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オウンドメディアの表記ガイドラインの作り方|表記ゆれ・数字・固有名詞・引用ルールを統一

部署:マーケティング担当者部署:経営者・責任者レベル:実践
表記ゆれのある原稿を確認しながら共通の表記基準を整理する編集担当者の手元

複数のライターや編集者でオウンドメディアを運営していると、「できる/出来る」「Web/WEB」「1万円/10,000円」など、同じ内容でも書き方が分かれます。そのたびに編集者が判断していると、校正や差し戻しが増え、担当者によって基準も変わります。

表記ガイドラインで重要なのは、正しい日本語を網羅することではありません。自社メディアでは「どの表記を採用するか」「どんな場合を例外にするか」を、誰でも確認できる基準表にすることです。

この記事では、漢字・ひらがな、数字、単位、記号、固有名詞、略語、敬称、引用・出典を中心に、表記ガイドラインの作り方と更新方法を解説します。

表記ガイドラインは「採用表記と例外」を決める基準表

表記ガイドラインは、文章の正誤をすべて決める辞書ではありません。同じ意味で複数の書き方が成立するときに、自社メディアではどれを使うかを共有するための基準です。

文化庁の「公用文作成の考え方」でも、文章は読み手とのコミュニケーションとして捉え、文書の目的や読み手に応じて表記を工夫する考え方が示されています。公用文のルールをそのままオウンドメディアへ移す必要はありませんが、「読み手に合わせて基準を決める」という考え方は参考になります。

実際に株式会社GIGが公開しているオウンドメディア向けの表記ガイドライン例でも、漢字とひらがな、固有名詞、数字、専門用語、記号、全角・半角、出典など、複数の項目を媒体ごとの基準として整理しています。

基準表は、最低でも次の項目を持たせると運用しやすくなります。

項目 記載する内容
対象語・項目 判断が分かれやすい語や表記
採用表記 原則として使用する書き方
避ける表記 通常は使用しない書き方
例外 別表記を認める条件
使用例 実際の記事での書き方
根拠・理由 読みやすさ、公式表記など判断理由
更新日 最後に基準を変更した日

「採用表記」だけではなく、「例外」を同時に決めることがポイントです。

表記は文脈によって意味が変わるため、単純な一括置換では対応できない場合があります。原則と例外を分けておけば、ライターが迷ったときにも判断しやすくなります。

最初に決める表記ルールは8項目

表記ガイドラインを最初から巨大な辞書にする必要はありません。まずは、記事制作で判断が発生しやすい8項目から決めると運用を始めやすくなります。

項目 決める内容の例
漢字・ひらがな できる/出来る、こと/事、ため/為
数字 1万円/10,000円、漢数字と算用数字
単位 %/%、km/キロメートル
記号 「」、『』、()などの使い分け
固有名詞 会社名、商品名、サービス名の正式表記
略語・英字 AI、SEOなどの初出時の扱い
敬称 氏、さん、様、役職名など
引用・出典 引用範囲、出典名、リンクの書き方

神楽坂編集室が公開する表記統一の解説でも、漢字・ひらがな、外来語、送り仮名、数字、略語、大文字・小文字、全角・半角などが、表記ゆれが起こりやすい項目として挙げられています。

重要なのは、一般的なルールを全部集めることではありません。

自社の記事で実際に迷う項目から登録します。「ルールを増やす」より、「同じ質問を編集者へ何度もしなくてよい状態」を目指した方が、日常業務で使えるガイドラインになります。

表記ガイドラインは5ステップで作る

表記ガイドラインは、既存のルール集をそのままコピーするより、自社の記事で発生している判断を集めて作る方が実用的です。

迷う表記の収集から基準表作成、例外判断、運用更新までを示した5ステップのフロー図

表記ガイドラインは最初から完成版を作るのではなく、実際の記事で発生した判断を基準へ変えながら育てていきます。

1.過去記事から判断が分かれている表記を集める

最初に、公開済みの記事や編集中の原稿を確認します。

例えば、次のような語が記事によって変わっていないかを探します。

  • Web/WEB/ウェブ
  • 問い合わせ/お問合せ/お問い合わせ
  • できる/出来る
  • ユーザー/利用者
  • 1万円/10,000円
  • %/%
  • 株式会社を付ける/付けない
  • ChatGPT/チャットGPT

この段階では、どちらが正しいかを決める必要はありません。

まず「編集者によって判断が割れているもの」を候補として集めます。

2.自社メディアの原則を決める

次に、個別の語を決める前に、媒体全体の原則を置きます。

例えば、

  • 読みやすさを優先して漢字を開く
  • 数字は原則として半角の算用数字を使う
  • 固有名詞は公式サイトの表記を優先する
  • 専門用語は必要に応じて初出時に説明する
  • 引用文の中は原文を勝手に変更しない

といった方針です。

文化庁も、広く一般に向ける解説・広報では、特別な知識を持たない読み手への分かりやすさを優先して表現を工夫する考え方を示しています。

自社の想定読者に合わせて原則を決めておくと、新しい言葉が出てきた場合にも判断しやすくなります。

3.採用表記・避ける表記・例外を表にする

候補を集めたら、1語ずつ基準表へ登録します。

例えば次のような形です。

対象 採用表記 避ける表記 例外
Web Web WEB 正式名称内は公式表記
問い合わせ 問い合わせ 問合せ ボタン名は既存UIに合わせる
できる できる 出来る 固有名称・引用文は変更しない
数字 1、10、100 1、10、100 熟語や慣用表現は個別判断
会社名 公式名称 独自の省略 公式略称がある場合は使用可

ここで重要なのは、「避ける表記=日本語として間違い」としないことです。

あくまで「このメディアでは原則としてこちらを使う」という基準にします。

4.迷ったときの優先順位を決める

すべてのケースを事前に登録することはできません。

そのため、ルール同士がぶつかったときの優先順位も決めておきます。

一例は次の順番です。

  1. 法令・制度・企業・商品などの正式名称
  2. 引用元の原文
  3. 自社メディアの表記ガイドライン
  4. 記事内の文脈
  5. 個別判断
正式名称、引用元、自社ルール、文脈、個別判断の順に表記を確認する優先順位図

自社の表記ルールと正式名称などが衝突した場合は、あらかじめ優先順位を決めておくと担当者ごとの判断差を減らせます。

例えば、自社では「Web」を採用表記にしていても、サービスの正式名称が「WEB○○」であれば、その名称は公式表記を優先します。

ルールを増やすだけではなく、「どのルールを優先するか」まで決めることで例外処理が安定します。

5.実際の記事で使いながら不足項目を追加する

最初から完成版を目指す必要はありません。

実際の記事制作で新しい迷いが発生したら、その判断を基準表へ追加します。

株式会社GIGも、ガイドラインは最初から完全なものを作るのではなく、運用しながら更新していく考え方を紹介しています。

表記ガイドラインを「完成した資料」と考えるより、編集判断を蓄積する共通の基準表として扱う方が運用しやすくなります。

漢字・ひらがなは頻出語から採用表記を決める

漢字とひらがなの使い分けは、すべての単語を登録するのではなく、記事内で頻繁に使い、判断が割れやすい語から決めます。

例えば、

  • できる/出来る
  • こと/事
  • とき/時
  • ため/為
  • さらに/更に
  • すでに/既に
  • ください/下さい

などです。

文化庁の公用文に関する指針は、漢字・仮名、送り仮名、外来語などの表記を考える際の参考資料として利用できます。ただし、オウンドメディアでは読者や文体が異なるため、公用文と完全に同じ基準へ合わせる必要はありません。

迷ったときは、「漢字として正しいか」だけではなく、自社の記事で読みやすいか、同じ語を何度も使ったときに重く見えないかまで確認します。

数字・単位・記号は組み合わせまで決める

数字のルールでは、「半角数字を使う」と決めるだけでは不十分です。

同じ金額でも、

  • 10000円
  • 10,000円
  • 1万円
  • 一万円

という複数の表記ができます。

そのため、数字は次のように項目を分けて決めます。

判断項目 ルール例
数字 原則として半角算用数字
桁区切り 4桁以上は3桁区切り
金額 本文では「1万円」など読みやすさを優先
割合 「10%」など媒体内で統一
年月日 「2026年9月20日」
範囲 「10〜20人」など記号を統一
単位 kg、km、GBなど採用形を決める

どの形式を採用するか以上に、同じ条件で同じ表記になることが重要です。

「本文」「表」「ボタン」「グラフ」など表示場所によって別形式を認める場合は、それも例外として記録します。

固有名詞・略語・敬称は公式表記を起点にする

会社名、商品名、サービス名、人名などの固有名詞は、原則として公式情報で確認した表記を使用します。

企業名であれば、

  • 株式会社を付けるか
  • 前株・後株を正しく記載するか
  • 英字の大文字・小文字
  • スペースの有無
  • 公式略称があるか

まで確認します。

GIGの表記ガイドライン例でも、固有名詞について正式表記を確認することを基本としています。

略語については、読者がそのまま理解できるものと、説明が必要なものを分けます。

例えば「SEO」「AI」のように対象読者が日常的に使う語はそのまま使用し、専門性が高い略語は初出時に正式名称や意味を添える、といったルールです。

Microsoftのスタイルガイドでも、ブランド名・製品名などの固有名詞について、その名称固有の表記を維持する考え方が示されています。

敬称も同様です。

「氏」「さん」「様」「役職名」のどれを使うかを記事ごとに決めるのではなく、取材記事、専門家コメント、顧客事例など用途別に基準を決めます。

引用・出典は表記だけでなく利用条件も確認する

引用ルールでは、「出典:○○」という書き方だけを統一して終わらせないことが重要です。

文化庁は、著作権法上の引用について、公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、引用目的上正当な範囲であることなどを条件として説明しています。また、出典の明記だけで引用の条件を満たすわけではありません。

表記ガイドラインでは、少なくとも次を決めます。

  • 引用部分と自社文章を明確に分ける
  • 引用元を記載する
  • 元ページへリンクする場合の形式を統一する
  • 引用文を任意に書き換えない
  • 長い文章をそのまま転載しない
  • 図表や画像は文章の引用と同じ扱いだと思い込まない

引用できるかどうかは個別の利用方法によって判断が変わるため、「出典を書けば自由に使える」というルールにはしないよう注意します。

例外ルールを決めるとガイドラインが形骸化しにくい

表記ガイドラインを厳密にしすぎると、実務で使いにくくなります。

例えば、自社では「問い合わせ」と表記すると決めていても、Webサイト上の既存ボタンが「お問い合わせ」なら、操作説明で名称を変えるとかえって分かりにくくなります。

同様に、

  • 正式な商品名
  • UI上の名称
  • 引用文
  • インタビューでの話し言葉
  • 法令や制度の名称

などは、通常の採用表記とは別に扱う場合があります。

通常の記事本文では採用表記へ統一し、UIや正式名称、引用では例外として元の表記を維持する考え方を示した図

表記ガイドラインでは採用表記だけを決めるのではなく、正式名称やUI、引用などの例外条件と、その理由もあわせて残します。

例外が発生したときに担当者だけで処理せず、「なぜ例外にしたか」を基準表へ残します。

すると、次に同じケースが出たときに再度議論する必要がなくなります。

表記ガイドラインは正本を1つにして更新履歴を残す

複数人で運用する場合、ガイドラインそのものが複数存在すると、今度は「どのガイドラインが正しいか」という問題が起こります。

1つの表記ガイドラインを正本として判断内容を記録し共有しながら更新する運用サイクル

表記ガイドラインは複数のコピーを作らず、正本を1つにして、新しい判断と変更理由を継続的に追加します。

共有する正本は1つにします。

表記基準を変更するときは、次の情報を残します。

更新項目 記録内容
変更日 いつ変更したか
対象 どの表記を変更したか
変更前 以前の採用表記
変更後 新しい採用表記
理由 なぜ変更したか
適用範囲 新規記事のみ/既存記事も対象など
判断者 誰が確定したか

デジタル庁のウェブコンテンツガイドラインも、文章表現だけでなく、コンテンツの品質確保やライフサイクル管理を扱っています。Webコンテンツのルールは、作成時だけではなく更新・管理まで含めて設計する考え方が重要です。

表記ガイドラインも同様に、「作って配布して終わり」ではなく、編集業務の中で更新される資料として管理します。

表記ルールを各原稿へ漏れなく反映するには、出典やCTA、著者欄などと一緒に記事テンプレートへ組み込むと運用しやすくなります。

公開前に確認する表記ガイドラインのチェックリスト

自社のガイドラインを作成するときは、次を確認してください。

  • 漢字・ひらがなの頻出語が決まっている
  • 数字の全角・半角が決まっている
  • 金額や割合の書き方が決まっている
  • 単位の表記が決まっている
  • 記号の使い方が決まっている
  • 固有名詞の確認方法が決まっている
  • 略語の初出時ルールが決まっている
  • 敬称の使い分けが決まっている
  • 引用・出典のルールが決まっている
  • 採用表記だけでなく例外が記録されている
  • ガイドラインの正本が1つに決まっている
  • 変更履歴を残せる状態になっている
  • 新しい判断を追加する担当者が決まっている

すべての日本語表現を網羅する必要はありません。

実際の記事制作で何度も発生している判断から順番にルール化し、必要な項目を追加していく方が実務で使いやすくなります。

まとめ

オウンドメディアの表記ガイドラインは、正しい日本語を集めた辞書ではなく、複数の執筆者・編集者が同じ基準で判断するための資料です。

まずは、漢字・ひらがな、数字、単位、記号、固有名詞、略語、敬称、引用・出典について、「採用表記」「避ける表記」「例外」「使用例」を決めます。

そのうえで、正式名称や引用などの優先順位を設定し、新しい判断が出るたびに正本へ追加します。

自社用の表記基準をゼロから作る場合は、基準表のひな形やチェックシートをたたき台にし、自社で実際に使う表記へ置き換えていくと整理しやすくなります。実務で使える資料は、資料ダウンロードページから確認できます。

表記ルールを制作フロー全体の中で位置づけたい場合は、コンテンツ制作・運用体制の全体像もあわせて確認してください。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

・「公用文作成の考え方(建議)」文化庁・文化審議会、2022年1月7日。読み手に応じた表記、用語、文章の考え方の確認に使用。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/93657201.html

・「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」文化庁。著作権法上の引用に関する基本条件の確認に使用。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/faq/index.html

・「デジタル社会推進標準ガイドライン」デジタル庁。ウェブコンテンツの文章表現・品質確保・ライフサイクル管理の考え方の確認に使用。
https://www.digital.go.jp/resources/standard_guidelines

・「オウンドメディア表記ガイドラインの作り方」株式会社GIG、2020年10月15日。オウンドメディアでの表記項目・固有名詞・数字・出典等の実務例の確認に使用。
https://giginc.co.jp/blog/giglab/ownedmedia_notation_guideline

・「表記ゆれを防ぐには?表記統一で気を付けたい9つのポイント」第一資料印刷株式会社・神楽坂編集室、2026年4月20日。表記ゆれが起きやすい項目の整理に使用。
https://kagurazaka-editors.jp/unified-notation/

・「Capitalization – Microsoft Style Guide」Microsoft Learn。ブランド名・製品名などの固有名詞の大文字・小文字と表記維持の考え方の確認に使用。
https://learn.microsoft.com/en-us/style-guide/capitalization

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