者レベル:実践
採用担当者と開発責任者が、付箋を順に並べた紙を見ながら打ち合わせをしている様子

「求人を出しても応募が来ない」「会えても、内定を辞退される」。エンジニア採用でこうした状態が続くと、媒体やスカウトの数を増やしたくなります。ただ、原因が求人票にあるのか、発信の中身にあるのか、選考の進め方にあるのかで、打つ手は変わります。 結論から言うと、エンジニア採用の戦略は、誰を採るか(ペルソナ)、その人にどう知ってもらうか(採用広報)、どんな選考にするか(選考設計)、どの数字で見直すかを、この順に決めることです。この記事では、4つの判断を設計する手順を、解説メディア、公的機関、研究の資料をもとに整理します。 あわせて、採用CX(候補者が求人票や発信に触れる場面から入社までに受ける一連の体験)を、応募前の接点も含めて考えます。採用人数や予算、スケジュールを決める採用計画は、この記事では扱いません。

エンジニア採用戦略とは:4つの判断を順に決めること

エンジニア採用戦略の4つの判断を左から右に並べた図。誰を採るか、どう知ってもらうか、どう選ぶか、どう見直すかの順で、見直しの結果は次の設計に戻る

4つの判断の順序は、この記事の整理です。

採用サービス会社が運営する採用担当者向けの解説サイトは、エンジニア採用戦略の柱を、ペルソナ設計、広報戦術、候補者体験を重視した選考プロセス、PDCAサイクル(数字を確認して施策を見直す仕組み)の構築の4つに分けています。採用ターゲットや訴求の設計相談を案内する採用ブランディングを扱う解説記事は、出発点を「誰に、どのような理由で選ばれる会社を目指すのか」を明確にすることだと述べています。

この記事では、次の4つの判断を、この順に設計します。採用人数や予算、スケジュールの決め方は、採用計画の立て方で整理しています。

  • 誰を採るか:採用ペルソナと募集条件
  • どう知ってもらうか:採用広報と技術広報
  • どう選ぶか:選考の設計と採用CX
  • どう見直すか:数字の見方と、見直す順序

なお、2つの記事には自社サービスの案内が含まれ、記事内の数値は一次資料を確認できませんでした。この記事では、手順の考え方として参考にします。統計の数値は公的機関と研究の資料から使い、選考期間などの数字は、媒体が示す推奨として紹介します。

戦略の前に:うまくいかない場所を4つに分けて見る

戦略を立てる前に、いま詰まっている場所を確認します。応募が少ないのか、応募はあるのに選考が進まないのか、内定が承諾されないのかで、見直す先が違うためです。採用ブランディングを扱う解説記事も、応募や承諾が少ない原因は伝え方だけとは限らず、募集条件や選考対応も確認すべきだとしています。

次の表は、よくある4つの状態と、最初に疑う場所を整理したこの記事の例です。原因は1つに決まるとは限らないため、あくまで確認の入口として使ってください。

起きていること最初に疑う場所見直しの例
応募が少ない募集条件の書き方、届いている相手、発信の中身必須条件と歓迎条件を分ける。仕事の中身を具体的に書く
応募はあるが、書類で通らない求人票の要件が曖昧で、応募者との認識がずれている求める能力を具体的な言葉に直す
選考の途中で辞退される連絡の間隔、選考の日数、面接で得られる情報選考の期間を決め、各回の目的を伝える
内定を出しても承諾されない伝えた魅力と実態の差、条件の説明現場の事実を面談で具体的に説明する

採用担当者向けの解説サイトも、応募は多いのに書類通過率が低い場合は、求人票の要件定義が曖昧な可能性があると指摘しています。数値で状態を見分ける方法は、後半の見直しの章で説明します。

ペルソナ設計:必要な仕事の場面から、人物像を作る

採用ペルソナは、採用したい人物像を、スキル・経験・価値観まで具体化したものです。採用担当者向けの解説サイトは、設計の手順を次の3段階で示しています。

  1. 現場へのヒアリング
  2. スキル・経験・価値観の具体化
  3. 具体的な人物像への落とし込み

ここで大切なのは、人物像の前に「現場で何をしてほしいのか」を言葉にしておくことです。たとえば「決済機能の改修を、設計から担当できる人」のように、仕事の場面で書くと、必要な経験が見えます。「バックエンドの経験者」だけでは、応募する側も、面接する側も、同じ人を思い浮かべられません。

条件は、必須条件と歓迎条件に分けます。採用担当者向けの解説サイトは、要件を能力ベースで置き換え、必須条件と歓迎条件を分けることを勧めています。すべてを必須にすると、条件を満たす人が減り、応募の入口が狭くなります。歓迎条件は、満たしていなくても応募や選考の対象になる条件を置く場所です。評価に使う条件は、選考のどの場面で確認するかを事前に決めておきます。

ペルソナは、現場の担当者と採用担当者が同じ文章を見て確認できる状態にしておきます。完成後は、そのまま求人票と広報の素材の元になります。ペルソナの項目例や新卒・中途別のテンプレートは、採用ペルソナの作り方で扱っています。

採用広報:技術と働き方を、現場の事実で伝える

エンジニア向けの発信は、目的で2つに分けて考えます。採用担当者向けの解説サイトは、採用広報を志望度の醸成やミスマッチの防止、技術広報を開発環境や技術力のアピールとして、役割を分けて設計することを勧めています。

また、同記事は、エンジニアには「より良い仕事があれば転職したい」と考える層が多い傾向があるとして、転職潜在層へのアプローチの重要性にも触れています。発信の切り口は、人、事業、キャリア、企業の想い、技術、環境の6つが挙げられています。応募前に候補者が目にする口コミや評判は、エンジニア採用と口コミサイトの関係で扱っています。

発信の中身で気をつけたいのは、抽象的な表現を現場の事実に置き換えることです。採用ブランディングを扱う解説記事は、「裁量がある」「成長できる」だけでは、働く姿を具体的に想像できないと指摘しています。たとえば次のように書き換えます。

  • 変更前:「裁量が大きい環境です」
  • 変更後(架空の例):「入社1年目から、担当する機能の技術選定を提案できます。たとえば、検索機能の作り直し方針は、担当者の提案をもとにチームで決めます」

同じ記事は、技術課題を伝えるときは「解決してほしい課題」と「解決に取り組める環境」をセットで示すよう勧めています。課題だけを書くと、負担の大きい職場に見えることがあります。環境だけを書くと、何をする仕事なのかが分かりません。さらに、制度は名前だけでなく、実際にどう運用されているかまで伝えるのが望ましいとされています。広報全体の戦略や進め方は、採用広報の戦略と運用体制で整理しています。

選考設計と採用CX:候補者の体験を、選考の設計に入れる

選考は、候補者が会社を見極める場でもあります。ここでは、候補者体験の研究、選考の流れ、公正な選考の3つに分けて整理します。応募前から入社までの体験全体は、採用CX(候補者体験)の設計と改善で扱っています。

研究から見える、候補者が前向きに受け取る実践

初期キャリアのソフトウェアエンジニア22人に半構造化インタビュー(あらかじめ決めた質問をもとに、回答に応じて掘り下げる聞き取り)を行い、470件以上の選考経験を分析した研究があります。この研究はプレプリント(公開時点の論文原稿)で、求人広告の明確さ、建設的なフィードバック、人間味のある対応、選考を双方向のプロセスとして扱うことなど、22の前向きな実践を挙げています。

ただし、この研究は初期キャリアの開発者を対象にしたプレプリントです。経験豊富なエンジニアや日本企業にそのまま当てはまるとは言えません。自社の選考を点検する視点として使います。

選考の流れは、短く、各回の目的を決める

選考の流れの例を左から右に並べた図。カジュアル面談、技術面接、最終面接の順で、各回の目的が書かれ、全体は長くても3週間以内が推奨として示されている

流れと3週間以内は解説記事の内容です。各回の目的は、この記事の整理です。

採用担当者向けの解説サイトは、選考の流れの例として、カジュアル面談、技術面接、最終面接の3段階を示しています。そのうえで、選考は長くても3週間以内に終えることを勧めています。スキルの確認方法には、コーディングテスト、GitHubのポートフォリオ確認、実務課題の提示が挙げられています。

カジュアル面談を選考に含めるかどうかは、企業によって扱いが異なります。選考に含めない場合も、含める場合も、候補者に最初の案内で伝えておきます。評価の対象かどうかが分からないまま話すと、候補者が準備や受け答えの方針を決めにくくなるためです。

各回の目的は、次のように分けておくと、同じ質問の繰り返しを避けられます。

  • カジュアル面談:仕事と環境を伝え、候補者の関心を知る
  • 技術面接:仕事の場面に近い課題で、技術的な考え方を確認する
  • 最終面接:期待する役割と、入社後の働き方をすり合わせる

公正な選考の基準を確認する

厚生労働省は、採用選考の基本的な考え方を2点で示しています。1点目は「『人を人として見る』人間尊重の精神、すなわち、応募者の基本的人権を尊重すること」、2点目は「応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと」です。同じページは、本人に責任のない事項の例として「本籍地や家族の職業」、本来自由であるべき事項の例として「宗教や支持政党」を挙げています。

この基準に照らすと、雑談に見える質問も注意が必要です。応募者の適性・能力と関係のないことは、面談や面接で聞かないと決め、面接官に共有しておきます。

数字で見直す:応募から承諾までを、分母をそろえて見る

分母と対象期間をそろえて率を比べる考え方の図。左はそろえずに比べた状態、右は応募した月の対象者でそろえ、書類通過率と内定承諾率の計算式を示している。各指標の結果が未確定の人は分母に入れず別に数える

計算式の定義は、この記事のものです。

採用担当者向けの解説サイトは、応募数、選考通過率、内定承諾率などを数値で管理し、ボトルネックを特定することを勧め、四半期ごとなど定期的な振り返りを例に挙げています。数値で比べるときは、計算の分母と対象期間をそろえます。

  • 応募数:対象期間と媒体や経路ごとに分けて数える
  • 書類通過率(この記事での定義):書類を通過した人数 ÷ 応募数
  • 内定承諾率(この記事での定義):内定を承諾した人数 ÷ 内定を通知した人数

分母と対象期間が違うまま比べると、改善したかどうかを誤って判断しやすくなります。たとえば、スカウト経由と求人媒体経由では応募者の状態が異なるため、経路ごとに分けて見ます。また、同じ期間に応募した人と、その期間に選考が進んだ人を混ぜないようにします。率を出すときは、集計する時点と対象者(たとえば、ある月に応募した人)を先に決めます。書類通過率では、その時点で書類選考の結果が出ていない人を、内定承諾率では、内定を通知して回答を待っている人を、分母に入れず別に数えます。分母から外した場合は、「結果が確定した人のうち」と書き添えて比べます。

採用ブランディングを扱う解説記事は、確認する指標を、認知、興味、応募、選考、内定・入社後の段階に分けて整理することを勧めています。同じ記事は、少人数の採用では、数字だけでなく候補者の言葉も改善材料にするよう勧めています。1件の辞退理由でも、記録して次の選考に反映します。

数値が下がったときは、発信が原因だと決めつけず、募集条件や選考対応も確認します。応募から承諾までのどこで減っているかの見つけ方は、採用ファネルの歩留まりを診断する方法で整理しています。

進め方の例:最初の1か月でやること

最初の1か月の進め方を示した時間軸。1週目は現場へのヒアリング、2週目はペルソナと条件の整理、3週目は求人票と採用サイトの書き換え、4週目は面接官への選考基準の共有と、応募から内定までの進捗の確認

進め方は、この記事の例です。

人手が限られる会社では、全部を同時に始めるのは難しいため、次の順で進める方法があります。

  1. 1週目:現場の担当者に、直近の採用で何が起きたかを聞き、4つの状態のどれに当たるかを確認する
  2. 2週目:ペルソナと、必須条件・歓迎条件を1枚にまとめる
  3. 3週目:求人票と採用サイトの文章を、現場の事実に書き換える
  4. 4週目:面接官に選考基準を共有し、応募から内定までの進捗を確認する

応募から内定までの進捗は、確認したい状態に合わせて、見る人数を選びます。応募はあるのに書類で通らない場合は、応募数と書類通過数。選考の途中で辞退が出る場合は、各回に進んだ人数と辞退した人数。承諾されない場合は、内定通知数と承諾数です。四半期の振り返りまで続けて、変化を比べます。

まとめ

エンジニア採用は、誰を採るか、どう知ってもらうか、どう選ぶか、どう見直すかの順に決めます。

最初の1か月は、現場へのヒアリングとペルソナの文章化から始めてください。採用改善全体の位置づけは、採用改善の基礎知識で整理しています。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

‹ 親記事: 採用改善とは何か。取り組むべき5つの領域と押さえておきたい基礎知識

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