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法人向けサービスを比較するとき、生成AIに聞かれやすい質問とは?公式サイトの情報開示率から分析

部署:マーケティング担当者部署:経営者・責任者レベル:実践
法人向けサービス1,000社の公式サイト調査で、具体的な実績数値の開示率が2.2%だったことを示すアイキャッチ

[独自調査] Report ID: SBR-2026-013

公開日:2026年9月17日 著者:菊地 将

要旨

本記事では、BtoB購買の実態調査と、独自企業データベースによる1,000社の公式サイト実測を組み合わせ、「公式サイトで情報が手薄な論点ほど、比較検討者の疑問が生まれやすい」という構造を明らかにします。結論から言えば、実績の具体的な数値・比較材料・評判といった「信頼を裏づける情報」は1割前後の企業しか用意しておらず、これが比較検討中の質問を生む土壌になっていると考えられます。今回の1,000社はデモンストレーション目的で抽出したサンプルであり、独自企業データベースに登録された企業全体(約13万社)を代表する値ではありません。

調査概要

  • 対象:企業公式サイト
  • 期間:2026年9月14日
  • 方法:公式サイトおよび関連ページの確認
  • サンプル:1,000社(話題性が高いと判定された企業404社、近い条件の企業475社、無作為抽出121社)

法人向けサービスの比較検討で、見込み客が生成AIを使い始めていることは感じていても、「具体的に何を聞かれているのか」までは分からず、対策の打ちようがないという担当者は少なくありません。本記事では、BtoB購買の実態調査と、独自企業データベースによる1,000社の公式サイト実測を組み合わせ、「公式サイトで情報が手薄な論点ほど、比較検討者の疑問が生まれやすい」という構造を明らかにします。結論から言えば、実績の具体的な数値・比較材料・評判といった「信頼を裏づける情報」は1割前後の企業しか用意しておらず、これが比較検討中の質問を生む土壌になっていると考えられます。読み終えたあとは、自社サイトのどの論点を優先的に補強すべきかが分かります。

生成AIがなぜこうした質問を作りやすいのかをより広くとらえたい場合は、 AIが企業情報の信頼性をどう判断しているか も確認してください。

今回の24論点の結果をより幅広い母集団で確認したい場合は、 企業サイトの情報開示に関するより大規模な調査 もあわせて確認してください。

BtoB購買の現場では、すでに生成AIが比較検討の主要ツールになっている

まず土台となる事実を確認します。HubSpot Japanが2026年に実施した「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」によると、直近12カ月以内にBtoB商材の比較・選定・稟議・決裁等に関与した1,573名のうち、業務用の商品・サービスを検討する際にChatGPTを「頻繁に利用する」「ときどき利用する」と回答した人は合計58.0%にのぼります。

さらに、生成AI・AI検索の利用者(n=1,155)にその使い道を尋ねたところ、「候補となる商品・サービスの洗い出し」(50.3%)、「各社の特徴・違いの整理」(47.1%)、「比較表の作成」(39.2%)、「社内説明用の要約作成」(38.8%)が上位を占めました。「生成AIサービスやAI検索が購買判断に与える影響が増えた」と回答した人も41.6%に達しています。

つまり、法人向けサービスの比較検討者はすでに生成AIを使って情報を整理しており、その使い道は「候補の洗い出し」「特徴・違いの比較」「社内向け要約」といった、まさに比較検討そのものに直結する作業です。問題は、生成AIが何を答える際に、どの情報源を頼りにするかです。多くの場合、まず参照されるのは各社の公式サイトの情報であり、そこに書かれていないことは、利用者からの追加の質問というかたちで顕在化しやすくなります。

BtoB購買でChatGPTを利用する人が58.0%で、候補の洗い出しや特徴比較などに生成AIが使われていることを示す図

BtoB商材の比較検討では、生成AIが候補の洗い出しや各社の違いの整理などに利用されています。

なぜ「サイトに書いていないこと」が質問になりやすいのか

この構造を理解する手がかりになるのが、心理学者ジョージ・ローウェンスタインが1994年に提唱した「情報ギャップ理論」です。この理論では、人が好奇心を抱くのは、「自分が知っていること」と「知りたいこと」の間にギャップが生じ、そのギャップが意識されたときだとされています。ギャップが認識されると、情報が欠けている状態そのものが一種の不足感を生み、人はその不足を埋めようとして質問や検索といった行動を取りやすくなります。

この考え方を比較検討の場面に当てはめると、公式サイトに書かれていない論点ほど、比較検討者の中に「知りたいのに分からない」という空白が生まれやすく、その空白を埋めるために生成AIへの質問や、営業担当者への確認といった行動が誘発されやすいと考えられます。逆に、公式サイトがすでに十分に説明している論点については、わざわざ追加で質問する必要性が下がります。

そこで本記事では、「公式サイトがどの論点についてどの程度情報を開示しているか」を独自に実測し、質問が生まれやすい論点を推定するアプローチを取りました。

調査方法:1,000社の公式サイトで、24の比較検討論点の情報開示率を測定した

独自企業データベースに登録された企業の中から、固定条件で抽出した1,000社(話題性が高いと判定された企業404社、それに近い条件の企業475社、無作為抽出121社)を対象に、公式サイトおよび関連ページを確認しました。データ取得日は2026年9月14日です。

比較検討時に論点となりやすい24項目(価格・費用・相場・比較・おすすめ・選び方・機能・評判・口コミ・導入事例・実績・品質・保証・リスク・デメリット・失敗事例・導入期間・契約期間・解約・サポート・セキュリティ・トライアル・無料相談・購入)について、それぞれの論点に対応するページ・記載(料金ページ、比較ページ、FAQ、導入事例ページ、お客様の声・評判ページ、第三者の口コミサイトへのリンク、無料相談や購入への導線など)が公式サイト上に存在するかどうかを確認しました。

割合の算出にあたっては、サイトの取得に失敗した企業(ドメイン切れ、タイムアウト、サーバーエラーなど)を「情報なし」として扱うと実態より低い数値になってしまうため、各論点について実際にページを確認できた企業だけを分母とし、そのうち該当ページ・記載が見つかった企業の割合を開示率としています。分母となる観測できた企業の数は、論点によって1,000社中759〜972社(75.9〜97.2%)の範囲でした。

なお、これら24項目については、検索エンジンの入力補助(サジェスト)機能を通じて、実際に関連する検索が行われている痕跡があることも別途確認しています。ただしこの確認は「話題として実在するかどうか」の確認にとどまり、論点間の需要の強さを比較できる精度は持たないため、本記事では「どの論点で情報が手薄か」を測る指標としてのみ使用し、需要の大小比較には使用していません。

公式サイトが最も答えていないのは「実績」「比較」「評判」「選び方」

実測の結果、公式サイト上での情報開示率が低かった論点は次のとおりです。

論点 開示率 該当する情報
実績 2.2% 導入社数・成果等の具体的な数値
口コミ 7.3% 評判/口コミページ、第三者口コミサイトへのリンク
比較 8.0% 他社比較ページ
おすすめ 8.0% 比較ページ(選定理由を含む)
評判 8.2% 評判/口コミページ、お客様の声
選び方 12.6% 比較ページ、FAQ
サポート 13.7% 相談窓口ページ
解約 15.3% FAQ、相談窓口ページ
失敗事例・注意点 15.3% FAQ、相談窓口ページ
導入事例 16.1% 導入事例ページ(成果数値を含む)

実績の具体的な数値を明示している企業は2.2%にとどまる

今回の24論点の中で最も開示率が低かったのが「実績」です。「導入社数」「達成した成果の数値」といった具体的な実績を、ページを確認できた企業のうちで公式サイト上に明示していた企業は2.2%でした。実績数値は比較検討者が複数社を横並びで判断する際の重要な材料になりやすい一方、公式サイトだけで確認できるケースは稀であることが分かります。

比較ページや第三者評価へのリンクを持つ企業は1割前後

「比較」「おすすめ」(いずれも他社比較ページに相当)は8.0%、「評判」「口コミ」も7.3〜8.2%にとどまりました。自社サービスと他社サービスを並べて説明したページや、第三者の評価・口コミへのリンクを自ら設置している企業は、1割前後ということです。

一方で「購入直前」の情報は5割前後の企業が用意している

対照的に、開示率が高かったのは、購入や申し込みの直前に必要となる情報でした。

論点 開示率 該当する情報
購入 53.7% 購入・申し込みへの導線
無料相談 53.7% 無料相談への導線
トライアル 36.5% トライアル・料金ページへの導線
価格・費用・相場 19.3% 料金ページ

24論点を4つの検討段階(比較検討段階・信頼確認段階・リスク確認段階・申込直前段階)に分けて開示率の平均を出すと、次のような差が見えてきます。

検討段階 平均開示率 該当する論点の例
申込直前段階 48.0% 購入、無料相談、トライアル
リスク確認段階 16.0% 契約期間、解約、セキュリティ、保証 等
比較検討段階 14.4% 価格、比較、選び方 等
信頼確認段階 10.1% 評判、口コミ、実績、導入事例

申込直前段階の情報は平均48.0%の企業が用意している一方、信頼確認段階の情報は平均10.1%にとどまり、両者には5倍近い差があります。公式サイトは「行動を起こしてもらうための情報」には力を入れている一方、「行動する前に信頼してもらうための情報」は手薄になりやすい、という構造が見えます。

法人向けサービスの公式サイトで、申込直前情報の平均開示率48.0%に対し信頼確認情報は10.1%だったことを示す比較グラフ

申込直前の情報は平均48.0%が開示されている一方、信頼確認に必要な情報は平均10.1%にとどまります。

この情報の偏りが、生成AIへの質問として表れやすい理由

ここまでの実測結果と、冒頭で紹介したHubSpot Japan(2026)の調査結果を重ねると、次のような対応関係が見えてきます。生成AI利用者が多く挙げていた使い道は「候補の洗い出し」「各社の特徴・違いの整理」「比較表の作成」でしたが、これらに対応する「選び方」「比較」「おすすめ」といった論点は、公式サイトでの開示率がいずれも1割前後(8.0〜12.6%)と、24論点の中でも特に低い部類に入ります。

情報ギャップ理論に照らせば、公式サイトが答えていない論点ほど、比較検討者の中に「知りたいのに分からない」という空白が生まれやすく、その空白を埋める手段として生成AIへの質問が使われやすいと考えられます。これはあくまで、実測した情報開示率の低さと、外部調査が示す生成AI利用実態を重ね合わせた分析・推定であり、実際に特定のサービスについて生成AIへ入力された質問文そのものを観測した結果ではない点にご留意ください。

公式サイトの情報不足による情報ギャップが生成AIへの追加質問につながる可能性を示した推定フロー図

公式サイトで不足している情報が疑問を生み、その空白を生成AIへの質問で補う可能性があります。実際の質問ログを観測した結果ではなく、情報開示率と利用実態をもとにした分析上の推定です。

分析の限界と、今回分からなかったこと

今回の分析には、次のような限界があります。

  • 「機能」「品質」の2論点は、対応する専用ページの項目を用意していないため、開示率を算出できていません。
  • サイトの取得に失敗した企業は分母から除外していますが、除外された企業の中に実際は該当情報を持つ企業が含まれている可能性はゼロではありません。
  • 今回の1,000社はデモンストレーション目的で抽出したサンプルであり、独自企業データベースに登録された企業全体(約13万社)を代表する値ではありません。より大規模な母集団での再測定は今後の課題です。
  • 検索エンジンのサジェスト機能を用いた需要側の確認は、「話題として実在するか」の確認にとどまり、論点間の需要の強さを比較できる精度を持たないため、本記事では需要の大小比較には使用していません。
  • 業種別・企業規模別の開示率の違いについては、今回は十分な精度で分類できるデータが整っておらず、分析対象から除外しました。
  • 特定の生成AIサービスに実際に入力された質問文そのものを観測したデータではなく、公式サイトの情報開示状況からの推定である点は、本文全体を通じての前提です。

法人向けサービス提供企業が今日から点検すべきこと

今回の分析を踏まえると、比較検討段階で質問を生みやすい論点への対策として、次の点検が有効と考えられます。

  • 導入社数や成果指標など、実績を具体的な数値で示すページがあるか
  • 自社と他社を比較できるページ、あるいは選び方の基準を示すページがあるか
  • お客様の声や第三者評価・口コミサイトへのリンクを、自ら設置しているか
  • FAQに、解約条件・導入期間・セキュリティ体制など、リスク確認段階の論点を含めているか

公式サイトで今すぐ見直したいポイントを示すチェックリスト

これらは、いずれも今回の実測で開示率が2割に満たなかった論点です。比較検討段階で担当者や生成AIから「結局この会社はどうなのか」と繰り返し確認されやすい論点でもあるため、優先的に情報を補うことで、比較検討中の疑問が生まれる余地そのものを減らせる可能性があります。

まとめ

BtoB購買の現場では、比較検討に関わる担当者の58.0%がすでにChatGPTを利用しており、その使い道は候補の洗い出しや特徴の比較整理など、まさに比較検討の中心作業です。一方で、独自企業データベースによる1,000社の実測では、比較検討者が信頼判断に使う実績・比較・評判・選び方といった論点の情報開示率は1割前後にとどまり、購入直前の情報(平均48.0%)とは大きな差がありました。

この「公式サイトが答えていない領域」こそが、比較検討者の疑問や、生成AIへの追加の質問を生みやすい土壌になっていると考えられます。自社サイトがどの論点で情報を出し渋っているかを点検することは、比較検討段階での見込み客の疑問に先回りして応える一つの手段になります。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

  • HubSpot Japan株式会社「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」(調査実施:株式会社マクロミル、調査期間:2026年6月11日〜16日、対象:BtoB商材の比較・選定・稟議・承認・決裁等に関与した従業員50名以上の企業に勤務する1,573名、公開日:2026年7月16日)https://www.hubspot.jp/company-news/state-of-buyer-2026
  • Loewenstein, G.(1994). The Psychology of Curiosity: A Review and Reinterpretation. Psychological Bulletin, 116(1), 75-98. https://doi.org/10.1037/0033-2909.116.1.75

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