消費者庁からステマ規制に基づく措置命令の通知を受けた、あるいは行政指導の連絡が来た場合、最初にすべきことは表示の停止と証拠の保全であり、削除ではない。措置命令は法的な是正だけで終わらず、事業者名が公表された瞬間から報道・SNS拡散という別の問題が始まる。この記事では、通知後72時間の初動、消費者庁への対応、検索結果やSNSに残り続ける情報への向き合い方、そして再発防止の社内体制づくりまでを、実務の流れに沿って解説する。

30秒でわかる結論

措置命令の通知を受けたら、問題の表示は止めるが証拠は削除せず保全する。同時に、事業者名の公表によって始まる報道・SNS拡散への対応を並行して進める必要がある。

消費者庁への改善報告、確約手続の活用可否、検索結果への対応など「発生後」の実務が中心になる。

自社が今どの段階にあるかを確認し、該当する見出しから読み進めてほしい。

この記事でわかること

  • 措置命令の通知を受けてから最初の72時間で何をすべきか
  • 消費者庁への改善報告と、確約手続という選択肢
  • 措置命令=報道されるという前提での風評対応の考え方
  • 再発防止のために社内でどんなルール・体制を作ればいいか
目次

まず確認したい3ステップ診断

STEP 1

自社の段階を確認する

行政指導の段階か、措置命令の通知後か、まだ予防段階かを分けます。

STEP 2

対応チームを確認する

法務・広報・マーケ責任者がすぐ集まれる体制か確認します。

STEP 3

公表への準備を確認する

対外説明を誰が担当するか決まっているか確認します。

ステマ規制とは何か。景品表示法における位置づけと「措置命令」までの流れ

ステマ規制は新しく作られた法律ではなく、景品表示法の「不当表示」に2023年10月、告示という形で追加されたルールだ。措置命令はいきなり来るわけではなく、多くの場合その前に「行政指導」の段階を経る。この段階の違いを理解していないと、最初の警告を軽く受け止めて同じ手法を続けてしまう。マーケティング担当者や広報担当者の間でも「ステマ規制」という言葉だけが先に広まり、具体的にどの法律に基づき、どの段階を経て措置命令に至るのかが正しく理解されていないことが多い。まずこの制度の位置づけを整理してから、実際の事例に進む。

ステマ規制は景品表示法の「不当表示」の一類型

ステマ規制は、景品表示法5条3号に基づく告示として2023年10月1日に施行された。優良誤認表示や有利誤認表示のように商品の内容や価格について嘘をつくことを問題にするのではなく、「これは広告である」という事実そのものを隠す行為を不当表示とみなす点が最大の特徴だ。

商品の効果や価格の表示が真実であっても、事業者の広告であることが分からなければ違反になりうる。一般消費者は「広告だと分かっていれば多少差し引いて受け止める」という前提で判断しており、その前提が崩れること自体が問題視されるためだ。

消費者庁が公開している「ステルスマーケティングに関するQ&A」が一次情報として最も信頼できる。施行から2年が経過した2025年時点で、措置命令の件数自体は年間数件規模と多くないが、対象になった企業への影響は業種を問わず大きい。

個人が自主的な感想として投稿し、事業者から対価や依頼を受けていなければ、この規制の対象にならない。「事業者が関与した表示」であることが前提になる。

多くの企業はここに気づかず放置する

消費者庁は、違反の疑いを把握してもすぐに措置命令を出すわけではなく、多くのケースではまず任意の行政指導で改善を促す。

行政指導は措置命令と違って公表されない。このため企業側が軽く受け止め、運用ルールを変えないまま同じ手法を続けてしまうことが少なくない。法的強制力はないが、問題視されている事実自体は変わらず、放置すれば次の段階に進むリスクが残る。

RM NAVIが報告する「ステマ規制後初の行政指導」の事例では、措置命令に至る前段階として行政指導が運用されている実態が示されている。指導後も表示を変えなければ、次は措置命令という重い処分に進む可能性がある。

ただし悪質性が高い場合や、既に消費者被害が拡大している場合は、行政指導を経ずに直接措置命令に至ることもある。

行政指導を「軽い注意」と誤解しないこと

行政指導は非公表のため対外的な影響は小さく見えるが、消費者庁が問題視している事実は措置命令と変わらない。指導を受けた時点で表示ルールを社内文書化していない場合、次は措置命令に進むリスクがあると考えるべきだ。

次の見出しでは、実際に措置命令の対象になった事例をもとに、どんな表示が問題視されたのかを見ていく。

措置命令の対象になった実際の事例と、共通する3つのパターン

これまでの措置命令事例を整理すると、パターンは大きく3つに分けられる。第三者投稿の無断転載、割引と引き換えの投稿依頼、そして「広告」表記はあっても視認性が不十分だったケースだ。業種は医療・美容・フィットネスと幅広いが、問題視された構造は共通している。自社の施策がどのパターンに近いかを確認しながら読むと、次の見出しで扱う初動対応の必要性がより具体的に理解できるはずだ。事例を知らないまま予防策だけを整えても、どこに手を入れるべきかの優先順位がつけにくい。

医療法人によるGoogleマップ口コミ操作

2024年6月、患者に依頼して好意的な口コミをGoogleマップに投稿させ、広告であることを明示しなかった医療法人に対して措置命令が出された事例がある。

Googleマップの口コミは「第三者の自発的な感想」と認識されやすい表示形式で、そこに事業者の関与が隠れていると、規制の核心である「一般消費者が事業者の表示だと判別できるかどうか」という要件に直接抵触する。口コミという形式そのものが、規制上もっとも判別困難性を疑われやすい類型といえる。

この事例では、口コミ投稿と割引提供を引き換えにしていた点が問題視された。投稿を依頼するだけでなく、投稿内容の評価(星の数)に応じて対応を変えていたことが、事業者による関与の強さを裏づける材料になったとみられる。

投稿者に対価を支払っていても、投稿内容そのものを事業者が指示・確認していない場合は評価が分かれる。対価の有無だけでなく、「内容にどこまで関与したか」が判断のもう一つの軸になる。

インフルエンサー投稿の広告隠匿

インフルエンサーに投稿を依頼しながら「広告」「PR」の表記をしなかった、あるいは投稿の一部を無断で転載した事例も複数報告されている。2024年8月にはchocoZAPの事例が、また大正製薬ではインフルエンサー投稿の無断転載が問題視された。

フォロワーはインフルエンサーの投稿を本人の意見として受け取りやすい。信頼して読まれるからこそ起用する側面があり、その関係性ゆえに事業者の関与を隠すこと自体が違反の要件を直接満たしてしまう。

大正製薬の事例では、インフルエンサーが投稿した内容を企業の公式アカウントが無断で転載し、その転載時に広告表記が付されていなかった点が問題になった。元の投稿に表記があったとしても、転載する際にその表記が失われれば、転載後の投稿単体で見て判別困難性が生じる。

インフルエンサー本人が完全に任意で投稿し、事業者が対価も内容の指示もしていない場合は対象外になりうる。ただし「対価はないが、企業から商品を無償提供されている」というケースは、対価に準じるものとして扱われる可能性があるため注意が必要だ。

「広告」表記はあったが、位置・大きさで隠蔽

「広告」と一応表記されていても、位置や文字サイズ、色によっては不十分と判断される。

規制の要件は、形式的に「広告」と書いてあるかどうかではなく、「一般消費者が事業者の広告だと判別できるか」という実質的な基準で判断される。

長文の投稿の末尾に小さく「#PR」とだけ付けた例や、動画の説明欄にのみ記載して本編で触れなかった例が、実務上「不十分な表記」として扱われやすい典型だ。投稿の冒頭で目にする範囲に表記がないと、判別困難性は否定されにくい。

WOMマーケティング協議会など業界団体のガイドラインに沿った明示方法(冒頭配置、タイアップ投稿ラベル機能の併用など)であれば、判別困難性は否定されやすくなる。

失敗1:「広告と書いてあるから大丈夫」と考え、視認性を検証していない

表記の有無だけでなく、初めて見た第三者に伝わるかを確認する必要がある

失敗2:インフルエンサーへの依頼を口頭だけで済ませる

表記義務を契約書に明記しないと、投稿時に省略されるリスクが残る

第三者が3秒以内に「広告だ」と認識できるかどうかが実務上の目安になる。

実際に通知を受けてしまった場合、何から手を付ければいいのか。次は72時間の初動対応を見ていく。

措置命令の通知を受けたら最初の72時間で何をすべきか

通知直後は「表示を止める」「証拠を保全する」「対応チームを作る」の3つを並行して動かす。順番を間違えると、証拠が失われたり、対外説明が後手に回ったりする。削除を急ぐことが最優先ではない。通知直後は担当者が個人の判断で表示を削除したり謝罪文を出したりしがちだが、それが後の消費者庁とのやり取りを難しくすることがある。誰がどの順番で動くかを事前に決めておくかどうかで、その後の対応の速さが大きく変わる。

事実確認チーム(法務・広報・マーケ責任者)をすぐに招集する

通知を受けたら24時間以内に、法務・広報・当該マーケティング施策の責任者を集めた対策チームを組む。

部門ごとに把握している情報は異なる。法務は法的リスクと今後の手続きの見通し、広報は対外説明のタイミングと内容、マーケティング担当は実際に何が起きたのかという施策の実態を把握している。これらが分断されたまま個別に動くと、消費者庁への説明と社外への説明に食い違いが生じたり、対応が後手に回ったりする。

実務では、「誰が」「いつ」「どの投稿・契約に」関与したかを時系列で一覧化する初動シートを作ることから始めるとよい。担当者名、投稿日、契約先、対価の有無を1枚の表にまとめるだけでも、その後の消費者庁とのやり取りや改善報告書の作成が格段に速くなる。

通知が代理店経由で実施した施策に関するものであれば、代理店側の担当者も初期段階から対策チームに同席させる。事業者側だけで事実関係を再構成しようとすると、代理店とのやり取りの記録が抜け落ちやすい。

対象表示を止め、投稿・契約書・発注記録を保全する

問題となった表示は速やかに停止するが、削除ではなく「保全」を優先する。

消費者庁とのやり取りや改善報告書の作成には、いつ誰にどのような形で依頼したかを示す証拠が必要になる。表示を削除してしまうと、後から文言や表記の位置を確認する手段が失われる。停止と削除は別の行為だと理解しておく必要がある。

具体的には、投稿のスクリーンショット(投稿日時が分かる形式で)、依頼メールのやり取り、契約書、発注書、対価の支払い記録を保全リストとして整理する。個人情報や機密情報が含まれる場合は、取り扱い範囲を法務が限定する。

対外説明は事実関係の一次確認が終わるまで急がない。ただし上場企業や大口取引先がある場合は例外で、速やかに開示の要否を確認する。未確定の情報を先に出すと後から訂正が必要になり信頼低下を招くため、一報を入れる場合も「現在事実確認中である」という段階説明にとどめる。

失敗1:問題の投稿をすぐに削除してしまう

事実確認や改善報告書の作成に必要な証拠が残らなくなる

「削除」ではなく「非公開化・保全」を優先する、と覚えておくとよい。次の見出しでは、措置命令が持つもう一つの側面である、報道・SNS拡散への対応を扱う。

措置命令は「報道される」。風評・レピュテーション被害への対応が最大の壁

措置命令は消費者庁がプレスリリースとして事業者名を公表するため、通知後は法的な是正だけでなく、報道・SNS拡散という別の問題が同時に始まる。ここは法律事務所や薬機法関連の解説記事では扱われにくいが、実務上もっとも長く尾を引く部分だ。消費者庁への改善報告書の提出が終わっても、この風評面の問題は終わらない。むしろ公表された瞬間から始まり、対応が遅れるほど検索結果やSNS上の情報は固定化していく。

消費者庁はプレスリリースで事業者名を公表し、ニュースサイト・SNSに数時間で拡散する

措置命令は消費者庁のウェブサイトでプレスリリースとして公表され、多くの場合、報道機関にも同時に情報提供される。

この公表は行政処分の実効性を担保する制度で、非公開にはできない。公表された瞬間から企業側が情報の流通をコントロールする手段はほぼなくなる。行政指導であれば非公表のまま社内で完結する話が、措置命令になると外部に開かれた話になる。

公表当日中にニュースサイトへの転載や、X(旧Twitter)での言及が発生するのが一般的な流れだ。それまで存在しなかった「企業名 措置命令」という検索語自体が、公表を境に新しく生まれる。拡散範囲は事業者によって差があるが、消費者庁の公表ページとその転載記事は検索結果に残り続ける。

報道は数日で下火になるが、検索結果とSNS投稿は年単位で残る。公表ページが公的機関のドメインとして検索上位に固定されやすく、転載記事も残るため、企業名検索の第一印象を長期間左右する。数年後でも当時の記事が上位に表示され続けるケースは珍しくない。

採用活動中の求職者が企業名を検索して応募を見送る、与信担当者が取引開始前の調査で記事を見つける、といった場面で影響が顕在化する。企業側が改善の事実を自社サイトで発信していれば検索結果の文脈は変わりやすいが、何もしなければ措置命令の記事だけが残り続ける。この向き合い方は、口コミや悪い書き込みへの対処の基本的な整理でも詳しく扱っている。

炎上時にやってはいけない初動対応

「削除依頼を乱発する」「沈黙を貫く」「担当者個人や代理店に責任を転嫁する」は、いずれも事態を長引かせやすい。理由は下の表の通りだ。

経緯を書かずに謝罪文だけを出した結果、憶測を呼んで炎上が長引いたケースは一般的なパターンとして知られている。何が起きて、何を確認し、今後どうするのかという事実の流れを示すことが収束への近道になる。

失敗1:削除依頼を乱発する

「隠蔽しようとしている」という新たな批判材料になりやすい

失敗2:沈黙を貫いて何も発信しない

情報がない期間が長引くほど、憶測による拡散が進みやすい

失敗3:担当者個人や代理店に責任を転嫁する

経営としての監督責任という論点をすり替えたと受け取られる

明らかな誤報や事実誤認の報道であれば、訂正の申し入れは行うべきだが、それも事実確認が済んでからにする。確認前に反論すると、後で事実関係が変わった場合に二重の信頼低下を招く。

自社で監視・対応しきれるかは、専任の広報担当者の有無で判断するとよい。専任がいなければ対応が後手に回りやすい。その判断を自社だけで抱え込む必要はなく、デジタルリスク研究所のような専門機関に状況を伝えて一緒に整理することもできる。

消費者庁への対応とこの風評対応は、実際には並行して進める必要がある。次は改善報告と確約手続について見ていく。

消費者庁への改善報告と、確約手続という選択肢

措置命令が確定した後は、改善措置の実施状況を報告する義務が生じる。一方、措置命令に至る前の段階であれば「確約手続」を使い、命令という記録自体を回避できる可能性がある。どちらの制度も、動くタイミングが早いほど選択肢が広い。既に措置命令が確定している場合は改善報告の準備に注力し、まだ調査・行政指導の段階であれば確約手続の活用余地を検討する、という形で自社の状況に応じて読み分けてほしい。段階を勘違いしたまま動くと、使えたはずの選択肢を逃すことになる。

措置命令後は改善措置の実施と報告が求められる

措置命令には再発防止策の実施が明記され、企業は指定された期限内に実施状況を消費者庁へ報告する義務を負う。

措置命令は「命令を出して終わり」ではなく、実効性を担保するために改善の実施確認まで含む制度として設計されている。命令に記載された再発防止策を実施したことを、期限内に報告書という形で示す必要がある。

一般的な改善報告書には、原因分析、再発防止策の内容、実施スケジュール、実施責任者の4項目を含めるのが実務上の基本構成になる。原因分析は「なぜ発生したか」を担当者個人の問題としてではなく、社内のチェック体制の不備として整理することが求められる。再発防止策は抽象的な方針だけでなく、いつまでに何を実施するかというスケジュールとセットで示す必要がある。

報告内容が不十分と判断されると、消費者庁から追加の説明を求められることがある。改善報告書の提出期限は、この追加確認のやり取りが発生する可能性を見込んで、余裕を持たせて準備する必要がある。

確約手続を使えば「措置命令」という記録を回避できる可能性がある

2024年以降、事業者側が自主的な改善計画を申請し消費者庁が認定すれば、措置命令を経ずに手続を終える「確約手続」の運用が増えている。違反の認定を伴わないため、「措置命令を受けた企業」として名前が載ることを避けられる可能性がある制度で、レピュテーションへの影響を抑えられる点が通常の措置命令手続との大きな違いになる。

のぞみ総合法律事務所のレポートでは、施行2年間で確約手続の活用が広がりつつある実態が指摘されている。ただし申請できるのは調査段階や行政指導段階までで、措置命令確定後は利用できない。

違反の疑いが強く悪質性が高いと判断された場合は対象にならず、通常の措置命令手続に進む。

行政指導の段階で静観し、確約手続を申請する機会を逃すのが、この段階でありがちな失敗だ。連絡を受けた時点で措置命令が確定しているかを確認し、確定前であれば相談余地があると判断するのが目安になる。

措置命令の公表に伴う報道・SNS拡散への初動対応をまとめた

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制度対応の流れは理解できても、社内の仕組みそのものを変えなければ、形を変えて同じ問題が再発する可能性が残る。次の見出しでは、再発防止のための社内体制づくりを具体的に見ていく。

再発防止策をどう設計するか?社内ルールと第三者チェック体制

再発防止は「表記ルールの文書化」「起用時の事前チェック」「委託先管理」の3層で設計する。どれか1つだけを整備しても、別の層の抜け道から同じ違反が形を変えて再発しやすい。改善報告書には再発防止策を記載する必要があるが、書面上の宣言だけで終わらせず、実際に運用として定着させることが求められる。ここでは3つの層をそれぞれ具体的に見ていく。1つでも欠けると、消費者庁への報告内容と実態が乖離してしまう。

「広告」「PR」表記のルールを社内マニュアル化する

表記の要否を担当者個人の判断に委ねず、Instagram、YouTube、Googleマップ、ブログといった媒体別に、表記ルールを文書化する。

これまでに公表された措置命令事例の多くは、担当者が「表記すべきだと分かっていた」にもかかわらず、媒体ごとの具体的な書き方が決まっておらず、判断が担当者ごとにばらついていたことが背景にある。ルールが属人化していると、担当者が変わるたびに表記の質が変わってしまう。

実務では、投稿の冒頭200字以内に「広告」「PR」の文言を入れる、動画であれば開始15秒以内に音声または字幕で明示する、といった媒体別・タイミング別のルールまで具体化しておくと運用のばらつきが減る。ハッシュタグのみでの表記は、投稿本文の冒頭表記と併用する形をルールに含めておくと、視認性の観点からも安全性が高まる。

プラットフォーム側のガイドラインや機能(タイアップ投稿ラベルなど)は年単位で変更されるため、社内ルールも年1回は見直す前提で運用する必要がある。

インフルエンサー・アフィリエイター起用時の契約・事前チェック体制

起用前に、広告表記を入れることを契約書に明記することと、投稿前の内容確認を必須プロセスにする。事業者の表示に該当するかどうかは、事業者が投稿内容にどこまで関与・指示したかによって判断が分かれるため、契約段階で表記義務を明文化しておくことが、もっとも確実な予防策になる。口頭の依頼だけでは表記が省略されるリスクが残る。

具体策としては、契約書に表記条項を入れることと、投稿前に企業側が内容を確認するフローを1段階挟むことの2点がある。確認フローは差し戻しではなく、表記の有無と視認性だけをチェックする軽いプロセスにとどめる。自主的な投稿を事後的にリポストする場合は、依頼関係がなかったことを記録として残しておくと対象外の整理がしやすい。

「代理店に任せていたので知らなかった」は、ステマ規制上の責任を免れる理由にならない。規制の名宛人は事業者であり、委託先の行為であっても事業者側の指示や関与が認められれば事業者の表示とみなされる。委託契約に「表記ルール遵守の確認」「投稿内容の事前共有」を条項として盛り込み、四半期に1回は運用状況を確認する体制が実務上の目安になる。

失敗1:マニュアルを作って終わりにし、投稿前チェックが実際に運用されていない

月間の起用件数が10件を超えるなら、チェック担当者を専任で置くことを検討する

施策の種類によって注意点は変わる。次は手法別の注意点を整理する。

手法別の注意点と、措置命令を受けないための予防チェック

ステマ規制の考え方そのものは共通しているが、問題が生じやすい場面は施策の種類によって異なる。口コミ施策とインフルエンサー施策では「判別困難性」が生まれるタイミングも、有効な対策も違う。さらに、ここまで見てきた再発防止策を整備しても、実際に運用が回っているかを定期的に確認する仕組みがなければルールは形骸化する。自社が実施している施策に当てはめながら読み、最後に自己点検の進め方まで確認してほしい。

口コミ・レビュー施策(自社ゲーティング、割引付き投稿依頼)

高評価だけを選んで投稿を促す「ゲーティング」や、割引と引き換えの投稿依頼は、投稿内容を事業者側が誘導しているとみなされやすい。

評価を選別すること自体、あるいは対価を提供すること自体が、消費者から見た「自発的な感想である」という前提を崩す方向に働く。投稿内容の真偽とは関係なく、この関与の構造そのものが問題視される。

「口コミを書いたら次回10%オフ」という施策を実施する場合は、依頼文の中で広告である旨の明記を条件づける、という代替案が考えられる。投稿を依頼する時点で「投稿には対価を受けたことを明記してください」と伝え、実際にその表記があるかを確認する運用にすれば、施策自体は継続しながらリスクを下げられる。

対価を伴わないアンケート依頼で、投稿するかどうか、そして投稿内容そのものに事業者が一切関与しない形であれば、対象外になりやすい。関与の度合いをどこまで下げられるかが、施策設計の分かれ目になる。

インフルエンサーマーケティング(タイアップ投稿の明示)

タイアップ投稿は、「#PR」などのハッシュタグ表記に加えて、投稿本文の冒頭付近に表記を配置することが望ましい。

プラットフォームのハッシュタグ機能は、タイムライン上で他のハッシュタグに紛れて小さく表示されることが多い。ハッシュタグのみでの明示は、それだけでは「判別困難」と評価されるリスクが残る。

Instagramの「タイアップ投稿ラベル」のような機能とハッシュタグを併用する、投稿文の冒頭に「【PR】」を明記する、という2点を具体策として運用に組み込むと、視認性の観点からリスクを下げられる。動画の場合は、概要欄への記載だけでなく、本編冒頭15秒以内に音声または字幕で触れることが望ましい。

プレゼントキャンペーンの参加条件として投稿を依頼する場合も同様の考え方が適用され、規約自体に表記義務を明記しておくことで参加者ごとの表記のばらつきを抑えられる。海外の代理店を経由する案件では、表記が日本語表示に対応していないことがあるため、契約時点で日本語表記を必須条件に加えておくと安全性が高まる。

自己点検チェックリスト

四半期ごとの自己点検チェックリスト

確認項目 確認内容 完了
広告表記の有無 すべての投稿・口コミ施策に広告表記が入っているか確認した
表記の視認性 表記が投稿の冒頭など目立つ位置にあるか確認した
委託先との契約条項 表記義務の条項が契約書に明記されているか確認した
過去の投稿の棚卸し 過去1年分の投稿を対象に、表記の有無を一覧化した

上の4項目を四半期ごとに点検する運用が実務上の基本になる。これまでの措置命令事例の多くは、新規施策ではなく過去から続けていた慣行が対象になっている。定期的な点検の仕組みがないと、問題のある運用に気づかないまま継続してしまう。

過去1年分の投稿をリスト化し、表記の有無を一覧でチェックするのが具体的な進め方だ。点検対象が数百件を超える企業であれば、全件確認ではなく無作為に一定割合を抽出して確認する方法でも一定の効果がある。棚卸しの際は、投稿日・媒体・依頼先をあわせて記録しておくと、次回以降の点検が格段に速くなる。

判断に迷ったら第三者に確認すべきタイミング

社内で「これは大丈夫ではないか」「いや危ないのではないか」と意見が割れた案件は、そのまま実施せず、外部の目を入れることを検討したほうがいい。

判別困難性の評価は個別の事情に左右されるため、社内の慣れた感覚だけで判断すると見落としが生まれやすい。意見が割れること自体が、判断が難しい案件であるサインだ。

意見が割れた施策については、実施予定日から逆算して最低1週間前には相談する、という目安を持っておくとよい。直前の相談では、施策の延期や設計変更が難しくなる。

過去に消費者庁への確認実績がある定型的な施策で、表記フォーマットが既に確立している場合は、都度の相談は必ずしも必要ない。判断に迷うのは、新しい媒体・新しい形式の施策を始めるときであることが多い。

チェックリストを一度作って終わりにし、更新・運用されないというのが、この段階でありがちな失敗だ。社内の意見が割れるかどうかを基準に、自社完結で進めるか外部相談を挟むかを分ける、という考え方を持っておくと判断がぶれにくい。

実際にどこまでサポートしてもらえるのかが気になる読者もいるだろう。次のよくある質問と記事末で、その点に答える。

よくある質問

Q1ステマ規制に違反すると、いきなり措置命令が出ますか?

多くは「行政指導」が先に来ます。非公表のため軽視されがちですが、放置すると措置命令に進む可能性があります。

Q2措置命令と行政指導の違いは何ですか?

最大の違いは公表の有無です。行政指導は非公表ですが、措置命令は事業者名を含めて公表され、法的な是正義務も生じます。報道・SNS拡散が始まるのは措置命令からです。

Q3措置命令を受けた企業名は、いつまで検索結果に残りますか?

明確な期限はありません。改善の事実を発信することで文脈を変えられる余地はあります。

Q4確約手続はどんな企業でも使えますか?

使えません。申請できるのは調査段階や行政指導段階までで、悪質性が高い場合も対象外です。

Q5インフルエンサーが勝手に投稿した場合も事業者の責任になりますか?

対価や指示の有無で判断が分かれます。対価を受け取っていたり内容への関与があったりすれば、事業者の表示とみなされる可能性があります。

Q6過去の投稿もさかのぼって調査されますか?

過去から続けていた慣行が問題視される事例が多く、四半期ごとの自己点検が有効です。

Q7中小企業でも措置命令の対象になりますか?

なります。規模ではなく表示の内容と関与の度合いで判断されるため、企業規模に関わらず対象になり得ます。

まとめ

1

行政指導の段階で気づき、表示ルールを見直すこと
措置命令に進む前の最後の分岐点になります。

2

措置命令後は法的対応と風評対応を並行して進めること
事業者名の公表による報道・SNS拡散は、消費者庁への対応だけでは解決しません。

3

再発防止は表記ルール・契約・委託先管理の3層で設計すること
どれか1つだけでは、同じ問題が形を変えて再発しやすくなります。

Web上の評判改善を総合支援

デジタルリスクCLOUDで状況を整理する

措置命令に伴う報道やSNS拡散、検索結果に残り続ける情報は、削除だけに依存せず横断して状況を整理することが必要です。

現状の可視化

「企業名 措置命令」の検索結果を確認します

優先度の整理

対応が必要な情報と、

自然に沈む情報を切り分けます

改善発信の設計

改善報告の内容をどう発信すれば文脈が変わるかを検討します

このような企業に向いています

  • 報道・SNS対応の優先順位が分からない企業
  • 専任の広報担当がおらず監視の手が回らない企業
  • 過去の記事が今も検索結果の上位に残っている企業

消費者庁への法的な対応そのもの(改善報告書の作成、確約手続の申請手続きなど)は弁護士の業務範囲です。法的な助言が必要な場合は弁護士へ相談してください。

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措置命令の通知書、または問題の投稿・報道記事のURLを用意してご相談ください。

検索結果・SNSの状況を踏まえ、優先すべき対応を整理してお伝えします。

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本記事の情報について

本記事は消費者庁の公開情報および各専門機関の公開レポートをもとに作成しています。記載内容は執筆時点のもので、法令の解釈や運用は変更される場合があります。個別の事案は専門家への確認をおすすめします。