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心理的安全性とは?高める方法・測定・やってはいけない施策

部署:人事・採用担当者部署:経営者・責任者レベル:実践
会議で一人が発言し、周囲が話を聞いているチームの様子と「言えるチームを、つくる」の文字

会議で反対意見が出ない、ミスの報告が遅い、分からないことを質問しづらい。こうした状態が続くチームでは、「仲が良いか」だけではなく、心理的安全性を確認する必要があります。心理的安全性とは、質問・異論・失敗の共有など、対人関係上のリスクがある発言や行動をしても不利益を受けないとメンバーが信じられる状態です。高めるには、雰囲気づくりだけでなく、管理職の反応、会議の進め方、1on1、フィードバック、測定方法までを一体で見直すことが重要です。この記事では、意味と測り方から、具体的な改善手順、逆効果になりやすい施策まで整理します。

心理的安全性とは「対人リスクを取っても安全だ」と感じられるチームの状態

心理的安全性は、単に「安心して働ける」「人間関係が良い」という意味ではありません。組織行動研究者のエイミー・エドモンドソンは、チームの心理的安全性を、メンバーが「このチームでは対人関係上のリスクを取っても安全だ」と共有している状態として整理しました。

ここでいう対人リスクとは、たとえば次のような行動です。

  • 分からないことを質問する
  • ミスや失敗を早い段階で報告する
  • 上司や多数派と異なる意見を出す
  • 助けを求める
  • 未完成のアイデアを提案する
  • 業務上の懸念や違和感を伝える

1999年の研究では、51のワークチームを対象に、心理的安全性と学習行動の関連が検討されました。結果は、心理的安全性がチームの学習行動と関連し、その学習行動がチームの成果に関わるというモデルを支持するものでした。

また、2017年のメタ分析では、136の独立サンプル、2万2,000人超、約5,000グループをまとめて検討し、心理的安全性の先行要因と成果との関係が整理されています。心理的安全性は、単なる職場の流行語ではなく、チームの発言、学習、協働を考えるために蓄積された研究領域です。

心理的安全性が高い状態は「ぬるま湯組織」とは違う

心理的安全性を高めることは、厳しい指摘をなくすことでも、失敗をすべて許容することでもありません。心理的安全性と、仕事の基準や責任は別の軸で考える必要があります。

エドモンドソンは、心理的安全性と高い成果基準を両立させることを重視しています。心理的安全性だけが高く、仕事の基準が曖昧なら、居心地はよくても改善が進まない状態になり得ます。一方、成果基準だけが高く、発言や失敗共有が危険なら、問題が表面化しにくくなります。

心理的安全性と成果基準を2軸で整理し、4つのチーム状態を示したマトリクス

心理的安全性と成果基準は別の軸です。両方を高めることで、異論や失敗を共有しながら改善できる状態を目指します。

状態 心理的安全性 成果基準・責任 起こりやすいこと
学習しやすい状態 高い 高い 異論・失敗・質問を共有しながら改善する
居心地優先の状態 高い 低い 関係は穏やかでも、課題を詰め切れない
不安が強い状態 低い 高い ミスや懸念を隠し、上司の意向を優先しやすい
無関心な状態 低い 低い 発言も挑戦も減り、改善が止まりやすい

重要なのは、「何を言っても肯定されること」ではありません。異論を出しても人格攻撃や不当な不利益を受けず、事実や仕事の基準に沿って議論できることです。

心理的安全性が低いチームは「沈黙のパターン」から見つける

心理的安全性は目に見えません。そのため、まずは発言や情報共有が止まっている場面を確認します。

たとえば、次の状態が継続している場合は、原因を掘り下げる価値があります。

  • 会議で同じ人しか発言しない
  • 決定後になって個別チャットで反対意見が出る
  • ミスの報告が、問題が大きくなってから上がる
  • 新任者や若手から質問がほとんど出ない
  • 1on1で「特にありません」が続く
  • 上司の案に対して代替案や懸念が出ない
  • 困っている人が、期限直前まで助けを求めない

ただし、これらの行動だけで「心理的安全性が低い」と断定はできません。会議設計、役割分担、業務量、評価制度、知識不足など、別の要因でも同じ現象は起こります。

したがって、実務では「サーベイ」「行動の観察」「対話」の3つを組み合わせて確認するのが扱いやすい方法です。

心理的安全性の測定は、サーベイ・行動・対話の3層で行う

心理的安全性を測る目的は、チームを順位付けすることではありません。どの場面で発言や相談が止まっているかを見つけ、改善前後の変化を確かめることです。

心理的安全性をサーベイ、行動、対話の3つから確認し、発言が止まる場所を特定する図

心理的安全性は、サーベイスコアだけで原因まで判断せず、実際の行動と対話を合わせて確認します。

1. 検証済みの尺度で状態を確認する

心理的安全性には複数の測定尺度があります。日本では、東京大学大学院医学系研究科の研究チームが、O’Donovanらの尺度を日本語化し、一般労働者にも利用できるかを検証しています。

公開されている日本語版は19項目で、リーダーに関する9項目、同僚・チームメンバーに関する7項目、チーム全体に関する3項目から構成され、7件法で評価します。2022年の検証研究では、日本の医療従事者200人と非医療従事者200人を対象に分析し、信頼性・妥当性が検討されました。

なお、東京大学の公開ページでは、研究目的での使用は無料、商用目的では研究者への連絡が必要とされています。企業が自社サービスや有償研修などで尺度を利用する場合は、利用条件を確認してください。

2. 発言・質問・相談の行動指標を補助的に見る

サーベイスコアだけでは、「なぜ低いのか」まで分かりません。そこで、次のような行動を補助指標として確認します。

確認する行動 見るポイント 注意点
質問 不明点を早い段階で確認できているか 質問数が多ければ安全とは限らない
懸念の共有 問題が小さいうちに報告されるか 件数だけで良し悪しを判断しない
反対意見 決定前に異論が出るか 反対を義務化しない
助けを求める行動 期限前に支援要請が出るか 業務量や役割設計も確認する
振り返り 失敗理由と次の改善が話されるか 個人追及の場にしない

これらは心理的安全性そのものを直接測る指標ではありません。サーベイ結果と照らし合わせ、「どの行動が止まっているか」を特定するために使います。

3. 1on1や振り返りで「発言した後に何が起きたか」を聞く

心理的安全性を改善するうえで特に重要なのは、発言した瞬間より、その後の反応です。

1on1やチームの振り返りでは、「最近、言いにくかったことはあったか」だけでなく、「意見を出したとき、周囲はどう反応したか」「問題を共有した後、何が変わったか」まで確認します。

発言を歓迎すると宣言していても、実際には反論した人が会議で遮られる、ミスを報告した人だけが強く責められる、相談しても対応が変わらない、といった経験が続けば、次の発言は減っていきます。

質問や異論を出した後の周囲の反応が、次も発言するか黙るかに関わることを示した概念図

「発言を歓迎する」と宣言するだけでは不十分です。実際に発言した後の周囲の反応が、次の発言のしやすさに関わります。

心理的安全性を高める6つの実践

心理的安全性は、研修を一度行うだけでは定着しません。管理職の行動と、日常の会議・1on1・フィードバックの仕組みを変える必要があります。

1. 「歓迎する発言」を具体的な行動にする

「何でも言っていい」では、何を期待されているか分かりません。

たとえば、「問題を見つけたら早めに共有する」「決定前は反対意見も出す」「分からないことを確認する」「困ったら期限前に支援を求める」など、歓迎する行動をチームのルールとして明確にします。

同時に、品質基準や納期、役割責任も明確にします。心理的安全性と仕事の基準を同時に示すことで、単なる馴れ合いとの混同を防げます。

2. リーダーが「自分も間違う」前提で質問する

NembhardとEdmondsonの2006年の研究では、23の新生児集中治療室を対象に、メンバーの貢献を求め、歓迎するリーダーの言動と心理的安全性との関連が検討されました。

実務では、リーダーが結論を出してから「意見ある?」と聞くより、「見落としている点はあるか」「この案が失敗するとしたら何が原因か」「現場から見ると無理がある部分はどこか」と問いを具体化した方が、異論を出す役割を正当化しやすくなります。

3. 会議は発言の勇気ではなく、発言機会を設計する

発言しやすさを個人の積極性だけに任せないことが重要です。

たとえば、会議前に論点を共有してコメントを集める、最初に各自が1分ずつ懸念を出す、役職が高い人ほど最後に意見を言う、決定前に「反対材料」を一度確認する、といった仕組みが考えられます。

Googleのチーム研究でも、心理的安全性は効果的なチームに関わる重要なダイナミクスとして扱われています。ポイントは、特定の性格の人だけが発言できる場にしないことです。

4. 1on1を「評価される場」だけにしない

1on1で本音を求めながら、その場の発言が直後の評価や叱責に直結すると、話しにくさは強まります。

進捗・評価の確認と、困りごと・懸念・支援要請を聞く時間を分けるなど、対話の目的を明確にします。また、聞いた内容に対応できない場合も、「できない理由」「いつ再確認するか」を返すことが重要です。

5. ミスの共有では、責任追及と学習を分ける

心理的安全性は「ミスを問わないこと」ではありません。意図的なルール違反と、通常の業務の中で起きたエラーや判断ミスを同じように扱わないことが重要です。

事実確認では、「誰が悪いか」から始めるのではなく、「何が起きたか」「どの時点で気づけたか」「再発を減らすには何を変えるか」を先に整理します。責任の確認が必要な場合も、学習のための振り返りと人格評価を混ぜないようにします。

6. 測定と改善をチーム単位で繰り返す

心理的安全性は全社平均だけを見ると、課題が隠れます。同じ会社でも、管理職、業務、チーム構成によって体験は変わるためです。

四半期など一定の間隔で同じ方法を使って測定し、スコアの上下だけでなく、「どの場面で発言が止まるか」「前回決めた改善行動が実行されたか」を確認します。少人数チームでは個人が特定されない集計単位にも配慮してください。

やってはいけない施策は「発言させること」だけを目的にすること

心理的安全性を高めようとして、かえって発言を減らす施策もあります。次の5つは避けたい運用です。

やってはいけない施策 なぜ逆効果になりやすいか 代わりに行うこと
発言数をノルマ化する 内容より回数が目的になり、強制感が生まれる 発言機会を均等に設計する
「失敗歓迎」と言いながら公開で責める 宣言と実際の反応が矛盾する 共有後の初動を統一する
サーベイを実施して終わる 回答しても何も変わらない経験が残る 結果と改善行動を共有する
全社平均だけで良否を決める チームごとの差が見えなくなる 匿名性を守れる単位で比較する
心理的安全性を「何でも肯定」にする 成果基準やフィードバックが弱くなる 高い基準と率直な対話を両立する

特に注意したいのは、サーベイの点数を管理職評価へ直結させることです。目的が改善ではなく査定だと受け取られると、回答の率直さを損ねるおそれがあります。測定の目的、閲覧者、集計単位、結果の使い方を事前に説明してください。

心理的安全性とエンゲージメントは関連するが、同じものではない

心理的安全性と従業員エンゲージメントは混同されやすい概念です。

心理的安全性は、「このチームで質問・異論・失敗共有などの対人リスクを取れるか」というチーム環境への認識が中心です。一方、エンゲージメントは、仕事への活力、熱意、没頭など、仕事との関わり方を捉える概念として扱われます。

日本の400人を対象とした2022年の検証研究では、心理的安全性とワークエンゲージメント、職務パフォーマンス、職務満足などとの関連が分析されました。ただし、この分析には横断研究が含まれるため、「心理的安全性を上げれば必ずエンゲージメントが上がる」と因果関係を断定することはできません。

実務では、エンゲージメントが低いから心理的安全性施策を行うのではなく、「発言・相談・失敗共有が止まっているか」という問題を切り分けて扱うことが重要です。

心理的安全性を人材戦略や企業価値までつなげて捉える場合は、人的資本経営の考え方も確認してください。

心理的安全性の改善は「測る→場面を特定する→反応を変える」で進める

心理的安全性を改善するときは、施策を増やす前に、どこで発言が止まっているかを特定します。

心理的安全性を測定し、発言が止まる場面を特定し、周囲の反応を変えて再測定する4段階の改善フロー

心理的安全性は一度の研修で完成するものではありません。測定、場面特定、反応改善、再測定を繰り返します。

おすすめの進め方は次の通りです。

  1. サーベイでチームの状態を把握する
  2. 質問・異論・ミス共有・支援要請のどこが止まっているか確認する
  3. 会議、1on1、日常の報告など具体的な場面を特定する
  4. その場面での管理職・同僚の反応を見直す
  5. 発言を歓迎するルールと成果基準を明確にする
  6. 1〜3か月後に同じ観点で変化を確認する

組織課題を感覚だけで判断せず、現状整理から改善施策の検討まで進めたい場合は、組織・人事施策の検討に使える無料資料も活用できます。

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まとめ

心理的安全性とは、チームのメンバーが質問、異論、失敗の共有、支援要請などの対人リスクを取っても、不当に罰されたり恥をかかされたりしないと信じられる状態です。

改善のポイントは、単に「話しやすい雰囲気」を作ることではありません。成果基準を保ちながら、発言した人への反応、会議での発言機会、1on1、フィードバック、測定後の改善までを整える必要があります。

まずは、サーベイだけで良し悪しを決めず、「どの場面で、誰が、何を言えなくなっているか」を確認してください。そのうえで、管理職の反応とチームの運用を一つずつ変えることが、継続的な改善につながります。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

  1. Amy C. Edmondson, “Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams”, Administrative Science Quarterly, 1999.
    URL: https://journals.sagepub.com/doi/10.2307/2666999
    使用内容:心理的安全性の定義、51チームを対象としたチーム学習との関連。

  2. M. Lance Frazier et al., “Psychological Safety: A Meta-Analytic Review and Extension”, Personnel Psychology, 2017.
    URL: https://doi.org/10.1111/peps.12183
    使用内容:136独立サンプル、2万2,000人超、約5,000グループを対象にした心理的安全性研究のメタ分析。

  3. Amy C. Edmondson, Zhike Lei, “Psychological Safety: The History, Renaissance, and Future of an Interpersonal Construct”, Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior, 2014.
    URL: https://doi.org/10.1146/annurev-orgpsych-031413-091305
    使用内容:心理的安全性研究の定義、研究領域の整理。

  4. Natsu Sasaki et al., “The Survey Measure of Psychological Safety and Its Association with Mental Health and Job Performance: A Validation Study and Cross-Sectional Analysis”, International Journal of Environmental Research and Public Health, 2022.
    URL: https://www.mdpi.com/1660-4601/19/16/9879
    使用内容:日本語版心理的安全性尺度の検証、医療従事者200人・非医療従事者200人の分析、ワークエンゲージメント等との関連。

  5. 東京大学大学院医学系研究科 精神保健学/精神看護学分野「職場の心理的安全性尺度」
    URL: https://mhpn.m.u-tokyo.ac.jp/rs/measure-of-psychological-safety
    使用内容:日本語版19項目尺度の構成、点数化方法、研究目的・商用目的の使用条件。

  6. Ingrid M. Nembhard, Amy C. Edmondson, “Making it safe: the effects of leader inclusiveness and professional status on psychological safety and improvement efforts in health care teams”, Journal of Organizational Behavior, 2006.
    URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/job.413
    使用内容:23の新生児集中治療室を対象とした、リーダーの包摂的行動と心理的安全性の関連。

  7. Google Cloud 公式ブログ「文化による成功: 失敗を受け入れることがなぜより良いソフトウェア デリバリーを促すのか」2023年。
    URL: https://cloud.google.com/blog/ja/products/devops-sre/how-resilience-contributes-to-software-delivery-success?hl=ja
    使用内容:Googleのチーム研究における心理的安全性の位置づけ。

  8. Harvard Business School, “Leading in Tough Times: Amy C. Edmondson on Psychological Safety”.
    URL: https://www.hbs.edu/recruiting/guides-and-stories/leading-in-tough-times
    使用内容:心理的安全性とアカウンタビリティを別軸で捉える考え方。

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