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士業事務所の誹謗中傷対策|弁護士・税理士の風評被害を防ぐ

部署:マーケティング担当者部署:広報・PR担当者部署:経営者・責任者レベル:実践口コミ対策風評被害、誹謗中傷

弁護士事務所や税理士事務所について、GoogleマップやSNS、口コミサイトなどに悪意のある投稿が掲載されると、「信用を扱う仕事」である士業では問い合わせや紹介、採用にまで影響する可能性があります。

ただし、低評価や批判的な口コミだからといって、すべて削除できるわけではありません。また、事務所側が感情的に反論すると、依頼者とのやり取りや相談内容を不用意に公開し、別の問題を生むおそれがあります。

士業事務所の誹謗中傷対策で重要なのは、証拠を残す→投稿を分類する→削除・返信・法的対応を選ぶ→正しい情報を増やす→継続監視するという順番で対応することです。

この記事では、弁護士・税理士を中心に、士業事務所が風評被害を広げないための判断基準と実務手順を解説します。

士業事務所の誹謗中傷対策は「削除」だけでは不十分

士業事務所の風評被害対策は、問題の投稿を削除するだけで終わらせないことが重要です。

インターネット上では、一つの投稿がGoogle検索、Googleマップ、SNS、口コミサイト、掲示板など複数の場所から見つかることがあります。仮に一つのページから削除できても、検索した人が別の媒体で同じ内容を目にすれば、信用への影響は残ります。

そのため、対応を次の5段階で考えると整理しやすくなります。

段階 実施すること 目的
1. 証拠保存 投稿内容・URL・日時・検索結果を保存 後から内容を確認できる状態にする
2. 投稿分類 正当な批判、規約違反、権利侵害の可能性を分ける 対応方法を誤らない
3. 初動対応 削除申請、返信、専門家相談などを選択 拡散と信用低下を抑える
4. 信用回復 公式サイトやGoogleビジネスプロフィールを整える 正確な情報を見つけやすくする
5. 監視 事務所名・代表者名などを継続確認 再発を早期発見する
士業事務所の誹謗中傷対策を証拠保存から継続監視まで5段階で示したフロー図

士業事務所の誹謗中傷対策は、投稿の削除だけでは完結しません。証拠保存から信用回復、継続監視までを一連の対応として設計します。

特に士業では、「反論すれば解決する」と考えないことが大切です。

弁護士法23条では、弁護士に職務上知り得た秘密を保持する義務が定められています。税理士法38条でも、税理士業務に関して知り得た秘密を正当な理由なく漏らしてはならないとされています。

そのため、口コミの内容が事実と異なる場合でも、公開の場で依頼者との具体的なやり取りを明かして反論することには慎重さが必要です。

まず確認するべき「悪い口コミ」と「誹謗中傷」の違い

すべての低評価口コミを誹謗中傷として扱うべきではありません。

実際にサービスを利用した人による不満や感想と、事実無根の情報、人格攻撃、個人情報の公開などでは、取るべき対応が異なります。

士業事務所への悪い口コミを正当な批判、規約違反、権利侵害の3種類に分類した図

低評価だから削除対象になるわけではありません。投稿内容を3種類に分けてから、改善・報告・専門家確認のどれに進むか判断します。

1. 正当な批判・低評価

たとえば、

  • 「説明が分かりにくかった」
  • 「連絡が遅いと感じた」
  • 「自分には合わなかった」

といった利用者の主観的な評価は、事務所にとって不本意であっても、直ちに削除対象になるとは限りません。

Googleも、単に内容が気に入らないという理由ではなく、ポリシーに違反している口コミを削除申請の対象としています。

このタイプの投稿は、削除を求めるより、実際に改善すべき点がないか確認し、必要に応じて丁寧に返信する方が適していることがあります。

2. プラットフォームの規約に違反する投稿

Googleマップなどでは、口コミを含むユーザー投稿に禁止・制限コンテンツのポリシーが設けられています。ポリシーに違反する投稿については、事業者から報告し、削除を求めることができます。

たとえば、実際の利用体験とは無関係な投稿や、プラットフォームの禁止事項に該当する投稿であれば、まず媒体の正式な報告機能を利用する方法があります。

3. 権利侵害の可能性がある投稿

さらに深刻なのが、名誉やプライバシーなどの権利を侵害している可能性がある投稿です。

法務省も、インターネット上では誹謗中傷、名誉やプライバシーの侵害などの問題が発生しているとして、削除依頼の方法や相談窓口を案内しています。事案によっては、法務局が人権侵害の有無を調査し、プロバイダ等へ削除を要請する場合もあります。

投稿者を特定する必要がある場合には、情報流通プラットフォーム対処法に基づく発信者情報開示の制度もあります。同法では、一定の要件を満たした場合に、権利侵害に関係する発信者情報の開示を請求できる仕組みが定められています。

士業事務所が誹謗中傷を見つけたときの5ステップ

誹謗中傷を見つけた直後に削除申請や反論を始めるのではなく、証拠保存から順番に進めます。

STEP1|投稿を削除する前に証拠を保存する

最初に行うべきなのは証拠保存です。

最低限、次の項目を保存します。

  • 投稿全文が確認できるスクリーンショット
  • 投稿者名・アカウント名
  • 投稿日時
  • 投稿URL
  • 評価点
  • 投稿を確認した日時
  • 検索結果に表示されている場合は検索画面
  • SNSで転載されている場合は転載先
  • 問い合わせ減少など実害がある場合は関連資料

投稿が後から編集・削除されると、当初どのような内容だったのか確認できなくなる可能性があります。

投稿者の特定や損害賠償請求まで検討する場合は、削除と証拠確保の順番が重要になるため、早い段階で専門家へ相談する選択肢もあります。

STEP2|投稿を3種類に分類する

次に、「不快かどうか」ではなく、内容で分類します。

分類 基本対応
正当な批判・感想 対応への不満、低評価 改善確認・必要に応じ返信
規約違反の可能性 実体験と無関係な投稿など プラットフォームへ報告
権利侵害の可能性 名誉・プライバシー侵害など 証拠保存後、専門家へ相談

この分類を行わず「星1だから削除する」という対応をすると、本来削除できない口コミに時間を使ったり、逆に迅速な対応が必要な投稿を放置したりする可能性があります。

STEP3|削除・返信・法的対応から手段を選ぶ

投稿内容によって対応を変えます。

プラットフォームの規約違反が疑われる場合

Googleマップなど、掲載媒体が用意している正式な報告手続きを利用します。

Googleでは、ポリシー違反の口コミについて事業者から削除を求めることができます。一方、単に低評価であることだけを理由に削除できる仕組みではありません。

正当な不満が含まれている場合

内容を事実確認したうえで、必要に応じて改善と返信を行います。

権利侵害が疑われる場合

削除請求、発信者情報開示、損害賠償請求などが選択肢になります。

どの手続きを取れるかは個別事情によって異なります。情報流通プラットフォーム対処法には発信者情報開示請求や発信者情報開示命令に関する制度が設けられています。

STEP4|削除とは別に「検索されたときの信用」を整える

誹謗中傷対策では、悪い情報を消すことだけでなく、正しい情報へたどり着ける状態を作ることも重要です。

たとえば、次の情報を整備します。

  • 公式サイトの事務所情報
  • 弁護士・税理士など所属専門家のプロフィール
  • 対応業務・得意分野
  • 料金や相談の流れ
  • 所属団体
  • よくある質問
  • Googleビジネスプロフィール
  • 事務所からの公式情報
  • 専門分野に関する解説記事

Googleビジネスプロフィールでは、業務内容を正確に反映し、実際のビジネスで一貫して使用している名称や正確な所在地などを掲載することが求められています。

誤情報だけが検索結果に残り、事務所側からの正確な情報がほとんど存在しない状態は避けるべきです。

STEP5|継続監視する

一度対応した後も、同じ内容が別媒体へ転載されることがあります。

最低限、次の検索語を定期的に確認します。

  • 事務所名
  • 法人名
  • 代表者名
  • 所属弁護士・税理士名
  • 事務所名+口コミ
  • 事務所名+評判
  • 事務所名+悪評
  • 事務所名+トラブル

Googleマップ、主要口コミサイト、SNS、検索結果を同じ条件で記録しておくと、投稿の増減や検索結果の変化を把握しやすくなります。

士業事務所が口コミへ返信するときに最も注意すべきこと

弁護士・税理士などの士業では、一般企業以上に口コミ返信の内容を慎重に設計する必要があります。

最大の理由は守秘義務です。

士業事務所の口コミ返信で個別の相談内容を公開する危険と慎重な返信方法を比較した図

口コミの内容が事実と異なる場合でも、反論材料となる個別事情をそのまま公開できるとは限りません。士業では守秘義務を踏まえて返信範囲を決める必要があります。

弁護士法23条は、弁護士または弁護士であった者について、職務上知り得た秘密を保持する権利と義務を定めています。

税理士法38条も、税理士が業務上知り得た秘密を、正当な理由なく他に漏らしたり利用したりすることを禁じています。国税庁は、この「秘密」について、依頼人の陳述などから知った一般に知られていない事項等を含むものとして説明しています。

したがって、

「実際には○月○日にこの内容を説明しています」

「この方は○○の相談で来所した方です」

「依頼者側にも○○という事情がありました」

など、事務所側にとって反論材料となる事実であっても、そのまま公開返信に使用してよいとは限りません。

口コミ返信では、個別事情へ踏み込みすぎないことが重要です。

たとえば、

「ご意見をお寄せいただきありがとうございます。個別のご相談内容について公開の場でお答えすることは控えております。いただいたご意見は事務所内で確認し、今後の対応改善に活かしてまいります。」

といったように、第三者が読んでも問題のない範囲に限定します。

弁護士事務所と税理士事務所で注意点はどう違う?

基本的な風評被害対策の流れは共通していますが、検索ユーザーが事務所を選ぶ際に確認するポイントは異なります。

項目 弁護士事務所 税理士事務所
信用に影響しやすい情報 対応姿勢、説明、専門分野、費用 対応速度、説明、税務知識、料金
特に慎重に扱う情報 相談・事件・依頼者情報 税務・財務・顧客情報
信用回復で整える情報 所属弁護士、取扱分野、相談の流れ 所属税理士、対応税目、支援領域
口コミ返信 個別事件の詳細を公開しない 顧客の税務・財務情報を公開しない

弁護士については、ウェブサイトなどの広告にも業務広告上のルールがあります。東京弁護士会は、日弁連の業務広告規程に基づき、ウェブサイトに弁護士氏名や所属弁護士会など必要事項を表示する必要があると案内しています。

税理士についても、税理士会は広告を原則自由としつつ、虚偽広告、不正確な表現、比較広告、信用や品位を損なうおそれのある広告などについて制限があると案内しています。

風評被害を打ち消そうとして、事実以上に強い宣伝表現を追加するのではなく、資格・所属・専門領域・支援内容など、第三者が確認できる正確な情報を充実させることが基本です。

士業事務所の誹謗中傷対応で避けたい5つの行動

1. 感情的に反論する

投稿者との応酬が続けば、元の口コミ以上に問題が目立つ可能性があります。

返信前に、事実確認と責任者による確認を行います。

2. 口コミで依頼内容を公開する

士業では特に注意が必要です。

「相手が先に書いたから」と考えず、公開可能な情報かを別途判断します。

3. 証拠を残さず削除だけを急ぐ

削除後に投稿内容を確認できなくなることがあります。

投稿者特定などを検討する可能性が少しでもある場合は、先に証拠を保存します。

4. すべての低評価を削除しようとする

Googleでは、単に気に入らない口コミではなく、ポリシー違反が削除対象です。

正当な不満まで一律に排除しようとするのではなく、削除対象と改善対象を分けます。

5. 不自然な高評価口コミで埋めようとする

虚偽の口コミを増やす行為は避けるべきです。

Googleは、虚偽または報酬に基づく口コミ等に関するポリシー違反が確認された場合、違反口コミの削除だけでなく、新規口コミの受付停止、既存口コミの非表示、警告表示などの制限を行う場合があると説明しています。

風評被害対策は、「悪い評価を見えなくすること」ではなく、実際の顧客体験と公開情報の信頼性を改善することを中心に設計する必要があります。

誹謗中傷対策の優先順位を決めるチェック表

投稿を発見したら、次の5項目で緊急度を確認します。

確認項目
情報の虚偽性 主観的評価 一部事実と相違 明確な事実誤認の疑い
権利侵害 ほぼなし 判断が必要 名誉・プライバシー等の問題が疑われる
検索露出 見つけにくい 事務所名検索で確認 上位・複数媒体に露出
拡散 単独投稿 複数反応あり SNS・掲示板等へ転載
事業影響 確認できない 問い合わせ等への影響疑い 解約・相談減少等の具体的影響
誹謗中傷投稿の緊急度を虚偽性、権利侵害、検索露出、拡散、事業影響の5項目で確認する図

投稿の緊急度は、内容だけでなく検索露出や拡散、実際の事業影響まで含めて判断します。「高」に該当する項目が多い場合は複数の対策を並行して検討します。

「高」が多いほど、事務所内だけで対応を続けず、削除・法的対応・検索上の信用回復を並行して検討する必要性が高くなります。

士業事務所の風評被害を防ぐための平時の運用

誹謗中傷が投稿されてから対応するだけでは、初動が遅れます。

平時から次の運用を決めておくと対応しやすくなります。

  • 事務所名・専門家名の定期検索
  • Googleマップの口コミ確認
  • 問題投稿の保存方法
  • 返信できる担当者の限定
  • 返信文の承認フロー
  • 守秘義務確認のルール
  • 削除申請の判断基準
  • 法的確認へ切り替える条件
  • 公式サイト・プロフィール情報の定期更新

特に重要なのは、受付担当者やマーケティング担当者が独断で返信しない体制です。

問題投稿を発見した担当者が、

保存→分類→責任者確認→対応決定

まで進められる簡単な運用表を用意しておくと、感情的な返信や証拠消失を防ぎやすくなります。

まとめ

士業事務所の誹謗中傷対策では、悪い口コミを見つけてすぐ削除するのではなく、証拠保存、投稿分類、削除・返信・法的対応、信用回復、継続監視の順番で考えることが重要です。

特に弁護士・税理士は、口コミへ反論するときに依頼者や相談者の情報を不用意に公開しないよう注意しなければなりません。

まず確認したいのは次の5点です。

  • 投稿内容とURLを保存できているか
  • 単なる低評価か、規約違反・権利侵害の可能性があるか
  • 削除と返信のどちらが適切か
  • 公式サイトやGoogleビジネスプロフィールに正確な情報が揃っているか
  • 同じ情報が別媒体へ広がっていないか

一つの投稿への対処だけでなく、「事務所名を検索した人に何が見えているか」まで確認することで、風評被害を長期化させにくい運用につながります。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

‹ 親記事: 企業の炎上・風評被害対応とは|初動対応の原則から法的手段・社内体制までの全体像

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